【嫁に来いよ!】
「…は?」
わたしの目の前にいらっしゃる方、何を隠そうこの並盛の秩序であらせられます。
「今何て言ったの、」
「え?あはは、だ、だからね?引っ越すことになったの」
たらーりと冷や汗垂らしつつ、わたしはできるだけ平静を装った。
目の前のソファに座して、じっとこちらを見て、いや、確実に睨んでらっしゃるそのお方。
「そんなことは聞いてないよ、僕が訊きたいのは君の気持ちなんだけど」
「…そ、そりゃ行きたくないよ?でも、わたしまだ15だし、一人でなんて暮らせないし…」
「だったら僕の家に来なよ」
はい、解決。
なるほどー、そっか、その手があったか。
「そっかー、恭弥の家に行けばいいんだね、恭弥の家に…って、ェェエエエェエエ!!」
がたりと立ち上がって、わたしは、そう、かの雲雀恭弥風紀委員長を凝視した。
(ちょ、おまっ、恭弥の家!?)
一応とはいえ、わたしたちは付き合って3ヶ月になる。
恭弥の突拍子も無い発言には慣れてきたところだ。
だが、これは、あまりにも、突拍子が無さ過ぎる。
「どうかしたの?もうこの話題は御終いだよ、解決したんだし」
そう言って恭弥は持っていた黒いファイルを閉じた。
それから思わず立ち上がったわたしを見上げて、小さく口の端を上げて笑う。
「それとも何?僕と離れてもいいわけ」
「そ、そんなこと!!」
思ってるはずない、と反論しようとしてわたしは口を噤んだ。
だって、恭弥のあの顔は。
(分かってて訊いてる)
「…だったら、黙って来ればいいんだよ」
満足そうに笑って、恭弥は言うんだ。
「おいで、」
それは埋もれるほどの砂の中にある、一つの金平糖。
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これからヒロインさんが食わされるのは砂か金平糖かって話(ばくしょ!)