【PEACE MAKER】 例えばこんな逸話 THE THIRD STORY
「…本当に、死んじまったのかよ…?」
絶望的な声、空気だって絶望を含んでいる。
新八の脳は停止寸前、考える事すら、放棄していた。
目の前で、守ると誓った人間が殺されて、消えた。
何も、残って無い。
何も、守れやしない、この両手は。
「聴きましたよ」
障子がバーンと開いて、総司が部屋に入ってきた。
「正直がっかりしました、あなた方には」
冷たい言葉が降ってくる。
がっかりも何も、新八たちが責められる理由は無い。
だが、何も言えなかった。
〜 第八夜 World × Now 〜
「私が巡察に出ている間に、を、正式に盗まれたですって?」
「…違ェよ、を、殺されたんだ」
「私は自分の目で見た事しか信じません!」
総司は頑として譲らない。
新八は言葉にする事さえ億劫で。
自己嫌悪と、後悔の嵐に苛まれていた。
「永倉さん!たしかにだったんですか!?」
「………声も、姿も、確かにだったヨ…」
「私が訊いているのは内面的な問題です!!」
「はァ…?総司何言ってんだよ?」
新八の代わりに佐之が会話に割って入った。
「…もう良いです、この件は私に任せてください。
もう、永倉さんに遠慮なんてしませんから」
そう言い捨て、一瞥を残して、総司は部屋から出て行った。
「何なんだ、あいつッ!!」
「…佐之、落ち着け」
佐之を諌める平助の声が聴こえる。
「なぁ、新八っつぁん。俺、新八っつぁんの事信じてるけど、でも」
「確かに、あれはにしては様子が違いすぎた」
新八は握っていた拳を額に当てる。
「あの時は、色々動揺して―――…気付かなかっただけで」
「…でも、確かにちゃんだったよな?」
「…見た目はな」
平助の言葉に、平助自身も俺もはっとする。
「「変装!?」」
そう、ルピンの子分(であろう奴)は鉄之助そっくりに変装していたじゃないか。
その性格すら写したかのように。
今までルピンが人を殺したという情報は無い。
(確かに、が偽者である事は一つの可能性に過ぎない、でも)
今はそれにすがりつくしかない。
一筋の、希望だ。
「くそっ、何で気付かなかったんだ!?」
「総司のやろう、気付いてやがったな…!!!」
「これじゃ、俺怒られんのも無理ねーな」
苦笑をこぼし、新八は立ち上がる。
「こうしちゃ居られねぇだろ、副長んトコ行くぞ」
それに賛同するかのように他の二人も立ち上がった。
「勝負は今からだぞ、ルピン!」
「くーるがーる!無茶はいかんぜよ!!」
「はーなーせー!!!この変態ドレッド!」
「おんしをここから逃がしたら、わしにとばっちりが来るぜよ!」
「…は?」
そんなの関係ないでしょう、とはそれでも海に飛び込もうとする。
何も身投げするつもりなどない、が、新撰組を離れるなら死んだ方がマシだ。
「わしと世界を見てみんか、クールガール!」
「…世界?」
「そうじゃ!この世界は広い、このせっまい日本に留まっておったら性根も腐りよる!」
リョーマは大手を広げて力説を繰り返す。
「その広い世界を見てみたいとは思わんか?」
「思いません」
きっぱりとは否定した。
世界?
そんなものに興味など毛頭無いのだ。
自分が新撰組にいるのは、お上のためでもお国のためでも何でも無い。
「あたしの世界は新撰組で十分ですから」
「おんしには狭すぎるぜよ!」
「うっさいな〜、あたしの世界はあたしが決めンのよ」
がそう言い放った時、空から影が降ってきた。
「無駄だよ、もうあそこに君の居場所は無い」
「るぴん!」
ザっと、空から降りてきたルピンの抱えているものを見ては絶句した。
「…それ………!!」
「これですか?良くできているでしょう、あなたの“複製品(コピー)”です♪」
にこやかに笑って彼はそれを横たえる。
血まみれで、蒼白となっている顔。
服装、背格好、顔、どれをとっても“そっくり”だ。
「な…、な、どういうつもり!?」
「さ、ミィネ、もう良いよ、起きなサイ」
の問いかけを一切無視して、ルピンはの“複製品”の頬をぺちぺちと叩いた。
瞬間。
「ンー!」
べりべりべり!!
またも剥がれるはずのない、皮膚が破かれる。
(トラウマになるわよ、これ…)
が遠い目をしながら見つめる中、の“複製品”は小さな女の子へと成り代わった。
次項。
〜 第九夜 脱走と兎 〜
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っしゃ!(何が)
とりあえず、こんな感じで。