【PEACE MAKER】   〜クリスマスフリードリーム〜



海の向こうには、聖なる夜があるらしい。

その日に偉大な聖人が生まれて、西暦が数え始められたと聞く。

その日は聖人の誕生と、愛を祝うらしい―――――………。



俺はそんな日も生臭

真白な雪に緋色の血が舞う。


あぁ、なんてオツなんデショ。


自嘲気味に思う。

「はぁ…」

異人もヒマだねェ。

俺は独り、溜め息をつく。

白い息が、寒さを際立たせる。

今日はちょっと使いで外に出た。

その帰りに、数人の浪士にからまれた。


…こんなナリの俺でも新撰組隊士として有名なのかねェ。


永倉新八の名も、売れたもんだネ。


「?」


その時目の前に。


雪と見紛うほどに白い、人…を、見つけた。

(びっくりした…一瞬雪かと思った)

膝丈半分ほどの積雪の上に、人。


綺麗…だけど。


(…死んでんのカナ…)


そんな冷めた事を思いつつ、近づいて肩を揺すってみる。


「…おーい、生きてる?」


冷たい肩を揺する。

すると微かに動いた。


(何だ、生きてる)


でも、ダイジョウブには見えない。

「う〜ん…」

独り唸ってみる。


どうしよう。

このままにしとくのはやっぱり気が引ける。

でもどうしたら良いのか?

屯所に連れていく、か?


「もう…しょうがないか」

面倒は承知だ。

よっこらせ、と年寄り臭く呟く。

(うわー…冷たー…軽―――…)

今日は何かツィてないなァ…。





「わっ!新八っつぁん、何抱えてんの!!」

「ちょっと拾った」

「拾ったって…女の子?」

「うん、野垂れ死にそうだったから」

とにかくサ、平助。

寒いから中に入れてほしいんだけど?


「永倉、何だそれは」

「あ、副長。拾いました」

「あ、副長。拾いました。じゃねぇ。そういう事すんのは総司だけで充分なんだよ」

「土方さんどう言う意味ですか、それー!」

頭を抱える土方副長、その隣でギャァスカ騒ぐ総司。

とにかくサ、お二人さん。

この子を寝かしたいんだけど?


二人の横を通りすぎ、部屋に入る。

「で、話を変えるが永倉。その血はどうした」

(やば…)

話が長くなりそうで、とりあえず俺はその子を布団に寝かす。

もちろん、俺の部屋のね。

「一悶着ありまして」

「斬り捨てたのか」

「まぁ、斬りかかってきたので」

「…そうか」

そう語尾を濁したまま、土方副長は去っていった。


そう。


それは土方副長なりの気遣い。

分かってるから、余計イラついたりして。


ぼーっとその子の顔を見下ろす。

(しっろ―――…)

透き通るような白い肌に、漆黒の髪。


その頬を触る。


やっぱり冷たい。


(死んじゃうのカナ)


俺はペタン、と着替えもせずに布団の横に腰を降ろす。

何も考えずに、その子の顔を眺めてる。


どんな名前なんだろう。

どこから来たのかな。

何であんなトコに居たんだろう。

どんな顔で笑うのかな。


そんな事ばかり浮かんでくる。

イラだった心はすーっと熱を失っていった。


(目、覚まさないカナ…)


漠然とした思いは、心配や願望に変わる。



一刻半ほど経っただろうか?



微かに、睫毛が動いた。

「あ…」

(起きる!?)

俺は身を乗り出した。

うっすらと目が、開いた。

(起きた!!)


目を開けたその子は、一瞬ぱちくりと瞬いた後。



ガバッ!!!



「ぉう!!??」

俺は思わず身を引く。

(何!?)

急にその子は起きあがった。

「ここ、どこですか!」

「…え、新選組屯所だけど…」

「あなた誰?」

「永倉新八…」


って、質問したかったのはこっちなんですけど!?


俺はその子に圧されるままに答える。


「何であたしここにいるの!」

訊いてるって言うよりは、自問してるって感じ。

「や、路に倒れてたから運んだんだヨ」

「…そうなんですか…迷惑かけてすみませんでした」

「いや、構わないケド…それより訊いて良い?」

その子はきょとんと、俺を見てる。

「良いですよ?」

「名前は?」

です」

「ん、チャンね。家はどこ?」

「さぁ…?」




「え」




さぁって何!!??


「覚えてないの?」

「気付いたら、ここに居たんです」


記憶喪失、とか?


…まァ………あれだけ寒い雪の中にいたら、記憶も壊死するか。


「まぁ良いや。いくつ?」

「…十五」



十五って!!!



(そんな子拾って、俺どうすんの…)


改めて気付く。


「行く所は?」

「無い…デス」

「だろうね」

はぁ、と俺は息をつく。

「ここがどんな場所か知ってる?」

「知ってます」

は俺の着物に目を落とす。

あぁそうか。

俺まだ着替えてなかったんだ。


数刻前に斬った浪士の返り血が、まだついてた。


それでも。

「ここに居たい?」

「できる事なら」


…。


怖れる事無く俺を見据えて、は言う。


「山崎くん、副長呼んできてくれる」

「え?」

その子、えーっとが呟く。

それもその筈、この部屋には俺としかいない。

なのに、俺は『山崎くん』と二人以外の名を呼んだ。

「…はい」

声が返る。

やっぱりずっと居たんだ。

気配が去っていくと、俺はやれやれと首を振った。

「今の人、ずっと居たんですか?」

「…うん、たぶんネ」

の驚きの声が返る。

だって、急に来たは不審人物。

そんな人物を副長が放っておくワケが無い。

しばらくして、その副長が大きな足音させてやってきた。

「…永倉、ここは託児所じゃねぇんだ、いい加減にしてくれ。手は足りてる」

話は山崎くんから聞いたらしい。

「賄い方の方が大変そうですが?」

俺は食い下がる。


別にに同情したワケじゃない。


手放したくない。


そうただ、手元に置いておきたい。


「最近隊士も増えてきたし…料理できるよネ?」

急に話を振られたは驚いたけれど、「はい」と言った。

「ここで働きてぇのか」

副長はドスの効いた声でに訊く。

「はい」

もそれに負けぬように返す。


(大した子だなァ)


そう思った。

「しょうがねぇな…しっかり働けよ。局長には俺から言っておく」

「「ありがとうございます!!」」

俺とは声を合わせた。

そしてお互い顔を見合わせて、プッと吹き出す。


「ねぇねぇ永倉さん」

副長が去った後、一通り笑い終えては俺に向き直る。

「今日、何の日か知ってます?」

「…さぁ」

異人の誕生日と言う事ぐらいしか。

「キリストの誕生日なんですって」

「キリストって、あの?」

「そう、宗教の教祖…所謂救世主です」

そうなんだ。

て言うか、何でそんな事知ってるの、この子は。


「あたしの前にも、今日、救世主が現れました」





俺は意味が分からず、の顔を凝視する。


「永倉さん、本当にありがとうございます」

「え、何。救世主って俺!?」

「はい、そうですが?」

「止めてヨ…俺は真逆の存在だからサ」


誰も救いやしない。

誰も救えやしない。


そんな聖なる夜に血にまみれてるんだからサ。


「そうなんですか?」

きょとんと訊き返す。


(え、俺が誰か分かってるよネ?)


急に心配になってくる。


「俺は、君を拾う前にも人を斬ったヨ」


「でも、あたしを助けてくれました」

「それは気紛れで」

「それでもあたしは救われました」

は引き下がらない。

そんなに俺を良い人にしたいワケ?

「とにかく、俺は救世主なんかじゃないヨ」

「そうですか〜?本人に言われてしまっては、仕方ありませんね」

「そんな偉いもんじゃ無いからサ」


「…あたしにはあなたが全てだと感じますよ。


 以前の記憶は曖昧ですが、新しく確実な記憶はあなたから始まったんですから」


にっこりと、は笑う。


俺は茫然とするしかない。



目が離せない。


見惚れてしまう。





本当は、気紛れなんかじゃないんだヨ。



白い雪の上に急に現れて、俺の心を真っ白にしてくれる君。


こんな俺を、全てと言ってくれる女性。


血に染まったこの手が、真白な君に清められるなんて都合良い事思ってるワケじゃないけど。


本当は初めて見たときから、気付いてたんだ。


「ねぇ、チャン」

、で良いですよ」

「じゃぁ。君には『ここに居たい?』って訊いたけど、あれ取消しネ」

「どう言う…?」

「…ここにずっと居てくれる?」

やはりはきょとんとするばかりで、だけど白い頬には赤みが差して。


とても可愛い。


「俺が、君に、ここに居て欲しいんだ。何故だか分からないけど、君を離したくない。

 この気持ちがなんなのか、良く分からないけど…きっといつか分かるから。

 分かったら、ちゃんと伝えるから。


 だから、それまで俺の傍に居て?」



「勿論ですよ!」


そうは力いっぱい答えてくれた。


そんな君だから。


気紛れなんかんじゃないんだヨ。






だって俺には、君が、初めから天使に見えてたから。








聖なる夜に、舞い降りた、白い天使に。












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あっはっはっはっはっHA!!

笑え笑えw

名前変換少ねぇ!!そして意味話からへんw

甘くないし?面白くないし?

何より、クリスマスっぽくないし?逝。


えーっと、欲しい人――――…?


あ、居ないですね。ポイц・⌒ ヾ(*´ー`)

こんなんですが、
フリーです、一応w

煮るなり焼くなりしてください↓。

もしもそんな稀有な報告してくださる方がおいででしたら、

ウキウキでご挨拶に伺いますので↓。




12月の良く晴れた日に。     蒼天。ダメ管理人、泉。