【PEACE MAKER】








伝えたいけど伝わらない想い、どうしたら良いですか?








「ぁ」

「あ」


あたしは雪の降る庭先で、何故か佇む沖田さんを発見。

寒い日は、みんな外に出ようとはしない。

なのに。


「寒く、ないですか」

そこ。

「寒いに決まってるじゃないですか」


…小憎らしい。


あたしは軒先にいるから雪は当たらない。



沖田さんの頭には、大分雪が積もっていた。



「風邪、引きますよ」

「そうですね」



分かってんなら戻れよ。



あたしをそんなに心配させたいか?




さんは」

「何です」

「もし明日死ぬと分かったら、どうしますか?」






は?






「何言って…るんですか、沖田さん」

「残された時間が少ないと分かったら、あなたはどうします?」

「…どう、って」



言われても。




「それって、絶対ですか」

「ぜったいです」










あなたに、会いに行きますよ。










そう言いたいけれど、言葉は喉で止まってしまった。



素直になるのが怖い、拒絶されるのが怖い。



「普段通りに過ごすかも知れませんね」



なんて、可愛くない事を言ってしまう。



沖田さんは顔を上げて、空を見上げた。

それで沖田さんの頭に乗っていた雪がドサっと落ちた。



「何でそんな事訊くんですか?」



さん…雪はお好きですか?」






おい、無視かよ。






「雪、ですか?」


また微妙な質問に、あたしは首を捻った。

あたしが口を開く前に、沖田さんが言った。


「私は、嫌いです…」


沖田さんが手を前に出すとその手に雪が降り積もる。


「どうしてですか?」





「雪は、真っ白で、穢れが無い…私の手は血に染まっていて汚い。



 …雪が、全てを真っ白に変えてくれればいいのに。



 これは、私を厭う。余計に、私を汚くみせる」





「沖田さん、血は、洗い流せますよ」


これは、何度も、何度も、みんなに、言っていた事。


さんは、強いですね」

「沖田さん!」

あたしは思わず声を荒げた。



「…全てを、真っ白に変えてくれれば良いのに…」








微笑み。








「お、きたさん…?」








綺麗で、繊細で、頼り無い、この世の物とは思えないくらいの、微笑。








今にも雪に溶けてしまいそうな。








「ッ」








考えるより先に体が動いてた。










消えないで。











あなたの微笑みは綺麗だけど、もっと声を出して笑っている方が素敵だから。



無理にそうしなくても良い。



だけど、独りでそんな顔はしないでほしい。






あたしは、後ろから沖田さんに抱き付いてた。






「……さん?」



「何があなたをそうさせるんですか…?お願いです、そんな事、言わないで…」



「離してください」

「嫌です!」



「離せ!!!!!」







ッッッ!!!







離すしか、なかった。






「あなたは温か過ぎます」


「沖田さ「あなたは、私には要らない」




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思考が全て、停止した。







何刻ここにいただろう。







気付いたら、あたしが、沖田さんを見つけた時のようになっていた。






頭に雪は積もり、沖田さんは既にいなくて。






あたしだけが、雪の降りしきる庭で佇んでた。








バカみたい。







ふわっ。






あたしは、そのまま後ろに倒れた。





ばふっ。










っは――――――……………。










冷たい。


冷たいな。


あーぁ。


もう。


どうにでもなれだ。




無力なのは、罪じゃない。


でも。


力がある事は、罪になる事もある。



それでも、力が欲しいよ。



あなたを、守るだけの。




「真っ白に、なってしまえばいい」



あたしは、そのまま目を閉じた。















真っ白に。












なっちゃえ、全て。


















冷たくなっちゃえ。



















そしたら、沖田さんはあたしを好きになってくれるかな。
























バカだ。

























誰も、いない。

















真っ白な、世界。

















このまま、何処までも真っ白に。

























































              『さん』

















「…さんっ!!」
















「…はい」











うっすら目を開けると、沖田さんの綺麗な顔が少々歪んで見えた。











「な…にしてるんですか」

















「寝ようかと」















「バカですか?永眠しちゃいますよ」







「それも…」








まぁ、別に良いんじゃない。






あなたのいない世界で暮らしても、しょうがないもの。







「大丈夫ですか?」


「…あなたこそ」


「はい?」


沖田さんの手が、あたしに触れたと思ったけど。







感覚は無、だ。







冷たさも、温もりも、全てが遮断されてる。












「どういう、つもりですか」


「冷たくなってみようと思って」


「何でそんな事するんですか」


「…いや、何と無く」










違う。










「温かいあたしは要らないと言われたので」



「…は?」



「沖田さん、あた「バカな事、しないでください!!!!!」









二度目、怒鳴られた。



ぼんやりとそう思った。










思考能力も低下してるかもしれない、と思った。











「あれは、違うんです…私の、八つ当たりだったんです」


言って沖田さんはあたしを抱き上げた。








あらぁ…意外に力持ち。








「あなたが要らないなんて、嘘です…雪に埋もれたあなたを見た時、心臓が停まるかと思いました。


 あなたは温かいから、どうしても頼ってしまいそうになってしまうんです。


 …でも、怖くて言えなかった。


 言えなかった」










沖田さんが、綺麗じゃない風に泣き、笑う。









「失うのが怖くて、悲しませるのが怖くて、あなたに触れるのが怖くて。


 何も、できなかった。無力でした」









あぁ。








この人も、あたしと一緒だったんだ。










「ごめんなさい…ごめんなさい」










どうして謝るんですか。










「沖田さん。あなたはさっき、あたしに問いましたよね。


 明日死ぬって分かったらどうするかって。


 …あたしは、あなたに、会いに行きますよ」











「え…?」












「それは、あたしの最期でも、あなたの最期でも、同じです。


 最期はあなたを見ていたい」













怖くて言えなかったの。











でもそれは、好きで好きで、仕方無かったからなの。















やっと、腕が動く気がした。

















「沖田さん、温かいですよ」

















その涙も、この腕も、全て。

















「あなたの方が、温かいですよ…」




















沖田さんは切なそうに笑んで、あたしを抱きしめた。


















伝わらない想いは、いっそ吐き出してしまった方が楽。


















それが結論。




























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オツカレー。

長かったぁ…本当に。

て言うか、何ですか?このまとまりの無いお話は。←おを付ける価値も無い。

実際、本当の気持ちなんて怖くて言え無いですよね。