【PEACE MAKER】






言葉なんて要らないの。


ただこの純粋な気持ちが永久にと願うだけ。


愛しい人よ。






「ねーぇ、平助さんってば」


珍しくぼーっとするアナタに、アタシは声をかける。

それでも返ってこない返事に、アタシはむぅっとする。


「平助さんってば!」

「え!?ぁ、何?」


驚いたように視線をアタシに向ける彼。

ここは新撰組屯所の中の彼、平助さんの部屋。

アタシたちは一応“恋仲”って事になる。

少し離れた場所に座っている平助さん。


「…どうしたの?ぼーっとしちゃってらしくないよ」

「何でもないよ、こそどした?」


にっこりと微笑んで、彼はアタシの頭を撫でる。

それがくすぐったくて、でも腑に落ちなくてアタシは拗ねるように頬を膨らます。


「何拗ねてんのー」


困ったように笑うのはアナタの悪い癖。

隠し事してる時とかには特に、痛く感じる。


「拗ねてますよー、えーえー拗ねてますッ!」


思いっきり顔を背けてみる。

それでも彼は困ったように頬をかくばかり。

永倉さんや原田さんと居る時とはまったく違う、彼の顔。


「…ごめんって。そうだよな、俺が悪いんだもんな」

「…らしくない」


素直に謝られたことすら不満で。

らしくないって、そんな抽象的な事言ってアナタを困らせる。


「ねぇ、


やっと言う気になったか、とアタシは背けた顔を元に戻す。

やけに真剣な彼との目とぶつかって、思わず息を呑んだ。


「…何」

「俺がさ、新撰組抜けるって言ったらどうする?」




「は?」




「だから、俺がココ出てくって言ったらどうするって訊いたの」


別に聞き取れなかったわけじゃないわ。

ただ質問の意図が、よく、わからなかった。


平助さんが、新撰組を、辞める?



「な、何その質問」

意味分からないわよ、とあたしはしどろもどろに続ける。


「そっか…うん、そりゃそうだよね」


アタシの言葉にアッサリと彼は退く。


本気の証拠、そしてアタシの意見など、大した事の無い証拠だ。


「平助さんの好きにすれば良いんじゃない?

 …案外…もう決まってたり、するんじゃないですか?」


アタシは彼の傍まで膝付き這いずって行き、表情を伺おうと覗き込んだ。


「…うん、決まってる」

「やっぱりね。背中、押してもらいたかっただけでしょ」

「分かっちゃう?」


泣きそうな顔、だけど絶対に彼は泣かないだろう。

えぇい、何でアタシが泣きそうなんだ?


「何処へでも行ってしまえば良い」


アタシはそんな彼が好きで。


…?」


「そうしたらアタシが今度は追いかけて、アナタを捕まえるから」


きっとそれも無意味だろうけど。


立場を違えるという事がどういう事なのか、アタシには分かっていたし。


そんなに甘くない世の中だって事も知っていた。











「…は、はは!」


暫くの沈黙を破ったのは、彼の笑い声で。


「やっぱりだね。さすがだな…俺の自慢の彼女」


そう言うと平助さんはアタシを抱き締めた。


「な、何急に?」


おどおどとしつつも、それに応えるように抱き締め返す。




「俺、ここを出て行く」


「ウン」


「だけど、には逢いに来るから。どんなに周りが変わってもそれだけは変わらない」


だから。


そう平助さんは続けた。


「今はこうしていよう。次に会うときまで寂しくないように」







  永く  永く  できるだけ  可能なだけ  許されるだけ  永く。







飽きるくらい一緒にいよう。


きっと飽きることなんてないと思うけど。


だから一瞬でも長く、アナタとアタシと二人で。









『愛してる』



そう簡単に云えたら良いのに。


アタシにはできない。


彼を引き止めるような気がして、それだけは言えない。


彼の枷にはなりたくない、無理したって背伸びしたって、そうはならない。





云えない事がこんなに辛いだなんて、知らなかったよ。

















「なぁに?」

お互いの体温が行き交う。












「愛してる」














言葉なんて要らないの


ただこの純粋な気持ちが永久にと願うだけ。


愛しい人よ。








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リクの作品。(キリリクは(書いてます!!)

テーマは別れ。

最初と最後なんぞにあるのは天野月子さんのHONEY?です。

平助っぽいと思ったので、平助さんで書きましたが如何でしょうか、

黒苺さん?

すごく眠くてうとうとしながら書いた奴なのでヤバイですが。

いつもだからいいか★