「ほんとうお星様が綺麗ねぇ」

のんびりとした口調で、わたしは呟いた。
隊舎の一番高いところに昇って、夜空を見上げている。
降り注ぐかのような星空に、わたしはただ、吸い込まれそうなほど見入っていた。

…こんなところに居たのか」

心地のいい冷風が駆け抜けて、彼の声。
闇にも目映い白銀。
星空に負けず劣らずのきらめき、に見える。

「冬獅郎、」
「探したぞ」

そんなに探してないくせに、と思った。
だって彼はわたしを見つけるのが得意だから。

「誕生日ぐらい家で大人しく俺を待てよ」

むっすりと、いつも通り眉間に皺を寄せて、腕を組む。
わたしと彼は同じ十番隊、勿論立場は全然違う。
だけど付き合い始めて早3年目。

「だってあなた遅いんですもん」
「で、迎えに来て、ここに居るのかよ」

本当に迎えに来る気あんのか?と愚痴り、冬獅郎はわたしの横に腰を下ろす。

「星を、見ていたの」
「…綺麗だな」
「でしょう、綺麗なもの見るのって良いわよねぇ」
「そうか?」

わたしの言葉にすかさず入った呆れと否定の声。
ちらりと横を見ると、空を見上げる冬獅郎の姿。
遠くから眺めていればきっと絵になるだろうに、とわたしはこの近距離を憂いた、不謹慎にも。

「あんま綺麗なもんは見ていたくねェ、」

冬獅郎はそう呟くと、ごろりと寝転んだ。
目を伏せて、もう星は見ない気でいる。

「冬獅郎〜?」
「お前の誕生日だろ、付き合ってやるよ」

寝てしまうのだろうか。
恐らく彼はこう言いたいのだろう、綺麗なものは傍のものを穢れさせる、と。
比較対象になれば、汚れているのは自分だから、いやになる、と。

「綺麗なもの見ていると心が洗われる感じがするんだけどなぁ」

冬獅郎と同じようにわたしも寝転んだ。
でも目は閉じない、まっすぐに上空を見仰ぐ。

「………なら、俺はお前を見ていることにする」
「ぶっ、な、何よ、」













「こんな星空より、お前の目に映ったそれのほうが綺麗に見えるからな」











くすくすっと小さく笑って、わたしの眸を覗き込んだ。
かぁっと熱くなる、頬。(何恥ずかしいことさらりと言ってるんだ!)
きっと素で言ってる、気づいてたら恥ずかしくてとても言えたもんじゃない。
そうして、触れる肌の温もりと、感じる彼の唇の感触。



誕生日おめでとう、



(あぁ星空なんてもう見えないでしょう、わたしの目にはあなたがいっぱいなんだから)















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日番谷さんでしたー。
はい、次。