そして、2か月前、冬獅郎は一番隊舎にいた。
総隊長を目の前にして、何ともいたたまれない気持ちになっている。

「どういうことかの、十番隊長」
「…ですから」

これを言うのは二度目だ。
時間がないのは総隊長だろう、何故二度も言わせるのか。
だがしょうがない、これは自分が招いた結果なのだから。
護廷十三隊がそれぞれ、何百人いるとはいえ、みながみな忙しい。
そこを、もともと無理難題な現世での結婚式の来賓で来てくれるというのに、

「…式を早めなければならなくなったんです」

意を決するしかないのだ。
かしこまっていてもこの事実は揺らがないのだから。

『おめでとうございます、もう6週目ですよ』

が倒れて運ばれたと言うから急いで病院へ行った先での一言だ。
妊娠から来る貧血だそうだ。
幸い母子ともに以上は大事はないということだったので、その日は帰宅した。
そのあと、が倒れたということを知らせに来た夜一に言われたのだ。

『どうするんじゃ、半年後の式ではだいぶお腹も目立つし何より危ないじゃろ』

そんなこと、考えもしてなかった。
確かに避妊などしていなかったが、いざこうなってしまうと狼狽えた。
同時に物凄く嬉しい気持ちがあるのも事実。
それで急遽、式を早めるという事態になったのだ。
そして文頭に戻る。
総隊長の次は隊長たちだ。

「お子さんができたという事ですか?」

あらまぁと卯ノ花に言われた。
式への招待客全員に、とりあえずは伝えねばならなかった。
厄介なのが松本だ。

「そうなんですか、隊長!やることやってるぅ〜」
「…」
「で?で?いつなんですか、予定日は」
「…誰がお前に教えるか」
「え〜?せっかく仕事を調整しようと思ってたのにー」
「調節なんてしねぇでいつも真面目にやれ!」

やることやってるとは大層なセリフである。
夫婦生活2年だぞ、2年。
冬獅郎は大きなため息をつく。
の方はうまくやれているだろうか?

『冬獅郎、』
『…、やったな、…バカヤロウ、何て顔してんだよ』

先日の病院での風景を思い出した。
申し訳なさそうに見上げるの額をデコピンしてやる。

嬉しくないわけねぇじゃねぇか。
それをちゃんと言えば、の不安も消えるはずだ。

『…うん、!』

自分は困ったような顔でもしていただろうか。
それでも視線を逸らすを、しびれを切らしたのか冬獅郎が抱きしめた。

『俺とお前の子だぜ』
『…うん…!』