【PEACE MAKER】 〜甘いモノ〜
「ひ・じ・か・たぁ――――――――!!!!」
あたしは大声で叫んだ。
「来ましたよ〜、土方さぁん」
「…」
湯呑片手に笑顔の総司くんと、無言で頭を抱える土方さん。
「たのも―――――!!」
「うるせぇ!!仕事の邪魔だ!!」
「連れないなぁ、土方さんってば〜、ねー?総司くん?」
「そうですねぇ〜、ぁ、さんお茶でもどうです?」
「良いわね、もらうわ」
「お前等、ここ(副長室)でくつろいでんじゃねぇ!!!」
あたしは、京の町で甘味処を営んでるの。
元々は総司くんがうちの常連で。
土方さんは総司くんに連れてこられてた人。
初めてうちに来た時、土方さん、何て言ったと思う?
『甘い物は嫌ぇだ』
良い度胸してると思わない?
甘味処の主人に向かって、甘い物は嫌い、だって?
それから毎日、あたしはその日イチ押し御菓子を持って新選組壬生屯所へ足を運んでるの。
土方さんは全然食べてくれないけどね。
大抵は総司くんが食べてくれる。
でも2人分持っていってるのよ?
総司くんが糖尿になったら、土方さんの所為なんだから!!!!
「何度来ても変わらねぇ、俺ァ甘い物は食わねぇ」
「そんな意地張らなくても良いじゃないですか、食べてよ〜」
「…お前、俺が誰だか分かってんのか?」
「へ?土方歳三でしょ?」
それ以下でもそれ以上でも無い。
「あっはっはっは」
答えると、総司くんは吹き出し、やはり土方さんは頭を抱えた。
「何…あたし変な事言った?」
「い、いえね。泣く子も黙る新選組の鬼の副長に、それだけ言えるのはさんだけですよ」
「だってあたしにとっては鬼でも何でも無いもん。勿論、総司くんもね」
そう言うと、今度は2人ともきょとんとあたしを見た。
へ?
何か変な事言ったかなぁ…。
ま、いっか。
「いい加減食べてくださいよ、土方さん。おいしいお茶もあるんだし〜」
「…食わねぇ」
「意地っ張りィ」
「…お前もたかだか1人に嫌いって言われたからって意地張らなくても良いだろうが」
…やだな、土方さんってば。
「…それじゃぁ失礼しますね」
あたしは手を振って、店に戻った。
あたしがただの意地で毎日御菓子を運んでると思う?
そんなの、ただの口実だよ。
会いたいからに、決まってるじゃない。
「今日も行くんですか?壬生浪のところ」
店員の子に、怪訝な顔でそう言われた。
「行くわよ?でもちょっと遅くなっちゃったなぁ…こんなに繁盛したの久しぶり」
そう、今日はあたしが外に出る余裕も無いくらいお客さんが入った。
今日の御菓子はこんぺいとう。
この国が誇る、小さな御菓子。
「じゃぁ行ってくるわね」
あたしは店を出ると、足を速めた。
もうすぐ日が暮れる。
しばらく歩いて、屯所が見えた。
塀の隙間から、土方さんの部屋が覗ける。
「今日さん来ませんねぇ」
総司くんの声が聞こえてきた。
思わず聞き耳たてちゃう。
「何かあったのかなァ〜…聞いてます?土方さん」
「別に来なくて良いだろうが…」
うわっ…ムカつくぅ…。
「そうですか?可愛いお嬢さんが毎日会いにきてくださるなんて、羨ましいなぁ」
「うぜぇだけだ」
…そっか、そうだよね…。
分かっては、いたんだけどさ。
やっぱ言葉にされると、キツイなぁ…。
あたしはこんぺいとうの入った包みを抱きしめた。
ポロポロとこんぺいとうがこぼれる。
もう帰ろう。
あたしは今来た道を、戻った。
「はぁ〜」
「いつまで腐ってんですか、さん!!」
あれから3日、屯所には行ってない。
土方さんを3日も見てない。
…やばい、中毒症状だ。
「……会いに行けば良いのに」
「うっさいな!あたしにだって退くときがあるのよ!!」
『うぜぇだけだ』
そんな事言われて、すぐに立ち直って顔見れるほど、あたしは図太くない。
「きっともうだめだ…」
あたしは呟いた。
「何が駄目なんだよ?」
「何がって…あたしの恋路よ」
聞かなくても分かるでしょうが。
「何だお前、フラれでもしたか」
「みなまで言わないでよ…」
って!!!!!!!
「ひ、ひ、土方さん!?」
「…うるせぇ」
「何でここに!?」
「…ここに来る理由は一つしか無ぇだろうが」
「甘い物嫌いなんじゃ!?」
「馬鹿か?買い物じゃねぇよ」
「……は?」
HA?
「じゃぁ何しに来たんですか?」
「…」
土方さんはまた眉間にシワを寄せた。
「…はぁ…お前なぁ…3日も来なかったら心配するだろうが!!!!」
「…は?」
「だから…」
「さんに会いに来たんでしょ?」
「総司!!??」 「総司くん!?」
「あ、花さん、こんぺいとうもらえます?」
花、とはさっきまであたしの隣にいた店員。
それより。
あたしに、会いに来た?
あの土方さんが?
「…本当ですか?」
俯いて、やはり頭を抱える土方さん。
「土方さん」
「外、出ねぇか」
「…あ、はい…」
促がされて、あたしは外に出た。
それを見送る総司くんと花の視線が痛い。
「はぁ…」
今日何回目かの土方さんの溜め息。
「…言葉にしてくれなきゃ分からないですよ、土方さん」
「…分かってる!俺も意地ばかり張ってちゃ大人げねぇからな…
お前、もう屯所に来るな」
またも、あたしの頭を言葉の鈍器で殴った土方さん。
「俺が会いに行く」
「え?」
「何回も言わせるな。これからは俺が会いに行く、に。ここへ」
言葉を選びながら、土方さんは言った。
「それってつまり」
「お前に会わなきゃ、どうも調子が出ねぇ…、お前がいなきゃ駄目みてぇだ」
本当に?
土方さん。
それはあたしの方です。
あたしも、あなたが居ないとダメなんです。
「言っとくが、俺は甘くねぇからな!…覚悟しておけよ?」
「上等!!会いに来てくれなきゃ許さないから」
「…それに、総司の野郎も鬱陶しいしな」
呟くように土方さんは言った。
「何ですか、土方さん。私のせいですか?」
「そ、総司!!」
「良かったですね、さん」
にこり、と総司くんが笑む。
その笑みの意味が分からず、あたしは首を傾げる。
「…大変だったんですよ、塀の周りにアリが大量発生しちゃって…土方さんは苛々しているし」
総司くん…?黒くなってるよ…。涙。
それにまさか。
「こんぺいとう!?」
「上手く行きましたよ、さすが私ですね♪」
あたしが聞き耳立ててたって知ってたの!?
もしかして。
全て、総司くんの企みだった!?
「ちょ、総司くん!?」
「さぁて、隊務に戻りましょうかね♪」
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
はい、意味腐なドリ完成。逝。
初の土方さん夢。
土方さんが愛の台詞吐くのって、あたしにはどうしても妄想できなくて…
困りましたw笑。
結局は沖田さんの黒い力(何ソレ)でヒロインと土方さんは上手く行ったわけですが。
アンケートに投票してくださった、土方さんファン様…どうでしょうか?苦笑。
まだまだアンケートは実施していくので、みなさまよろしくお願いします。
次は『例えばこんな逸話』の外伝で、沖田さんか永倉さんか藤堂さん相手のドリを計画中。