【BLEACH】




ホラ、ねぇ。

こんなに私を悩ませるのはあなただけ。

知っているでしょう。




今日は12月19日、明日は20日。




…。





(やばい!)






焦る。


忘れていたわけじゃない、考えていたら時間が経ってしまっただけだ。


猶予は今日一日。


もうこれは誰かに頼るしかない。


ちゃん、どうしたの?」

「あ、雛森副隊長!」


う〜んと唸りながら歩いていると、前から来た雛森五番副隊長さんに声を掛けられた。

の立場は十番隊第五席、結構腕の立つ女傑だといわれている。

その噂も、副隊長の彼女の前では薄れる。

(日番谷隊長の…幼馴染)

それだけでもの心を揺らすのは充分だった。

そんな彼女に相談なんて…と思うものの、今更体裁を気にしていては間に合わなくなる。

彼と一番長く居た彼女なら、何か良い案をくれるはず…!!


そう、明日は日番谷隊長の誕生日。

付き合い始めてからはじめての誕生日だ。


「わたしはね…科学技術局の人に頼んで、極秘に作ってもらったの。

 特性の身長伸ばし薬


コソコソと雛森はに耳打ちする。


(はい!!??)


笑顔で彼女はそう言い放った。

はポカンとするばかり。


「よ、喜ぶと良いね…」

「きっと大喜びだよ!!」


にこっと満面の笑みを浮かべて雛森は言う。

(隊長…辛いね)

静かに心中で慰めるなのでした…。

笑顔で手を振る雛森にも応えつつ、踵を返す。


「はぁ〜」


溜息をつきつつ隊舎に入ると、松本十番副隊長がいた。


「あれ、珍しいですね」

「あ、ー♪」

「乱菊さ「っ」


ばふっと、挨拶もままならない内に抱き締められる。


「ぷはっ!苦しいですよ、乱菊さん!」

「あら、ごめんねぇ〜。それよりも見て!」


せかされるように前に出される。

目の前にあるのは大きなケーキ。

(日番谷隊長…の、誕生日ケーキ?)


「席官だけ集めてね?」


ナイショで、と松本はウインクしつつ口元に人差し指を寄せた。


「…」


は視線を下に落としたまま、考える。


「…、どうかしたの?」


「…それが、乱菊さん」


かくかくしかじかで、とは事情を話した。


「まだプレゼントが決まらない?」

「…はい…」

「そんなの簡単よ、自身がプレゼントになれば失敗は無いわ」


にこ、と松本らしい事を言う。


「私自身って…何言ってるんですか、乱菊さん!」


は頬を染め、抗議を口にした。



「でもきっと、それが一番…「私はもうすでに日番谷隊長のものですよ」


「…あ、そう」


当然のごとく言うに松本は脱力する。


「…何か良い案無いですかねぇ〜」


う〜ん、と唸る。


「去年は花火、上げられたんでしょう?今年もド派手に…」


「花火がどうかしたか?」


急な声に、隊舎中がぎょっとした。



「ひ、日番谷隊長!!!いたんですか!?」


「…松本、俺がいちゃ悪ィってのか?大体仕事もしねぇでテメェら何サボってやがる!」


眉間の皺を深くし、日番谷は睨んだ。


(こ、こわっ)


は隅に避難する。


!」


びく、との肩が揺れる。


「は、はい!」

「書類は終わってんのか?」

「終わってます!」

「あとで執務室に持って来い」

「は、はい!!」


(あちゃ〜、嫌な時に当たっちゃったな…)

は日番谷の背を見送りつつ大きくため息を付いた。

ポン、と肩を叩かれる。

見ると松本が哀れむ様な視線を向け。


「がんばって」


と言った。

(今この瞬間、あたし隊舎中の人に見放されてる…)

遠い目をしつつ、は書類を抱え、日番谷の執務室へと向かった。




「第五席、です!日番谷隊長、書類をお持ちしました!」


若干緊張しつつ、は上擦った声で言った。


「入れ」

「失礼します!」


一応機敏に行動する。


「ご苦労だったな」


日番谷は一通り確認すると、二と独特な笑みを浮かべ労いの言葉を言った。


「で…?何の話をしてたんだ?」

「え?いつです?」

「さっき、松本たちと」


湯のみに手をやり、一口飲み「にげぇ」と眉を寄せ言った。

その様子を見て、は新しくお茶を淹れ始めた。


「あぁ、隊長のお誕生日のお話でしたよ」

「…あぁ…て、あいつらこの忙しい時期に…」

「良いじゃないですか、愛されてますね」


くすくす、と笑いつつ冷たくなったお茶を捨て湯のみを温めるとお茶を注いだ。

照れたのか「馬鹿が」と背中で聞いて、コトンと机に湯のみを置く。


「去年は花火を上げられたそうで…あ、隊長ほしいものとか無いんですか?」

「ねぇな…さんきゅ」


礼を言いつつ日番谷はお茶を口に運ぶ。

(やっぱり…)

予想された答えだけに、は肩を落とした。

そんな様子を横目で見つつ、日番谷は小さく笑った。


「去年は花火見て…それもうれしかったけどな…」


(そんな派手な事できない)

げんなりとする


「でもんな花見てもしょうがねぇよ、今年はお前がいてくれればいい、


職務中にも関わらず日番谷はを名前で呼んだ。

驚いたように顔を上げる


「今年はお前が花でどうだ、十分だぜ?」


伏せ目がちに日番谷は笑った。


「…日番谷隊長、どこでそんな言葉を!?」


は同然としながら言った。

雰囲気ぶち壊しである。

でも言葉の裏、心の奥ではどうしようもないくらいうれしいのだ。

言い様の無いくらいに。


「う、うるせぇ!!」


かぁっと頬を上気させ日番谷はお茶を飲み干した。


「だったら、明日は一日隊長の傍から離れませんよ」

「…良いのかよ、明日俺非番だぜ」

「え゛」

「良いんだな、そうか」


満足そうに日番谷は笑みを浮かべる。

(私取り返しの付かない事を…!)

おたおたとどうにか発言を取り消そうと考える。


「ならお相手頼むぜ、


にやり、としてやったりな笑みを浮かべる彼には悔しげに眉を寄せる。


「上等ですよ、承知しました!」













さて、翌日どんな事があったかは、と日番谷のみぞ知る。











「あの台詞、誰にならったんです」

「…浮竹…と京楽」

「…やっぱりね…」







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意味不明だぜ、誕生日夢なのに前日の話かよ、みたいな。

ほしいなんていう稀有な方がいらしたら、ご自由にどうぞ。




12月20日   日番谷冬獅郎に愛を捧ぐ   ガラクタ。漣。