【BLEACH】
なぁ、お前は今何をどう思ってる?
俺は俺の目とお前の目、同じモノを見てるって信じてぇけど。
「日番谷隊長?」
静かに声をかける。
「隊長ってば」
起きる気配など無い。
「寝てるの?冬獅郎」
〜風邪っぴき意地っ張りロンリーナイト〜
熱を帯びた荒い呼吸と、額に浮かんだ汗。
風邪と彼の体が戦っている証拠だ。
「…本当に、馬鹿なんだから」
あたしは呟いて、ベッドの横の椅子に腰を下ろす。
やっと自分の状態を自覚した彼が執務室から出てきたところを襲った。
襲った、と言うには語弊がある。
少し強めに鬼道を入れて、眠ってもらっただけだ。
本当は、あんな攻撃いつもの彼なら寝ててでも防げた。
「限界だと、悲鳴を上げていたのに。あたしってば」
こんなに近くにいて、気付けなかった自分を恨む。
そうして目の前に横たわる彼を見下ろす。
彼の手を握って、あたしはただ彼を見下ろしていた。
半刻ほど経って日は傾き西日が差している。
タオルの水を替えようと腰を上げた時。
くんっと腕を引っ張られた。
「…?」
「あら、冬獅郎。おはようございます」
にこり、と笑ってあたしは席を立とうとする。
「…手、離して、冬獅郎」
あたしが握っていた手に、今度は握られている。
「…いやだ」
「いやだってあなたねぇ…」
困ったひと、とあたしはもう一度腰を下ろす。
「ご気分の方は」
「…良く、ねぇな」
「そう、ですか…」
素直に口にされたので、少し戸惑った。
それでも“良くない”程度じゃないはず、多分これは彼なりの気遣いで―…。
「どうかしたのか?」
逆に冬獅郎があたしに尋ねた。
「いえ、何も」
にへらと笑って、再び視線を落としたとき。
「お前、そうやって言いたい事我慢すんの止めろ」
「…は?」
急な展開についていけず、あたしは怪訝に眉を寄せる。
「笑って、何でも、流れていくと思うなよ」
「…ちょ、冬獅郎?」
それはまるでうわ言のようで、いつかの声よりも本音を含んでいそうだった。
「お前は…そうやって何も言わねぇから、苦しくなるんだよ」
その言葉にあたしはイラっとした。
違うでしょう。
違うでしょう?
「あたしが何も言わないのではなくて、あなたが何も言わないんじゃない」
風邪を引いて弱っている彼に、卑怯だとも思ったけど、あたしはそのまま言った。
少し面食らったような彼の顔が下にある。
「今回の事もそう、あたしが訊いてもあなたは言ってくれなかった…」
違う?とあたしは首をかしげる。
「…?」
「ねぇ、苦しいのはあなたの方なんじゃなくて?」
「ちが「違わないと思うわよ…あたしは、知りたいよ…?冬獅郎のこと」
あたしが彼の言葉をさえぎる時は、これ以上言い争わないため。
厭なのよ、あなたにそんなカオさせるのが。
これ以上ここであなたと言い争うことはできない。
「…寝たらどう、あなたに今一番必要なのは睡眠と栄養です」
さらりと言って彼を見下ろし立ち上がる、今度こそ立ち上がれた、その筈だった。
ぐんっ!
先ほどの倍はある力で腕が引かれる。
持っていた桶の水が、こぼれて、あたしにかかる。
冷たい。
「ちょ、何するのよ、冬獅郎」
「お前以外何も要らねぇ、…お前がほしい」
「………は?」
つかまれた腕が熱い。
そのまま引きずられるようにあたしはベッドに尻餅をついた。
「と、ちょ、」
「―――……‥俺に必要なのは、お前だから」
耳元でささやかれるだけで、私は体の芯が熱くなるのを感じた。
冬獅郎の熱い息が耳にかかる、思わず目を瞑った。
「お前が言ったんだぜ…?俺に言え、って」
「…だ、から…って!」
抗議を口にしようとした瞬間、ぐっと押し倒された。
背には布団の感触、見上げる先、天井と自分の間に愛しい彼がいる。
「…とう「悪ィ、もう止まんねぇ…」
今度言葉を遮ったのは冬獅郎。
− NOT ONLY −
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こっから裏〜。