【鋼の錬金術師】 40 〜神に背きし者〜
暗闇、ぽつぽつと街灯が付いてる。
あたしは一つの電話ボックスを監視できる建物の影で待ち伏せ中。
ストーリー、つまりここでいう“未来”を変えてみようと思う。
あんなに良い人を、こんな所で失うわけにはいかない。
失う事で、エドたちの道が示されるとしても。
来た。
「早くしろ!軍がやべぇ!!」
ヤバイのはあんたですって、ヒューズ中佐。
「受話器を置いていただけますか、中佐」
さぁ、受話器を。
そう言うのはロス少尉。
でも違う、これはエンヴィーの能力だ。
「ロス少尉…………じゃねぇな、誰だ。あんた」
「誰って…マリア・ロス少尉ですよ。病院で何度も会ってるで…「いいや、違う」
「「ロス少尉は左目の下に泣きボクロがあるんだよ!」」
あたしの声は、ヒューズ中佐のそれと重なる。
「なっ!?誰だ!!」
ロス少尉(恐らくエンヴィー)に一瞬のスキ。
ブォン!
中佐のナイフが空を切る。
「チッ!!」
「中佐、ちゃんと当ててくれなきゃ」
折角のチャンスなんだし、とあたしは続ける。
暗闇に慣れた目は、どこまでも冴えていた。
「お前は…?」
「ちゃん!何でここに!?」
中佐もまさかあたしだとは思わなかったようだ。
その彼に歩み寄る。
「あぁ君がオバハンの言ってた新しい人柱候補、“影忍の錬金術師”さん?」
声はロス少尉のまま。
「まぁね、ラスト姐さんとは2回会っただけだけど…人柱候補なんて大層なモノになってるとは」
光栄至極、とおどけて言う。
「ちゃん、来るな!こいつら…「中佐、来るなって言われてもそれは無理な相談です」
そう言いつつ電話ボックスに近寄る。
「下ろすのはあなたよ、エンヴィー。銃を下ろしなさい」
「!?…何、お前」
「“影忍の錬金術師”よ」
「そんな事を聞いてるんじゃ…ないっ!!」
言い終わりざまにロス少尉(エンヴィー)は発砲した。
それを難無く避ける。
「ちゃん!!!」
「“影忍”のお姉さん?ラストから聞いたけど、“影”を操るんだって?
残念だったね。夜じゃぁ、“影”はできないよ」
ロス少尉(エンヴィー)は不敵に笑う。
けど。
それを同じく、妖艶な笑みであたしは返す。
「言葉を返すようだけど、あたしの“影”は何も物体の“影”だけじゃないのよ?
…あたしは全ての“暗闇”を支配する。
夜はね、あたしの独壇場なの」
あたしはパンっと手を合わせ、ダンっと手を地面につく。
「影と戦った経験はおあり??」
あたしが作ったのは“影”の式神。
式神と言うよりは、“人形”で作り出した一種の“動く人形”。
エンヴィーの気がそちらにそれたスキに、あたしはヒューズ中佐の元に駆け寄る。
「ちゃん!!どうして!?」
「話は後です、中佐。取り敢えず逃げましょう!」
「でもあいつ…!?」
「1回殺しただけじゃ死にません、あいつ等はあたし1人の手には負えない!!」
「何…?」
「逃げますよ、中佐、早く!!」
「ロイに伝えなきゃならん事があるんだ!!」
「そんなの後で大丈夫ですよ!」
生きてればいつだって会えるんです!!
そう中佐の腕を引っ張るけど、いっこうに受話器を置かない。
「中佐!」
「…困るんだよねー…本当、邪魔されちゃさ」
「エンヴィー…」
ぎりっとあたしは奥歯を噛んだ。
“影”が消えていた。
あたしの攻撃力では、この半不死身野郎を殺すことはできない。
大佐レベルの殺傷能力のある攻撃ができたら別だけど。
もともと忍者は“こういうこと”を専門としない。
「あんたは生かしておかないとさ、オバハンがうるさいから」
でも。とエンヴィーは続ける。
「中佐はダメ♪」
「殺させないよ」
あたしはエンヴィーを見据えて言い放つ。
殺させないよ。
中佐とエンヴィーの間に立つ。
「何度も言わせないでくれるかなー…さすがの温厚な俺も怒っちゃうよ?」
ゆらり、とエンヴィーはあたしに歩み寄る。
怖い、けど負けられない。
「ここまで拒否されちゃーさ…ブッ殺すよ、嫉妬(エンヴィー)の姿を見た者は皆殺しだ」
「「ッ!!」」
あたしと中佐が同時に息を呑むのが分かった。
「だから逃げろって、言ったのに…!」
ぎりっと奥歯を噛む。
「ちゃん、俺が何とかするから、早く逃げろ!」
「…なに馬鹿言っちゃってんです、あたしはあなたを助けに来た!」
「馬鹿言ってるのは君だ!!早く逃げろ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ。
「君ら、俺を忘れてない?」
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…長いね★