だれか。

蝶々を捕まえて。

キオクに棲む、真っ黒な蝶々を。










ハザマ     〜無知と既知と〜












目が覚めたらそこは神秘の国でした…(ジ○リっぽく)


「ボケっとしてねぇで目覚ませ」
「………こども?」
「俺はもう良い年越えてんだよ!!!」

まだ醒めない頭で考えつつ出した第一声に冬獅郎は怒鳴った。
冗談じゃない、見た目通り子供だな、とは思った。

「隊長、ツッコミの言葉間違ってると思います」
「………とにかくだ!目覚ませ、大丈夫か」
「…ハイ」

何とか意識がはっきりしてきた。
(確か)
は“死神”の冬獅郎と乱菊に体から魂を抜かれて、奴等の世界に連れてこられた。

「ここは…」
「尸魂界、俺たちの世界だ」
「そうるそさえてー?」
「見事な日本語読み有難う、そう、ここはソウルソサエティー」

そろそろと起き上がるに手を差し出し、乱菊はにこりと笑った。
それを横目で見つつ、冬獅郎は腕を組む。

「起きたばかりだろうが、隊首会が始まる、付いて来い」

冬獅郎はそれだけ言うと、白い羽織を翻した。

「気をつけてね」

にっこりと言う乱菊に差し伸べてくれた手のお礼に頭を下げる。
(とりあえず此処まできてしまったら)
大人しくして現世に帰らせてもらうしか道は無さそうだ。
何しろ此処は。
(長い争いを続けてきた“死神”の世界なのだから)
はそう悟ると、瞼を閉じる。
一瞬の瞬きの後、開いた眸に戸惑いは、無かった。

「日番谷十番隊隊長です、例の人間を連れてまいりました」

急にかしこまったような冬獅郎の敬語に驚きつつも、は扉を見据えた。

「入れ、みな揃っておる」

仰々しい言葉使いにしわがれた声。
その言葉を合図に扉が開く。
廊下よりも幾等か眩しいその場所に、何人かの人がずらりと並んでいた。
(隊首会、と言うくらいなのだから)
恐らくは冬獅郎と同じ“隊長”の肩書きを持つ者たちの集合なのだろう。
冬獅郎が一歩、また一歩前に出て、そしてある一箇所で止まって、
空いていたスペースに立った。



「でっか!!!」



冬獅郎の隣に立つ男は素晴らしくデカイ。




「ちっさ!!!」



「テメェはそれしか言えねぇのか!!!」


デカイ人から冬獅郎に視線を移し叫ぶとすぐさま冬獅郎のツッコミが飛んできた。
このような席だというのに物怖じしないのは幼少のころの訓練のたまものか。
また、冬獅郎もそれに乗ってきた。大したキモである。

「良いツッコミね、少年」
「…」

無言で項垂れる冬獅郎を尻目に、は真っ直ぐ前を見据えた。
そちらから一番、鋭い視線を感じたから。

「ほぅ…主が件の娘じゃな…自己紹介をしようかの。儂は山本元柳斎重国一番隊隊長、総隊長を務めとる」

温厚そうに目を細めて、山本総隊長は言った。
(サンタクロースもびっくりの白ヒゲだこと…触りたい)

「さて、主の名は?」
触りた…じゃなくて、です」
「…?では、主の正体を聴かせてもらおうかの」
「正体も何も、あたしは何も―――…」
「嘘や誤魔化しが通用する甘い世界だとは思わんことじゃ…賢明な主なら分かるであろう」
「…明らかなる脅しですか」

さらりとは切り返す。
もともと度胸はあるほうだ。
確かに、ここにいる連中。
隊首会と言うだけあって、ヤバイ連中の集まりに違いない。
(特にちびっ子の両隣、それから奥のヨン様と狐…。あの奇天烈な奴本気ヤバイ)
を見る目が既に“珍しいものを見た”目になってる。

「本当に何も知らないんですよ。何なんですか、一体」

嘘は言ってない、も元々は“何も知らされてない”側の人間。

「…では何故、主が斬魄刀を所持し虚を魂葬できるのか、自身でも分からぬと?」
「そういう事になりますね」
疑わしきは罰せよ、という言葉を知っておるかの、や」
「…疑わしきは罰せず、じゃないんですか?」

ビリビリと焼け付くような霊圧。
だがこちらが下手に出ることなどないのだ。

「主は疑わしい」
「あたしをどうするつもりです、単刀直入に言ってください」

あたしが霊圧に耐えつつも言葉を搾り出す。
あの総隊長がイライラしてきているのだろうと思った。

「山じぃ、こりゃ骨が折れるね」

軽い笑い声とともに声が割って入った。
場を和ませようとしてるのだ、とも思えた。

「京楽や、黙っておれ」
「おーこわ、はいはい」

両手を挙げ、独り派手な羽織を羽織りかさを被ったヒゲ面のオヤジは黙った。

「しかしながら、元柳斎先生!このような若い子をそれだけで罰してしまうのはいかがなものかと…」

今度は白い長髪の幸の薄そうなオジサンが意見した。

「…誰が罰すると言った?」

山本の声に 「え?」 という声が漏れた。

、主はこれからこちら側に身をおくと誓えるかの」

は山本を凝視する。
(それってつまり)
死神になれという事だろうか。
大まかにいえばそうなのだろう、と納得する。
とりあえず今はウンとでも頷いておかなければいけないようだ。

「…ウン」

(ウンって…)…聴いたかの、皆。これからこやつは“死神”側に付くようじゃ」

山本の声にシィンとする室内。
結論が、出た。

「私は反対です、このような怪しい輩を瀞霊廷内に入れるのは」
「ならば、朽木の。お主がこやつの監視役を勤めればよかろう」
「は?」

朽木の、と呼ばれた男は怪訝に眉を寄せる。
(素晴らしく変な髪飾りを付けた人ね)

「…おっしゃっている意味を計り兼ねますが」
「だからの?こやつが裏切らぬよう、主が監視をすれば良いであろうと言ったのじゃ。それとも朽木のは、こやつの監視の責も負えぬの言うのか?」

もう決まってしまった、とは思った。
山本総隊長の計画は崩れない、もう決まってしまった。
あの朽木と呼ばれた男が何を言おうにも、恐らくは棄却されてしまう。
決められた未来が見えた、と思った。

「待ってください!」

それに異を唱える声が上がるのを除けば。

「異論があるようじゃの、日番谷や」










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これからどんどん絡んでいく予定の死神の方々。