その壱、君を驚かせたい。 その弐、君を喜ばせたい。 その参、君を笑わせたい。 そしてそれらは全部、この扉のこちら側にある。 「ふぅ、」 小さく息を吐いて、門をくぐった。 七夕の夜にしては、珍しく晴れた空だった。 よりにもよってこんな日に、 部屋に戻る前に汚れたあれこれを脱ぎ捨てる。 ベチャっと嫌な音がして、また新八をイライラさせた。 本当はこんなはずじゃなかった。 今日はこんな大立ち回りがある日じゃない。 副長がずっと会いたかった恋人を見つけさえしなきゃ、今日は平和に見回れるはずだったんだ。 くん、と自分の腕の匂いを嗅ぐ。 (最悪) 鼻がバカになってるのか、それは全然臭わなかった。 今度は盛大に溜息をついた。 もう夜は深い。屯所内は静かだ。 他の隊士が帰ってくる前に、やりたいことがあった。 でもこのような姿で、彼女に会う気にはなれない。 こんな手で触れれるはずがない。 いつだって新八はとの間に一本も二本も線を引いていた。 ごしごし、と手を洗っては水をかぶる。 夏らしい暑い夜だ、それは相応に気分を爽快にさせた。 「ニオイは消えねぇけどな、」 しずかに桶を置く、乱暴に髪を拭いては、着替えて足早にある部屋へ。 そ、と障子戸をあけると、その奥で彼女が寝息を立てていた。 もっと早く帰ってくるつもりだったから、部屋で待たせていたのだ。 七夕にあやかって、久しぶりに会えると思ったのが、浅はかだった。 もう遠に寝る時間だ。 「・・・、」 静かに呼ぶ、囁かれるようなそれに身じろき一つ。 さら、と前髪が流れて、瞼がぴくりと動いた。 「、」 今度は幾分しっかりと、呼ぶ。 そ、と障子戸を閉めた。 「、」 もう一度、呼んだ。 衣擦れの音がして、彼女が起きたのだと分かった。 そ、と障子戸に手を触れては、隔たれたままの彼女を、呼ぶ。 「」 障子戸越しに新八の手を触れては、は「新八・・・?」と答えた。 痛いほど、優しい声だった。 その手から、ぬくもりが、伝わってくる気がした。 自分の手は、どれほど冷え切っているだろうか? 「新八、・・・・・・おかえりなさい」 ぎゅ、と目を閉じた。自分はいつだってズルイ。彼女の優しさに甘えて、不安にさせている。 大切にしたい、護りたいと思うほどに、離れていく、距離。 分かっている、分かっているのに。 (それを言葉にできない) 明日もまた、自分はここに、扉のこちら側へ、彼女を置いていく。 どんなに温かく、どんなに愛しくとも、自分は外の空気に首輪を引かれるのだ。 そして、その扉は、開けたら最後、永遠に開くことがないかもしれない。 「・・・・・・・・・・・ただいま、遅くなって御免ネ」 「んーん・・・、開けても、いい?」 の柔らかな声がして、障子戸がそろそろと開けられる。 半分欠けた月が明るくて、手で目を陰らす。 そして、その瞳に、新八の姿は映らない。 「・・・・新八・・・・?」 驚いては、きょろ、と辺りを見回す。 そんな彼女を廊下の暗がりから、呼ぶ。 呼べば安堵したように、新八の方を、向いた。 だが、彼女から新八は闇に紛れてしまって見えない。 「」 「新八・・・?どうしたの?」 そっと手を差し伸べる。 彼女がいる、光の方へ。 (君と俺を隔てる壁は、深く流れが速い川じゃない) こんなにも、傍に、いる。 は迷うことなくこの手を握ってくれるのだろう。 どんなに汚れていたって、新八が差し出しさえすれば、握ってくれる。 新八はに言えない言葉がたくさんある。 それはも同じで、新八に言えない言葉がたくさんある。 もしかしたら、一生言うことのない、自分だけの秘密。 共有なんてできないのだ。それは恐らく変わらない。 だけどそれなら、 「おいで、・・・秘密を作ろう」 君をもっと知りたいんだ。 自分の秘密を共有できないなら、俺たちの秘密を作ろう。 ----------------------------------------------------------- この後どうなったかはナイショ笑。てか、何回名前呼んでるんだwww 七夕!おめでとう! そして駄文っぷりが果てしないwwwwww申し訳ないwwwwww ラブラブエロと迷って、結局こっちに行ったっていうwww もうエロはあれだよね、ちょっと恥ずかしくて書けないよね^^^^^^^ 寄りそう二人の心は、色んな壁を乗り越えて、強くなっていくんだね。 Happy Birthday to KOEDA ..... |