こ の 腕 の 中 に 閉 じ 込 め て お け ば 、 き っ と 失 わ ね ぇ の に 。




「んー…、…冬獅郎…?」

まだ外は薄暗い、白けた空が広がっている。
隣で眠っていたはずの彼が、自分を抱き締める感覚で目が覚めた。

「…わり、起こしたか?」
「起きちゃいました、」

くすくすと笑っては彼の腕に頬を寄せる。
遮光ではないカーテンから少し光が入って、部屋を照らしていた。
ちらりと見上げると、彼が薄く微笑って応える。
珍しい表情、この表情を見れるだけで、自分の心が満たされるのが分かる。
ふわふわと温かな感情が、確実に心を包んでいく。

、」

ふと名を呼ばれて現に戻る。
なぁに、と返す前にぎゅうと強く抱き締められた。

「寝惚けているんですか?」
「そうかもしれねぇな」

目を閉じて薄く笑う。
また睡眠に戻るのだろう、規則正しい息遣いが聞こえ始める。
その様子に満足を感じながら、自分もまた、目を閉じる。
ずっとこうしていれたらいいのに、夜が明けなければ良い。
ずっと夢の中にいる心地がする。
ここは現実じゃない。

、」
「…冬獅郎」

こんなに幸福なのに切ないのはなぜ?













ずっとずっと、

こうしていれたなら、

失うことなど

知らずに済むのに。

















「行ってくる」

でもあなたは出かけていく、白と黒の世界に。




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冬獅郎ー!すきだー!←
すきだから、失うことを思ってしまう。