【PEACE MAKER】      〜新撰組の日常〜   其之壱





全ては、鉄のこの一言から始まった。

「なぁ…」

防具を磨いていた鉄はおもむろに口を開いた。

「なぁに〜?」

一方、その話し相手であるはせんべいを頬張っていた。






「…と沖田さんってどっちが強いんだ?」






ピタっ。



の動きが止まる。


「…な…な…」


「え、何?」


(俺変な事言ったっけ!?)

鉄の動揺ももっともである。







「…な、何不吉な事言ってんのよ、鉄!!」






不吉って!!??


防具を磨く手を止めて、鉄は茫然とを見た。







「そりゃぁ私ですよ♪」








「総司!!」   「沖田さん!!」







「あ、現れたな!!」

は大きな声で総司を指差す。



ガッ。



指を差された本人はと言うと、その指を掴み。







「あはは、ってばヤだなぁ。人を疫病神みたいに…

 たしかに私は神の如き美しさと強さを持ってますけど」







黒い笑顔とともに言い放った。







何だこの人!!!!!!






の指が折れそうなので離してやって下さい…←鉄泣きながら。


「だって…!!」

「だってじゃないでしょ〜?そうだ。これから勝負してみます?」

「絶対ヤだぁ!!!!!!!」


は泣きながら拒む。




そんなに嫌なんですか、副長助勤。




それに比べて、既にノリノリの沖田隊長。


「鉄クンも見たいですよね〜?」


黒い、ゴホン、爽やかな笑みで総司は首を傾げる。



「是非!!!」



一応言っておこう。


鉄は脅されて言ったのではない、飽くまで本心から言ったのだ。



「鉄!!!」

そんな殺生な!とは詰め寄る。


「いつからあんたは悪魔の手先になったの!?」





初めからこの新撰組に悪魔(総司)の手先じゃない人など居ない。





「さ♪潔く諦めて、道場行きましょう♪」

!頑張れよ!」

「…他人事だと思って…」

の恨みの目は確実に鉄を狙っていた。



「アレ?じゃない、珍しいね、稽古番でもないのに…」

「…新八…何で今日非番なんですか?」

「…え…そんなの知らないヨ…どうしちゃったワケ?」

「これからあの悪魔(総司)と試合するの…出来れば助けてほしいんだけど」






「無理」





「そんなぁ!!」

「あの人とやると事後処理が面倒なノ」

「土方副長止めてくれないかな…」

「無理。副長、朝から局長と会津藩邸」




万事休す。




「さぁて、、始めましょうか」

「…しょーがない…胎括るかぁ!!」

「いい心構えですね♪」

「…全力で行くわよ?」

「こちらもそのつもりです」


にこり、とは一応笑っているが、かなり黒い笑みですよ、沖田さん。


「木刀は嫌よ?」

「当たり前じゃないですか、防具もつけないんですから」

「…ちょっとは手加減してよ」

の力量次第ですね。前やったのはいつでしたっけ…」

「…1年ぐらい前じゃない?」

「楽しかったですねぇ」

「あたしは痛かったっての!!あんたの三段突きは本当…もうコリゴリだわ」

の体術には苦戦しましたよ、今回は無しですからね?」

「拒否する」



竹刀を構え、向かい合う2人。



「「お願いします」」



声をそろえて、礼。



「初め!!」


審判は新八。


空気が一瞬で引き締まる。


どちらも動かない。



見ているだけなのに、鉄は息苦しさを覚えた。



(沖田さんが強いのは身をもって知ってる。だけどその沖田さんが、相手に隙を見つけられない)



ジリっ。

の左足が僅かに動く。

途端に、2人とも駆け出した。


ガッ。


ぶつかり合う竹刀。


僅かだが、確実に、は力負けしている。

それが分かってか、は竹刀の芯をズラして総司の竹刀をいなす。

そこへ、の一瞬の隙。

総司の竹刀が“突き”を狙って空を切った。


タンっ。


は床を蹴る軽い音とともに後ろへ宙返る。

それを更に追っていく総司の竹刀。


ギリギリの攻防。


「さすがに身軽ですね、…!」

「総司こそ…腕なまったんじゃないの!?」

息が掛かる程の距離で交わされる会話。

バッと離れる2人。

「言いましたね?」

「…言ってやったわ」

総司の目が変わる。

「では、本気でいきますよ」

「出た、総司の十八番」

忌々しくは呟く。

しかし、退いてもいられない。

は一歩前へ出た。


いくらといえど、何度も総司の“突き”は見てきた。


かわすことはできる。


ダッと地を蹴る


「バッ、!?」


新八の驚く声が道場に響いた。






バシィン!!






誰もが、目を疑った。


「…ッ一本!」


新八の思い出したかのような声で、道場の空気は一気に現実に引き戻された。


「小手アリ、総司の一本勝ちだヨ」


「…痛ぁーーーーい!!!!総司ってば騙したわね!?」

「痛いのはこっちですよ!!あー…血が出ちゃったじゃないですか」

“突き”を予想していたは、横に半身ズレた。

総司は“突き”をするフリをして、半身ズラしたの手元へ竹刀を振り下ろす。

それを咄嗟に気付いたは総司の面目掛けて竹刀を振った。

結局、総司の竹刀は見事の手首に命中。

そのお陰か、半身ズラした所為か、面狙いだったの竹刀は総司の耳の下辺りをかすった。


「君たち無茶苦茶過ぎ」


呆れたような新八の声。


「大丈夫?総司」

「えぇ、かすり傷ですよ。こそ大丈夫ですか?」

「…骨には異常無いと思うわ」

自信無さげには言い、手首を振って見せた。

「…冷やした方が良いと思うナ」

「あ、やっぱり?冷やしてくる」

は言いながら道場を出ようとした。

その時。

「沖田さん、これ…ッ!!!!」

道場に走り入って来た鉄が転がっていた竹刀を踏んづけてフッ飛ばした。


それは間違いなく、の後頭部へと向かい…



スコーン!!!







命中した。







「お、おい、!!!!大丈夫か!?」

「見事に当たりましたねぇ」

「…、生きてる?」

口々にそう言うも。


には反応が無い。


!!」

新八が強く呼ぶと、「ん〜」と唸っては目を覚ました。





ぜってぇ怒鳴られる…。





覚悟した鉄だったが、その期待は裏切られる事となる。


、ダイジョウブ?」

「…はい」





……………はい?





「永倉さん、どうしたんです?そんなハトが豆鉄砲くらったような顔しちゃって…


 鉄之助くんも…あれ?お、沖田さん!!血が出てますよ!早く手当てしなきゃ…!!!」







WHAT HAPPENED!!??





「あ、あの…?」

「何でしょう?永倉さん」



人が変わったように喋る



いや、ように、じゃなく。


人が変わったのか?(着ぐるみじゃないんだから)






「「「が…おかしくなった!!!!」」」






鉄、新八、総司が見事にハモった瞬間であった。








次。


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はい、早速外伝デスwありきたりくさいですがw苦笑。

えーっと、ここまでは共通で、これから選択にするつもりです。

御相手は新八・総司・平助・烝のお三方の予定。

ガラクタ。人気投票(?)で人気所だけに半端な物は書けない…!!

そんなプレッシャー感じておりますw笑。

「たといつ」を読んで下さった皆様、本当にありがとうございました↓。

拙い小説ではありますが、楽しんでいただけたら幸いデスw


続きは次回の講釈で。