【鋼の錬金術師】 41 〜世界〜
「目を覚ましたかい?」
声の降ってくるほうを見上げた。
眩しくて、目が眩んだ。
「…エンヴィー?」
「あそこにおいておくのも何だったからね、連れ帰ってきたよ」
「あそこ…」
あたしは、何でこんなところにいる?
何で、横たわって…今まで何してた?
あたしは。
何をしていた?
「ヒューズさん!?」
がばりと起き上がる。
「わ、もう起き上がるんだ?見た目以上にタフだね、影のお嬢さんは」
クスクスと笑みが降ってくる。
「エンヴィー、ここはどこ!?」
「ここ?言ったろ、俺たちの住処…ま、本拠地ではないけどね」
「エンヴィー喋りすぎよ」
「…ラストまで」
目が慣れたのか、影で分かる。
ラスト、エンヴィー、そして恐らくグラトニーが居る。
ここは奴等の拠点らしい。
「ヒューズさんはっ、どうしたの!?」
「訊いてどうするの?確信するだけよ」
あぁ。
やはりあたしは運命を変えることなどできなかったのだ。
「あなたの知っていることを、洗いざらい話してちょうだい」
それでもラストの声は冷酷に、告げる。
「…」
「あの男たった一人の命何だって言うのよ」
「…」
「あなたの大切なものは、焔の大佐でしょう?」
「ヒューズさんだって、大切だった」
「そうでしょうね、でもあなたに二つも大切なものは要らない。贅沢よ」
「…影のお嬢さん、世界は一体何だと思う?」
「…」
せかい?
「分かる?」
ラストが淡々と続ける。
「あたしの、世界」
「あたしたちはね、世界の芯に生み出されたの」
「芯…?」
「一人の世界じゃない、大きな世界よ…そのあたしたちの邪魔をするなら、殺すわ」
「…だからって、世界が大切ならどうして他の世界も守ろうとしない!?
あんたたちが殺したのは誰かの世界だったのよ!!」
「…世界とは侵食し、されるものよ、良く覚えておくことね」
「俺たちは邪魔な世界を消していくのが仕事なんでね」
ぎりっとあたしは奥歯を噛んだ。
睨み上げる。
「もう“殺して欲しい”って顔じゃないのね」
クスクスと動じた様子も無く、ラストは続ける。
「それで、あたしを…どうするの」
「急に思い立ったように資料室へ行くと出て行きましたね」
ロイは中央、軍法会議所にいた。
ヒューズの死の全容を知るためだ。
不自然なことが多すぎる、一体何がこの事件に絡んでいるのか?
「中佐はケガをしたまま電話をしようとして…そこで何か考えていたようです」
その日のヒューズの足取りを追う。
(軍法会議所で何かに気付き…所内で通信できたものをわざわざ…
何だ…あいつは何を伝えようとしていた?)
公衆電話の周囲を見渡す。
そこに舞い落ちてきた一枚の紙切れ。
「…なんだ?」
人形のような形に切り取られたそれには見覚えのあるマークが記されていた。
「…この、星は」
朱で刻まれた五芒星、が使っていた練成陣。
「なぜ、こんなところに?」
(もしやも巻き込まれたのか…!?)
ロイの顔に俄かに波紋の色が浮かぶ。
「…いや、は鋼のと一緒にいるはず」
顎に手を添え、考える、自分を納得させるために。
「殺すの?生かすの?」
あたしの問いかけに、ラストさんの口が動く。
「さようなら、影のお嬢さん」
そこであたしの意識はブツリと切れることになる。
「また、会いましょう?」
艶美な微笑みと妖美なくすくす笑いが、降り注いでいた。
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久しぶりの更新、書いて行けたらいいな。
うん。