あのね、あのね、聞いて聞いて。

ご主人がわたしのご飯をおいていきませんでした。

みゃぁ〜、み、ぁ。

泣いてみますが返る声などありません。
どうしたらいいのでしょう、わたしには分かりません。
そろそろ午後のおやつの時間、空腹が限界です。

にゃぁ、にゃぁ。

ご主人はいつも真夜中に帰ってきます。
あと何時間待てばご飯にありつけるのでしょうか。
おなかすいたおなかすいた。
あても無くとたとたと部屋の中を歩き回る。
今日は暖かな日が差し込んでいる、さぞかし外は気持ちがいいのだろう。

ふみゃぁ、

ぐったりと自分専用の座布団に顔を埋めます。
窓から降り注ぐ暖かい日の光。
ふにふにと座布団に鼻頭を押さえつけます。
がまんできない。おなかすいた。
ご主人は几帳面な人で、部屋はすっきり片付いています。
食べ物だって例外ではないのです。
机の上に放ってはおかないし、もちろんわたしのご飯だって、
今ではちょっとご主人を恨みます。

、大人しくしてろよ』

ご主人が頭を撫でてくれた記憶がよみがえりますが、空腹がそれをかき消します。

かりかりかりかり、

数刻前、ご主人が出て行った扉に爪を立てます。
もちろんそれは開くことなく、むなしく傷をつけるだけ。
これではご主人に怒られてしまいます。

たんっ

かりかりかり、

(ぉ。)

上がった窓が開きました。
良く晴れた青い空がわたしの目に映ります。
久しぶりの、空。

にゃぁー!

たんっと駆け出すが早いか、ドドン!と届いた時を知らせる太鼓の音。


ゥ、フニャァァアアア!


気づいたときにはまっさかさま!
ここはどこ!?
足はいつになったら地面に着くの!?
ひゅぅうっと落ちていく、その過程かで、弱点をつままれたのです。

「ンだァ?こいつ」

わたしの目に映ったのは、碧い目のご主人でもなく、青い空でもなく、


「あっれぇ〜、剣ちゃん!猫さんだねぇっ!」
「それは見りゃ分かる」



真っ黒の目をした、大きい人でした。
何で何で何で!?







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最初は十一番隊にお邪魔しましょう!!