【PEACE MAKER】
「お隣お邪魔します」
「どーぞどーぞ、空いてますから」
君が言ったんだヨ、俺の隣が心地良いんだって。
「ねぇ」
「ンー?」
呼びかける声に、俺は読んでいた本から顔を上げた。
「永倉さんってさー、結構モテるでしょ」
「…は?何言ってんの、君は」
苦笑とともに俺は言ってのけるけど。
正直“苦笑”なんかで済まされないぐらい動揺してる。
「だって、いつも誰か傍にいるしさー」
「…そりゃ独りも悪くないけどしょうがないでショ」
「それに優しいしさー」
「それは相手によるネ」
「周りの子だって言ってるよ、良い人だって」
「それは光栄」
こんな問答しながら徐々に心を静めて行く。
だって自分が好かれてるなんてコレっぽっちも思ったコト無いし。
むしろ恐がられている節があるぐらい。
「そう思ってるのはサンだけかもよ?むしろ君の方がモテてるぐらいじゃない?」
笑いつつ、話題をそらそうと頑張る。
…表面からじゃ想像できないだろうけど。
俺だって、いつも余裕かましてる訳じゃないし。
いつもからかってる訳じゃないし。
俺がこんなに饒舌になるのは君だからで。
君だから俺を優しいなんて思えるんだと思う。
「でも、やっぱり永倉さんはモテる!」
「…だからネ?」
困ったように苦笑し、俺は本を畳に置く。
「わたし永倉さんの隣に居て良いのかなぁ〜?狙っている子に恨まれちゃいそう」
君はあっけらかんと続ける。
手には彼女が淹れたお茶の湯のみ。
それは俺の手元にもちゃんとあって。
サンは新撰組の賄い方。
「…あのネ、だからサ」
「永倉さんは強いし、優しいし、面白いし…」
「…聴こうヨ、人の話」
溜息漏らしつつ、俺は彼女の肩をポンと叩く。
俺は、あまり人に触らない。
特に“人を殺す”位置にいない人には。
別に人に言える理由がある訳じゃない。
何だか、自分が触れた所からその人に血の穢れが広がるような感じがして。
触れるのが怖いとか、柄にもなく思ってしまうわけで。
だから言葉で取り繕って、笑顔で誤魔化してる。
それに俺自身はずっと前から気付いてて、知らない振りしてきた。
誰にも言った事は無いし、おそらく気づいている人も君ぐらいで。
だけど俺は君には触れるよ?
それはそんな厭な気持ちより、君に触れたいって気持ちの方が大きいから。
彼女に触れるのも、そう数多くは無いんだけど。
だからか、肩に触れた瞬間、びくっと肩を震わせた。
「…な、何?」
おどおどと俺を見上げる。
「…あーっと」
そんな驚かなくても、と正直思う。
「…今、隣にいるのは君なんだから他の子の話は止めよーヨ」
「…今は、でしょう?あなたの隣にはいつも別の子がいるもの」
はぁ、と俺は息を付く。
「あのネ?隣に居て良いって、許可したのは君だけだよ?」
じーっと俺はを見つめる。
彼女は俯いて、俺に一目もくれない。
「でも“今は”でしょう」
「…俺は隣に一つだけしか席、設けてないから。ソコは君にしか座ってほしくない」
「そんなの“ずっと”じゃないんでしょう?」
「じゃ、こう言えば良いのかねぇ?君を俺の隣の席に縛り付けて、しまいたいって。
…ねェ、サン。君にこの意味が分かる?」
本当はそんなコト思ったコトも、無い。
俺は何より強制は大嫌いだ。
「嘘だ、永倉さんはそんな事思わないよ」
「あ、バレた?」
やけに俺がアッサリしているからか、君はやっと顔を上げたね。
「でも俺は君が隣に居てくれれば良いと思う。
それが本心。
だから…俺を試したりしなくて、良いんだよ」
俺は君に触れたくて。
血にまみれたこの手でさえ触れたくて。
抱き締めたくて、伝えたくて。
だけど上手く言えなくて。
こんなに近くにいる君に少しも伝わりやしない。
臆病で勇気の無い俺が、その心抑えてだけには触れたいと思う。
嘘や欺瞞で満ちたこの血まみれの世の中だけど。
それだけは信じて良いヨ。
「サン、俺は嘘なんか言わない。だから…信じて良いんだよ」
ねェ、君にこの気持ちは伝わっただろうか。
不器用で遠回しにしか言葉にできないけど。
君に、この想いが、伝わっただろうか。
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ネタを仕入れたのは某サイト様より(それってパクリじゃ)
意味不明で申し訳無い。