にゃん、にゃん。


(ご主人、相手をして!)

もそもそと布団の中にもぐりこむ。
暖かい空気が充満している。
ご主人の体温だ。


「…ん…」


小さな声に、寝返り。
寝巻きの少々肌蹴た胸元に寝そべる。
規則的に上下する揺れがなんとも心地いい。
ご主人の白い肌をぺろりとして、わたしは満足げに頬を寄せるわけです。
すべすべで心地よい温度。安心する、ご主人の匂い。
わたしの呼吸とご主人の寝息のリズムが合えば、あとはまどろみに任せるだけ。
ほかほかと暖かい、ご主人と布団の狭間。


んにゃぁ、


布団から顔だけを出して、ご主人の寝顔を拝見する。
眉間に寄せられた皺など見受けられない。
幸せな夢を見ているのだろうか、
猫ながらにその健やかな寝顔はほほえましいもので。
(わたしも幸せになってくるのです)
無防備だ、もっと近寄ってしまおうか。




「ん…」



わたしが盗み見をした瞬間、ご主人の顔がゆがんで、うめき声。
(起きるの?起きるの?)
相手をしてもらえるかもという期待と、もう眠たくなってきたという気持ちが入り混じる。


「…、てめぇ…」


ぱちりとあの青緑の目が開かれて、わたしを見下ろしています。
ひどく不機嫌そうですが、わたしには関係がありません。
眠くなってしまったのです。


んにゃぁ、


(もう寝る!)


そうわたしが頭を腕に乗せて目を閉じた時。


「重ェんだよ、乗るな、」


クスクスと笑いが漏れて、わたしの首根っこを摘み上げるご主人。

みんっ。

(そこはだめにゃー)
力が出なくなるのです、首根っこ、弱点。鳴き声も出なくなる。
同じ視線の高さまで上げると、ぽすりと布団の上に下ろされる。
力なくしょんぼりとするわたしの耳に触れては、


「寝るならそこにしろ、俺の上で寝んな」


寝苦しいんだよ、とわたしの頭を撫でるのです。
ご主人の青緑の目が、わたしの目の前に迫っています。
まるで鏡のようなそれには、間違いなくわたしが映っているわけで。

にゃ、

短く鳴くと、わたしは四肢を自由に投げ出して、眠りにつくわけです。
(ご主人の傍は安全)
警戒するものが何も無いから。











朝起きたとき、わたしの右前足がご主人の頬を猫ぱんちしていたことは、わたしだけの内緒ということで。













「んだよ、くすぐって」


お詫びのしるしにご主人の頬に頭を擦り付ける。
ごめんなさい、足汚いけど許してね。



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あー、一緒に寝たい。
無防備な冬獅郎が見たい。