【BLEACH】






好きです。

好きです。



大好きです。



ねぇ、あなたにこの想いは届いていますか。









〜好きです〜










「だァいすき」

「誰がだよ」




「うぎゃあぁああぁあああぁあぁ!!!???」





「うるせぇ!!」


十番隊舎の屋根の上、仰向けになりつつ空を見上げて呟いた一言に返る声。

そして視界に入った、空以外のモノ。

予想外の、顔のドアップ。


もとは小さいから、言うほど大きいという感じは無いが。


「ひ、ひつ、つ…」

「おー、お前俺の名前もまともに呼べなくなったか?呆れたな…」

「日番谷隊長!!」

「そうだが?」


しれっと彼は返事をする。


「こんなトコで何してんですかァ?」

「それは逆にお前に訊きたい、何してんだ」

「ちゃァんと疑問系で訊いてくださいー」

「てめぇ…何をしているんだ?」


怒りか肩を震わせながら低い声で問う彼に、満足そうにあたしは笑った。

本日の天候は良好、仕事はこれから現世で虚を倒す予定。

あたしはあまり刀、抜きたくないんだけど。



彼に刀を抜かせるよりはマシ。



「空を見てましたー」




「ほっほーぅ、仕事をサボってか?」


「これから行くトコですよぅ」


人聞きの悪い、とあたしは頬を膨らます。


きっと誰も知らない。




あたしが刀を抜きたくない事。でもそれ以上に抜かせたくないひとがいる事。




だいすきなひとがいる事。





「ったく…行くなら早く行けよ」

「分かってますよ…」


言いながらあたしは起き上がる。


「行ってこい…何なら付いて行ってやろうか?」


「は?」


「は?じゃねぇよ。言っとくが俺の仕事はもう終わってんだよ」

「冗談じゃないですよ、あたし一人で充分です!」

首を横に振り、その上手まで振る。

「オイオイ、そんな拒否しなくても良いだろうがよ…」

少したじたじと身を引きながら彼は言った。

「それじゃ行ってきますね」


あたしは死覇装の裾を払う。


腰に差した刀を押さえ小さく息をついた。


「オイ、やっぱり俺も…」

先を行きかけたあたしの死覇装の裾掴み、彼は上目遣いに見上げる。




かわ、可愛い…!(黙れ)




その様子にこの動揺を伝えまいと、あたしは冷めた視線を彼に送る。

「隊長は雛森副隊長の所へでも行ったらどーですか、確か五番隊は非番だったかと…」

「お前、何言って…」

「それじゃァ行って参りますんで」


困惑する彼にあたしは踵を返す。


「開錠」


あたしは現世への扉をくぐった。









こんなはずじゃなかった。


何だこれは。


大虚が3匹も居るなんて、聞いてない。


こんなはずじゃなかった。


それにこんなの、あたしの手に負えるはずがない。



「く、っそ!!」


あたしには勿論、卍解なんてできないし。

大虚を相手に太刀打ちすらできない。


「縛道の十五!旋鎖!!」


鬼道なんて、気休め。



とにかく生きなきゃ。



意識はそこにしかない。



途端、ズル、と左足が滑った。


「もう、最悪」


その言葉のうちには『もうブチ切れたわ』と言う響きがこもっていた。

救援を呼んだはいいが、もう遅い。


ブチ切れたんだから。


刀を抜く。


「律せよ  月瞬!」


もう一度だけ、抗う力をください、月瞬。

不甲斐無くてご免なさい、あなたは強いのに。


ギッと一瞥をくれてやり、手に力を込める。



「ったく、だから言っただろ。俺も行くって」



あたしの目に映ったのは身の丈に似合わない低い声をした、死神――――…。


「お前、刀抜くの厭なんだろ」

「…え?」

「だったら俺が抜いてやるよ」


快晴だった夜。

月が雲に隠れる。

天候さえも左右する、この霊圧は。


「日番谷隊長…」


。俺がお前の敵、ぶっ倒してやっから」


彼と、彼の斬魄刀が大虚を叩き伏せ…送った。


「お前はもう、刀抜かなくて良い」


彼はあたしを見ない。



「ち、がう…違います、日番谷隊長」

刀、抜きたくない。

だけど、それ以上にあなたに刀、抜いてほしくない。

「あぁ?」

「あなたに刀抜かせるぐらいなら、あたしは自分の刀抜きますから」

血液を失った震える足に力を込め、姿勢を保つ。




刀を抜くと言う事は危機と対峙すると言う事だから。


守ってなんてくれなくて良い。


自分の身ぐらい自分で守ります。


自分から悪者にならないで。

堕ちていかないで。





「お前馬鹿だろ」

「は?」

「お前は弱い、俺は強い。だから守る。当然だ」


何て理屈だ。


背を向けたままの彼に、あたしは独り愚痴る。


「悔しかったら俺の所まで来いよ、


挑戦的に見えた。

だけど不安げでもあった。


「悔しかったら、お前が弱い事以外に俺に刀抜かせる理由、見つけてみろよ」


心なしか、揺れているようだった。


「何で、あたしが刀抜くの厭だって…」

「お前の事だ、分からない筈無いだろ」

「…それってどういう意味ですか」



「ッ知るか!帰るぞ!」



ようやく彼はこちらを向いた。

雲から月は顔を出し、いくらか照らされた彼の顔はどこか照れくさそうだった。





好きです。

好きです。


あなたがすきです。


大好きです。


この気持ち、あなたに届きますか?









あなたに負けないような人になりたい。



「何ですか、隊長」

「…俺と雛森はただの幼馴染だからな!」



あなたに愛される人になりたい。



守ってくれなくても良い。

強くなくても良い。



「…分かりました」



あなたが好き。



だァいすき。






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何コレ。(うわぁ)
ちょっと引いてしまった。
失礼しました。(謝)