【PEACE MAKER】      永倉新八ツッコミ記シリーズ  第二弾。







「桃太郎?」



突然話題を振られた俺は怪訝に眉を寄せた。

話を振ってきたのはと言う名の、少女。

「そりゃ知ってるケド…」

当然だ、『桃太郎』と言えば誰でも知っている昔話だ。

「平助がね、桃太郎の子分は牛糞だって言うの」



「は?」




今、彼女は何て言ったのか。


俺には理解できなかったよ、平助…。



俺はこの緊急事態に、立ち上がった。







「皆の衆、今日集まってもらったのは他でもない」


ここは俺の部屋。


「何だよ新八っつぁん、俺たちを呼びつけてー」

座すのは勿論、平助。

「良いじゃねーか、どーせ暇だったんだろォがよ、平助」

佐之。

「そうですよ、私は忙しいんですが」

そして、総司。



「みんな暇なのねぇ」



いや、呑気に言うけど。



「「「「…それはもでしょーが」」」」



計、5人でこの問題について協議します。




「で、何なんだよ、新八」

そう広くは無いこの部屋で一番場所を取っている佐之が口を開いた。


「お前等、浦島太郎は知っているか?」


至極真面目に俺は口火を切った。


「んなの当たり前じゃん、何言ってんの、新八っつぁん」

「あー、アレだろ!?海行っちまう奴だろ?」


平助、佐之の言葉に俺は頷く。

きょとんとするのは

(もしかして知らないわけじゃないよネ…?)





「なぁに?うらめしたろうって」










そこから!?









題名から始めなきゃならないノ?


そして……きょとんと、そんな可愛い顔して俺を見上げないでください。


、浦島太郎だから」

「あーハイハイ、で、その浦島太郎って何?」




この子はどんな育ちをしてきたんだろう…


この童話なら誰だって親から聴いているだろうに!!


それとも俺の常識と思っていた事は…ここでは通用しないのか…!?


「新八ー。1人で自分の世界逝っちゃわないでよ」

ちゃん、それはひでぇってぇ〜!!!」


言いながら爆笑する佐之に筆箱を投げつけ、俺はゴホンと咳を切った。


「それで、どんな話?」


俺の声に、平助が挙手する。


「はいは〜い!!!」


「はい、平助クン」


びしっと俺は平助を指名し、腕組みをする。








「主人公の名前が分かりません!!」









「うん、それは俺も同感」

俺はこくんと頷く。



「浦島太郎の名前は浦島太郎だろ?」

「じゃぁ浦島が苗字で太郎が名前ですかねぇ?」



総司の意見には賛同するしかない気がするのは俺だけですか…?



「うん、じゃぁ主人公の名前は永倉新八で」





「何で!!??」





そんな結論、納得できません!!


俺がそんな有名な童話の主人公で良いの…っていうか、それは論点じゃない!!


「じゃぁって何サ、平助…」

「良いじゃん、早く話を始めようぜ」

「良いじゃん…?」


じとり、と俺は目を据わらせる。

平助にはこれが一番効くらしい。


「う…」

「良いじゃないですか、永倉さん…早く先へ進んでくださいよ」

呆れるような総司の声に、俺たちは冷や汗。

「で、その永倉新八がどうかしたの?」


…。


俺は悲しくなってきたよ…?


「ある所にぃー永倉新八と言う名の少年がいましたー」


平助が喋りだす。


「で、その永倉少年は…どーしたんだっけ?」


平助、まだ物語始まってないよ!?


「何か助けるんじゃなかったかー…くらげとか」




く。




「くらげは無いデショ!!」




「やぁだなぁ、原田さんってば。お亀さんですよー」


けらけらと笑って、総司は言った。


「お亀さんて」


「何ですか、永倉さん…文句でも…?」


「イエ、アリマセンヨ」


棒読みだが、総司はそれで納得してくれたらしい。



「で―…そのお亀さんがどうかしたの?」

「苛められていたお亀を助けて、竜宮城へ招待されるんだったよな?」


その通り、と俺は頷く。


「お亀さんの名前って何?」

「別にソレはどーでも良いデショ!」

「新八っつぁん、それはいけないよ!?」

「これは重要な問題だぜ!?」


平助…佐之…俺、お前等のツッコミに疲れたヨ…。


「トリオ解散の危機!?」

「総司、心読まないで」


項垂れつつ、俺は溜息をつく。


「ねーねー新八、問題ズレてる」

「あぁ、そうネ。で、そのお亀さん「名前は?」…平助(仮)に乗せられて新八少年は竜宮城へ」


「何で俺!?」


ガン!と衝撃を受けたような表情をする平助。


「で…竜宮城に着いて、新八少年は乙姫様に接待されるんでしたよね?」

「無視!?そして俺(亀)の出番もう終わり!?」

「ハイ、静かにー」

俺はハリセンで平助の頭を叩き、次を促す。

「乙姫さまのお名前は?」

「いや、、乙姫様の名前は乙姫だから」

「姫さまは階級でしょう?」

「………じゃぁ名前は乙ですか?」



「ギャハハハハ!!変な名前――――!!!」



佐之のバカ笑いが部屋に響いた。

「いや、仮にも姫さまだからそんな笑わないであげて」

「仮にも、の方が酷いですよぅ」

「じゃぁ姫さまの名前はね。姫さま」


俺の言葉に、がちょっと赤面する。


可愛い…。


「んで、新八少年は姫と楽しい時を過ごすんだ」

「それで―…でも新八少年は帰るんだよね?」

「ウン、そう。母親が心配だってネ」

「新八少年、優しー」


が嬉しそうに微笑む。


それにつられて俺も微笑んでしまった。


「で、姫は箱を渡すんだよね」

「ウン、絶対開けちゃダメって言ってネ」

「でも新八少年は開けちゃうんだよな」

平助、俺、佐之、と物語を続ける。

「…開けたらどうなるの?」

きょとんと、が首を傾げる。

「…おじいさんに、なってしまうんですよ」

「え…?」

総司の言葉に固まる


そう、竜宮城の時間感覚と地上の時間感覚は違ってて、

新八少年が竜宮城で過ごした数日は、地上の数十年だった、ってワケ。

で、その箱の中には…地上と竜宮城での時間差の老いが入っていた、と。


「新八少年の故郷はすっかり変わってしまって、お母さんもいなかった。

 知り合いも、みんないない。

 新八少年に残されたのは、姫からもらった箱だけだったんです…」


「それで…すがる思いで開けたら、白い煙が出てきて」


「おじいさんになっちゃった、ってワケ」


総司、俺、平助が続ける。




「そんなの…可哀想!!」




が叫ぶ。


「あたしが姫なら、新八を帰したりしないよ!?ずっと一緒にいる!」


きゅ、急に何を言い出すのかネ、この子は。


「でも、新八少年は帰りたがった」



「絶対に引き止めるもん。帰ってしまっても、箱なんて渡さないし、

 絶対平助(仮)を向かえに出すもん!!」



やだやだ、とは首を横に振る。



「新八を独りになんてさせないもん!!」



みんな黙ってしまう。



…たとえ話なのに、こんな嬉しい気持ちになるのは何でだろう?



「新八も姫だったら、あたしを独りになんかしないよね?」



上目遣いでが問うてくる。



「…しないけど」



俺は取り敢えず呆けたまま呟く。


「だよね」


にっこりと笑う


「ぷっ…」


場違いな吹き出し音。




「ダッハッハッハ!!もう我慢できねェ!新八が姫とか!!」



「超ウケるんだけど!!」



佐之と平助が腹抱えて爆笑しだす。


「私、阿呆らしいので失礼しますね」


総司は部屋を出る。







「お前等…いい加減にしろっ!!」








「うらめし太郎面白いねぇ」


のほほんとは笑う。




浦島太郎だよ、…。



もう俺には、それを訂正する気にもならなかった…。




END.





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ハイ、長い夢が完成。

シリーズ化しようかしらと考え中。

『永倉新八ツッコミ記』シリーズ。第二弾。

天草さま、どうもありがとうございました!(土下座)

こんなギャグドリームですが、どうか受け取って…(心配)

感謝感激ですw