【嫁に来いよ!】
「あ?」
今何てった?とソファから仰け反ってわたしを見た。
この店の主であり、駄目な大人の代表。
「…や、だからね。里帰り、しろって言われたんだけど」
「おー良いじゃねーか、しろしろ」
簡単に言うな、とわたしは溜息を付く。
白髪天パーのこの男、坂田銀時20代後半。
「…そうなると、丸5年は帰ってこれなくて」
「………あ?」
そこでやっと銀時は反応らしい反応を見せた。
わたしの故郷である星は、地球から2年半ほどかかる。
半端じゃなく遠い星からやってきたのだ。
(それにしたってあの親が里帰りしてこいとか)
「いや、それは、ちょっと、いや、うーん」
銀時はそう意のつかめない言葉を口にして、腕組みをしたまま考え込んでしまった。
銀時のことだから、親に会いに行けというに決まってるだろう。
それを悩むという事は。
「…行かないよ、5年も会えないのヤだもん」
「お前、それでいいのか?」
「…いいよ、やっと見つけた大切なひとの、傍にいたい」
そう言うと、銀時は少し安堵したように口元をほころばせて、
だけど興味無さそうに、顔を背けた。
(照れ臭いのかな)
そうプラスに考えるのはわたしが都合が良いだけだろうか?
「でも、部屋引き払ってきちゃった」
「…は!?」
「…家賃、払えないし」
「…お前、それ、ちょ…」
はぁと小さくため息をつく。
(期待した言葉は出てくるだろうか)
ちらりと銀時を見た。
「…何だよ、その顔は。しょうがねーだろ、……ったく、泊まってけよ」
「ほんと!?やったぁ」
「都合いいことに神楽も新八もいねーしよ…」
(都合良いって言っちゃったよ、この人!!)
期待通りの言葉をくれた、というわたしの反応に銀時は苦虫をつぶしたような顔をした。
「とりあえず!今日だけだからな!」
よっしゃ!と堂々とガッツポーズをするわたし。
銀時は額を抑えて溜息を付いた。
「…でもま、お前が路頭に迷うよりはマシか」
結局そう許してくれるんだ。
「そうと決まれば寝床の準備だ、ー」
だらだらと立ち上がって、夕刻の頃。
(今から寝床!?)
わたしは少々先行きが不安になったのでありました。
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ヒロインさんが転がり込んだのは30度ぐらいのぬるま湯。