【PEACE MAKER】






「ちょいとどこ行く大阪少年」


妙な奴言い回しをする女に引き止められた。







〜探し物は何ですか〜






「…何ですか」

(つか、あんた誰)


「1−Aの山崎くんだよね?よろしくススムン!!!


(うわ、いきなり変なあだ名つけられた)


げんなりする烝に奴はなおも続ける。


「ススムン、時に君は死にたいと思った事はあるかね?」


「………は?」


テンションとは真逆の問いに、烝は思わず怪訝な声を出した。


「だーかーらー、聴いてなかったのかね、ススムン」

「いや、聴いてたけど…ススムンってのやめ

「厭」


(即答!!??)

何やコイツは。

それが烝の奴に対する初めての感情。

時は夕刻、校舎には残っているものも少ない。



「死にたい、は無いけど…死んでもええかなって思った事なら」


(って、何俺普通に返してんねん!?)

困惑と、焦燥。

烝は足を止めたまま、奴を凝視する。

同じ高等部の制服、リボンが赤いって事は同じ一年。

案外綺麗な顔をしている、見た目飄々としていて表情に変化が見られない。


「お前は誰や?」

「あたし?あたしはただの通りすがりだよ」


(通りすがったんは俺の方なんやけど…)

眉を寄せる烝に、奴はもたれていた壁から離れ一歩近づく。


「名前を聞いとんのやけど」


「…よ」

「知らんな」

「でしょうね」


さらり、と奴、は返すとん〜っと伸びをした。

そのまま窓の傍まで行き、空を見上げている。


「あなたは有名だけどね、ススムン」

「だからそのスス「山崎烝、1−A委員長。1年にして生徒会幹部、剣道部所属で…」


つらつらとよどみなく、は烝の個人情報を続ける。


「で、俺に何の用や?」

「ちょっとは顔色変えなさいよ、これだけあんたの事知ってんのよ、あたし」

「別に何も差し支えへんから構わん」

「そーですか、そーですか」


調子が狂うのは、確か。

乱されるのも、確か。


(イライラすんな)


落ち着け。


「生きてるの、楽しい?」

「………それなりに」

「その間は何よ」


くすくす、とは笑う。

烝は彼女の後姿を凝視しつつ淡々と質問に答えるのみ。


「別に、楽しいとか思わん。けど楽し無い訳でもない」


それだけの事、烝は適切に答えたつもりだ。

すると彼女はくるりとこちらを向いた。

真っ直ぐな目で、烝を見据え何も言わない。


「何やねん」

「勝ち」

「は?」

「あなたが先に音を上げた」

「…知らんな、そんな事」


(意味が分からん)

溜息と、呆れ、疲れが口から漏れた。


「ねぇ、ススムン」

「何や」

「ススムンは意味とか考えた事、ある?」

「意味?」


何のや、と烝は怪訝な顔で続ける。


「自分が、何でここにいるかとか、どうしてこの女と話してんのとか」

「…あぁ」

「何で、生きてるんだろう、とか」


いつになく真剣な眼差しで射られ、烝も言葉を飲み込む。


「知らんな」

「そんなの答えになってないよ」

「知らんもんは知らん。意味なんて、あってないようなモンやろ」


今度は溜息が出た。

心が平常を取り戻しつつある。


「でも人は意味が無いと強くはなれないよ」

「…だからな、何かしら意味はあるにせよー…それは見つけよったら終わりやねん」

「意味分からn「それ見つけるために生きてるんとちゃうか?」


烝の言葉に、やっとは表情を変えた。


「理由見つけるために生きている、最近俺はそう思い始めたで」


(あの小犬と出会ってからな)

烝は思い出してフッと笑う。


「ま、そういう事やからお前さんも余計な事考えんことやな」

「…何よ、ソレ」

「別に」


そう烝は返す。


「…て、何初対面の相手に説教たれてんねん、俺…」


(らしくない)

と、独り思う。

だけど初対面だからこそ、言えたのかもしれないとも思う。


「真面目なのも問題あり、ね」

「………は?」


何度目かの烝の間の抜けた声。

くすくす、とやはりは笑って続ける。




「いえ?…ただ、あなたに夢中になりそうだな、って思って」




「な」


(んで急にそないな事になるん!?)

戸惑い、焦燥、それでも動揺する心は。


「あたしと意味、探してみる気はない?山崎烝」

「…面倒くさ」


そう言ってはみたものの、それも悪くない、と思える自分に気付く。


「たまになら付き合うてやってもえぇで、


過ごす時間が増えれば、この動揺の意味も知れる。

生きていく意味は見つからない方が良い。

一緒に探せるなら。


「お前とやったら、向き合うとか言う無意味な行為無しで…四方を探せそうやからな」


それがベスト。

向き合う必要は、無い。

一緒の方向向いて、果ては背中合わせでお互い逆の方を向いて。


「どちらが先に見つけるか、勝負ね」

「…阿呆、俺のが先に決まっとるやろ」

「今度もあたしの勝ちよ、きっと」


そう言った笑顔が夕日に映える。

(先に音を上げるのは、確かに俺のほうかも知れん)

向き合いたくなるのも時間の問題。

烝はそう自嘲気味に思い、小さく笑った。













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現代夢にしちまったぜ。

苦手だったらすまぬー!!

…てか、意味分からないよね、これ(痛)

相互記念に…広海さまへ。

なんか昔似たような夢書いたかも…(ぁ)