が遺したものを片付ける気にはなれなかった。
遺体の無い小さな葬式が終わり、与えられた忌日の休み。
涙は一滴も出なかった。
何もかもが、俺の意識の外で流れていく。
いやに広く感じる家の中、一人だとこんなものなのか、と呟く。
自分は、この家の中に、いつも彼女を一人残していたのかと、認めざるを得なかった。

「さむい、」

寒かった。
なぜなのか、分からなかった。
「冬獅郎、」風邪引きますよ、優しい声を記憶の底から引っ張りあげた。

「あぁ、そうだな」

静かに目を伏せる。
床に寝そべって、がいつもかけてくれたブランケットに包まった。
床はいやに冷たかった、俺を拒絶してるみたいに。

「…あったけェよ、

目を閉じる、暗い闇に引きずられる感覚。
頭の芯が痺れていた、眠りたかった。
もう、目覚めなど来なければいい、目覚めに、お前の立会いが無いのなら。


もう一度、姿を見せてくれ。




零れた小さな一滴、

堕ちて堕ちて、

堕ちていく、

空の無い世界へ






























「よく来てくれたね」

ぽかん、その言葉が一番良く合うだろう。
わたしの見上げる高い高い階段の上、椅子に座すその姿。

「あ、藍染隊長…!?」
「ボクもおるで〜ちゃん」
「…市丸、君は黙っていてくれないか」
「何や、ケチなおっさんやなぁ」
「おっさん!?おっさんじゃないでしょ、ギン!?」
「ひどいっみたいな顔せんでくださいますか、おっさん隊長」

おっさん、の言葉にショックを受けたのか、うなだれるように藍染隊長は黙った。
ともかく、死んだと思ったら薄暗いこんなところで目覚めてしまった。

「…あの、」
「あぁ、ようこそ、虚圏へ」

しなやかな京弁が降ってきて、市丸隊長がわたしのほうへ降りてきた。
末端の死神であるわたしにも、この三人の隊長の暴挙は届いていた。
あまり会話をしたことがないが、冬獅郎を通して何度か顔は合わせている。
こんな人たちだとは思わなかったが、

「君はね、死んだんよ?」
「…はぁ、」
「だから早う忘れなアカン。君はこれからこっち側なんや」

クスクスと、市丸隊長が、いつもの顔で笑った。
わたしの理解の遅い頭が、警報を鳴らしていた。


これなら、死んだほうがマシだ、と。



そうして降り注ぐ、

小さな雫







----------------------------------------------
破面が食い込む話を書いてみました。
えーっと、続きます。
けど、バカみたいな話なんで、もうすぐ終わります←
シリアスじゃないです、バカみたいな話です。