鋼の錬金術師 【Please trust me】 1 〜真理〜


♪」
「何?」
「こ〜れっ」

友人が差し出したのは一冊の単行本。

「あー!!ハガレンじゃん♪貸して貸して」
「いーよ〜、もち♪ロイ大佐かっこ良すぎ!!鼻血もの!!」
「ロイ大佐はいっつもかっこいいよ〜」

これがたちの日常的な会話。
は最近、ハガレンこと『鋼の錬金術師』を読み始めた。

「うわー、早速読もっ」

家に帰るなり、はベッドに横になると本を開いた。

〜、お願い、買い物行ってきて!!」
「ぇえ、」

がっくり、うなだれる。

「お願い、母さんちょっと手が離せないの〜」
「ったく、しょうがないなぁ」


おのれ、お母さんめ…。

ここでの話を少し、しておこう。
の家は代々忍者の家系だ。
まぁ今の時代、忍の仕事なんてあるわけない。
確かに術式や体術は学ぶが、忍を専業している家は殆ど無いと言って良いだろう。
の家も、勿論例外ではなかった。
忍の才に恵まれたは、既に大体の術は記憶したし、体術に至っては免許皆伝。
その点で言って、天才の域だったと言える。
と言っても、日常生活にゃてんで役に立たないものばかりだったが。


「ねぇ、お嬢さん?占い、していかないかぃ?」
「…は?あたし?」
「占いだよ、う・ら・な・い♪」

ウワァ…。
の顔にドン引き、という表情がうつる。

「お生憎様、こと占いに関しちゃあなたより上のつもりなの」
「それじゃぁ、もっと上に興味無いかい?」
「…」

は眉を寄せた。
もっと、上ですって?

「1つ良い事を教えてあげるよ、この本なんだけどね」
「…押し売り?」
「違うよ、君が買わなきゃ良いだけだ。これさ」
「召喚陣…?」
「何か、飼ってみないか?」

ニヤリ、と笑う占い師。
顔は良く分からないが、見える口元が気味悪く笑む。

「良いわね、飼いましょう」

嫌な趣味かな、あたし。
そう脳の隅で思ったが、日常に退屈していたは試しに、とニヤリと笑った。
興味がないわけではなかった、お金を払う価値があったかは分からないけれども。

「買ってきた?ありがとー」
「イイエ、いい買い物ができたから」
「?」

お母さんは、目を丸くして首をかしげている。
そんなきょとんとしないでよ。
は自分の部屋へ入ると、さっそく本を開いた。
…こんな術陣見た事無い…。
少々の不安と大きな好奇心を胸に、は陣を描く。
最後、○の端をつなげた時、
バチィ!!と大きな音と強烈な光が走った。
次の瞬間には、の意識は白とびをした世界に放りこまれた。



『ようこそ、…君は真理を観る勇気があるかな?』

「あんた誰よ」

『よく訊いてくれた!俺はおまえ達が“世界”と呼ぶ存在』

『あるいは“宇宙”、あるいは“神”、あるいは“真理”、あるいは“全”、あるいは“一”』


「まさか」


まさか。

はぐっと拳を握った。


『そして俺は“おまえ”だ』

「あたしは望んでないけど、“真理”なんて」

『しかし着ちまったもんはしょうがねぇだろ?見てけよ、“真理”』

「…等価交換、でしょ?あたしから何を奪うつもり」

『…元の世界の存在、だよ』


それからは、良く分からない。
ただ、ハガレンに書いてあったとおりだ。
大量の情報。
脳に直接流れ込んでくるそれは、どうにも抗いようがない。
そしてそれを唐突に“理解”した。
元々忍として、世界の成り立ちについて“理解”がある方だとは思っていたが。
こんなのって、無い。
苦々しく、は眉を寄せた。
そしてフと気付く。

「ここは何処…」

召喚するつもりではいたが、召喚される気は毛頭無かった筈だが。
目の前には川が流れている。
現実とそう変わらぬ風景、だけどどこかに違和感があった。
どうやらはあの“真理”とやらから放り出されて、変なところに来てしまったらしい。
まぁ、取り敢えず。
あの『透明』が言うには、自分はその“真理”とやらを観た筈だ。
は一気に気を集中させる。
周りの空気がすっと冷えた。

ぱん!

両手を軽く叩く。
そして。
ばん!と寝ていた草の上に手をついた。

バチィ。

練成反応の際に起こる光が走る。
さっきの動作はハガレンお馴染みの練成法。
そして。

「やっちゃった…」

できあがった草かごを見て、は苦笑いする。
まさか、嘘だろう。
でもこれが現実?それともあたしはいつの間にか寝てしまっていたのだろうか?
いや、自分は、来てしまったんだ、と。



―NEXT→

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はーぃ、ハガレン夢。
始めました\(^o^)/
いーやー、参った。
これから続きます!!