「おはようございます、冬獅郎」 部屋から出てきた彼に向かって微笑みかける。 「…はよ、今、何時だ?」 目を擦りながら挨拶を口にする。 彼には珍しく遅い起床。 まだ目が覚めていないようで、ぼんやりとを見上げた。 「もうお昼ですよ」 ぼさぼさの髪を撫でてやる、その意が通じたようで、恥ずかしげに彼は視線を逸らした。 (かわいい) その様子が可愛らしくて、つい笑ってしまう。 「顔洗ってくる、」 「ん、いってらっしゃい」 くすくすと笑いを堪えるように見てやると、逃げるように洗面所に消えていった。 その背を見送って、はカーテンを開ける。 「わぁ…すごい、積もったのね」 今朝から降り続いた雪は30センチほどの積雪になっていた。 下界は真っ白で、空も真っ白で、暖かい室内のせいで窓も真っ白になりつつある。 静かに静かに雪が降り積もる。 ぼんやりと外を眺めていた。 窓の冷たさが、なんとなく心地よかった。 「、」 ふわりと後ろから抱きしめられた。 「…んな顔すんな」 ぎゅうっと強く抱きしめての背中に顔を埋める。 そんな、とはどんな顔なのか、には理解ができずにいた。 「何でもないのよ」 肩越しに目を細めて微笑む。 冬獅郎はふと視線を上げて、を見つめた。 「カーテン閉めろ、体冷えるぞ」 言われるままにはカーテンを閉め、部屋の中に戻る。 暖かい空気が充満している。 それでも部屋の設定温度は低めだ。 「もっと暖かくしろ」 む、と不機嫌そうに眉を寄せて彼は言った。 が寒がりなのと、そんなに体が丈夫ではないのを憂いての抗議だ。 それがあってか、冬獅郎はを“もう”抱かない。 どんなに愛しくても、どんなに湧き上がった性欲が強くても。 「あら、これでちょうどよくありません?」 「…“俺にとって”ちょうどよくても意味ねーんだよ、馬鹿」 肩を竦められるが、はふふっと小さく笑うとその抗議をさらりと流した。 「…雪、もっと積もらねーかな、家から出られねぇぐらいに」 そう冬獅郎が冗談めかして笑った。 「家から出られなくなったら困るでしょう?」 同じようにも笑う。 お互いがお互いの引いた一線を越えないように、ふわふわとした関係が続く。 「家から出られなくなれば、ずっとお前と一緒に居れる、」 に、と冬獅郎は笑ってくれる。 (だけどもう触れられない)求めるだけ傷つける。 求めれば、彼を苦しめる。 求めなくても、彼は苦しむのに。 一線を越えても越えなくても、彼は、 は言い知れぬせつなさに、胸の奥が痛んだ。 (わたしは何をしているんだろう) 「つーか、先起きたんなら起こせよな」 痛みをいて振り払うと、冬獅郎の言葉にはきょとりと首をかしげた。 「だって、せっかく休んでいるのだから…」 忙しく働く彼が休める時間は、きっちり休んでもらいたい。 「あのなぁ、…俺はお前と話してぇし、お前の顔見てたいんだよ」 一分でも、一秒でも長く、永く、永遠に。 雪の儚さよ もう俺に何も奪わせないでくれ (冬が終わったら消えてしまうように、お前もいなくなるんじゃねぇかって、) ****** 結局シリアスーごめん!(笑) |