【桜蘭高校ホスト部】
4時。
基本、あたしは早起きだ。
でもこの時間はまずいだろ。
思いっきりお年寄りが起きる時間じゃないか。
でも折角目が覚めたのだから、時間を有効に使いたい。
「…しまった」
キッチンに行き、まず思った事。
しょうゆが切れやがった。
昨日の予期せぬ来客の所為だ。
「仕方無い」
あたしは着替えて外に出た。
…近場のコンビニまで、そんなに距離は無い。
歩いていくか。
「…」
「…」
び。
っくりしたー。
【休業日其の三】
部屋を出ると、別の部屋からデカイ人が出てきた。
「モリ先輩…朝早いんですね」
「…こそ」
「しょう油が切れてしまって」
「付き合おう」
は?
「買いに…」
あぁ、そっちか。
一瞬告られたのかと思った。←自意識過剰だ。
「ハイ、行きましょう」
エレベーターに乗る。
静かだ。
あたしもモリ先輩も自分から喋る方では無いから、閑としている。
だけど、別に苦痛じゃない。
「先輩背伸びましたね」
「…それはも」
「はぁ、あたしの場合は異常で」
苦笑とともにあたしは言った。
「名前」
「へ?」
「…どうして呼び方を変えた?」
あたしはハタ、と動きを止めた。
確かに以前は、モリ先輩を崇と呼んでいたけど。
「だって…」
ねぇ?←何。
「気を遣う事は無い」
「でも」
「光邦もそう言ってる」
あぁ、そうか。
ハニー先輩の差し金か。
「昔と今は違うでしょう?先輩」
「違うからこそ、変わらない物を大切にすべきだと思うが」
ガタン。
エレベーターが階下につく。
「そうかもしれません」
「昔に戻れとは、言わない。だけど、俺たちは昔とは変わらずお前の事を」
「もう良いよ、崇」
「」
2つ歳の違う兄が2人できた。
同じ道場で鍛えて、笑って、鍛えて。
嬉しかった。
楽しかった。
でも、ある日を境に、それは夢の幻となる。
別に昔を振りかえるのは苦痛じゃない。
でも、変わるものもある。
「悪いけど、あたしはあたしの姿勢を崩すつもりは無いわ」
「…」
「光邦に言っておいて、あたしを試すんなら自分で来なさいと」
『東宮』のプライドとか、上の立場にあるとか、そんなつもりは無い。
「、違う、これは俺が自分で」
「そうかもしれない、でも、違うかもしれない」
もう良いじゃない。
今日はいやに饒舌なモリ先輩はそれを感じたのか、黙った。
コンビニでしょう油を買い、ついでにレトルトをいくつか、そしてお菓子を買った。
モリ先輩はトレーニングとか言って、走りに行ってしまった。
で。
やっぱりさ、朝ごはん作らなきゃならないのよね。
和風?
洋風?
あいつら好みってバラバラで困るわ…。
一応ご飯とパンは用意するとして…。
あとは味噌汁とおひたしと、ハムとスクランブルエッグ、目玉焼きぐらいしか作れないわよ?
「あぁもう」
何でこうもあたしが悩まなきゃならないのよ。
…よぉーし、作ってやろうじゃない。
これは奴等からの挑戦状と見た!!
まずはお味噌汁。
コーヒー・紅茶用の水も沸騰させておく。
しばらくして、ピンポーン、とインターフォンが鳴った。
モリ先輩!?
出るとそこにはモリ先輩がいて、小さく「手伝う」と言った。
あぁ、朝ご飯の事かな。
「どうぞ」
って言っても、殆ど作り終えて、あとは配膳だけなんだけどね。
「何を…」
すれば良いかって訊いてるのかな?
「あ、じゃぁその棚から食器出してください」
食器、とだけしか言っていないが、モリ先輩は正しい食器を出してくれた。
やっぱり育ち?
「ありがとうございます、これ、入れてもらえますか?」
頷くのを見、あたしは片付けを始めた。
やっぱり先輩は優しい。
…優しいついでに、頼んじゃおうかな。
「先輩」
「…崇だ」
…ム。
「先ぱ「崇」
先輩がこんなに強敵だとは思いませんでした…。
崇、と呼ぶのもアレだが、それ以上に厭な事がこれから待っているのだ。
「崇」
にこり。
そんなに、嬉しそうに微笑まないでよ…。
罪悪感と、ある種の悲壮感を抱えながら、あたしは眉を寄せた。
「どうした?」
「何でも、無いです。あの…一番厄介な事を頼んで良いですか?」
「何だ」
「他の人を起こしてきてくれませんか?…もう7時だし」
早いか?
7時。
AB型ズの寝起きの悪さは、あたしもよく知っている。
あいつらは魔王だ…。←遠い目。
7時なんかに起こしたら、いくらモリ先輩と言えど…
殺される可能性が。
「…やっぱりあと1時間ぐらい寝かせてあげようかな」
「それが良いだろう」
「先輩、コーヒーか何か呑みますか?」
「お茶が良い」
はい、とあたしは頷き、お茶を淹れ、ご飯と味噌汁をよそった。
「あたしたちだけ食べちゃいましょう♪」
モリ先輩は一瞬迷ったように視線を泳がせたが、「ね?」とあたしが言うと頷いた。
「よしっ」
あたしも同じメニューで朝食をとった。
「うん…まぁ中々かな」
「美味しい」
「…ありがとうございます」
「、道場にはもうこないのか」
「え、はい、行かないつもりです」
「そうか」
黙々とモリ先輩は食事をする。
どう言うつもりで、そんな事を訊くのだろう?
「は、光邦を誤解してる」
は?
「昔、光邦はお前に「先輩、止めてください。そんなにハニー先輩が大切ですか?」
崇が、何を言おうとしているかは分かる。
何よ、光邦をそんなにかばっちゃって。
あの事は、光邦と崇が悪いくせに。
でも、今のはあたしが悪い。
八つ当たりだ。
崇が光邦を大切にしてるのは、当たり前だから。
「ごめん、あたしが悪かったわ」
「…俺は、も光邦も大切だ。だから、昔みたいな関係になれば良いと思う」
言葉を選んで、ゆっくり言うけど。
「無理ね」
昔に戻るつもりなんてサラッサラ無い。
でも、崇は本当に優しいから。
光邦の事も、あたしの事も考えてる。
「でも、崇の事は崇って呼んであげても良いわ」
にこり、と笑うと、崇も微笑んでくれた。
それが、何だか幸福で心が安らいで、やっぱり崇は優しいと思った。
そんな静かで幸福な時間が、あたしは大好きだ。
ピンポ――――――ン!!!!!!
誰だァ!!
あたしの幸せを邪魔する奴ァ!!!
ピンポンピンポンピンポン!!!!!!
「絶対環だ」
あたしは思いっきり溜め息を溢し、ドアを開けた。
「ッ!!起きろ!」
「なぁによ、起きてるわ」
ガシッ。
「お腹が減った」
「あんた何様よ」
あたしはそう一言だけ言い、環を中に入れた。
「あれ…モリ先輩?」
何で?と環が首を傾げる。
「崇は手伝ってくれたのよ」
「そうなのか…って、崇!?」
いちいちうるさいわね。
「崇…出番よ、AB型ズと双子を起こしてきて」
…こくん。
しばらくの間があったが、崇はあたしの部屋を出た。
その後、全員が揃うまでには随分時間が掛かったが、
崇に何があったのかは…知らない。
TO BE CONTINUED!!
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ヒロインとハニー先輩との間に何が!?
それはまた後日に…w
てか、この次の話…双子との話なんですけど、データが消え去りました。
はぁぁぁ…。
バレンタインですが、今年はフリー夢書く余裕がありません。
ごめんなさい。