【PEACE MAKER】











ねェ、背中あずけて良いんでショ?


この臆病で生と死の両方を見てる危なっかしい背中を。














「新八?」


彼の部屋の前まで来た。


「まだ寝てる?」


今日来たのは二度目。


「開けるよ?ね、新八」











〜風邪っぴき意地っ張りオールナイト〜











「あれ」


一度目は部屋の主によって遮られた、二度目は。


「お留守?」


乱れた布団と、暗い部屋。


机の上に読みかけの書籍。


もぬけの殻。


「どこ、行っちゃったんだろ…」


一度朝来た時は、何だか様子が変だった。


調子でも悪いのかな、と後で思って来てみたのだが。


厠かな、と私は足を向ける。


歩を進めると、廊下に何か“落ちてる”。









見た事のある柄の布。









その下の、見慣れた髪。







「  し   ん   ぱ   ち   !  」







何で、こんな所で寝たら風邪引くよ!


「新ぱっ、え、何で!」


慌てて駆け寄って、倒れた彼の横にへたり込む。


恐る恐る頬に触れる。


冷たッ。


「ね、ちょ、新八!」


ゆさゆさと揺さぶる、固く目を閉じて動かない。


どうして、どうして、どうして。



自分の心臓が激しく波打つのが聞こえる。


感じたいのは、彼の…それなのに。






「どうかした?」

「あ、平助さん!」

「新ぱ、新八が!」

「…ワーォ、新八っつぁんやったね」


意味が分からない事を言って、平助さんは新八を部屋へ運んでくれた。







その平助さんから得た情報はこれだけ。


“新八っつぁん朝方吐いたみたいだから”

“知らない振りした事バレてるよ”



だからって。




「ここまで無理すること無いじゃない…ばか…」



布団に横たわる彼にそう吐き捨てた。



「知らない振りしたのを知らない振りするなんて、卑怯だよ」



新八。


新八。




新八。





「新八、私そんなあなたは嫌いよ」


言いつつ、頬に触れる。


「ソレ、ほんと…?」


触れた手を掴まれて、驚いて目を見開いた。


「し、んッ!新八!大丈夫!?」

「…本当?」


真っ直ぐに見上げてくる。

熱に浮かされてか潤んだ瞳が色っぽい。


って、何考えてんだ、私!!!


しっかり、私!!!


「…嫌い」

「そ…う、ご免ネ」

「そういうあなたが嫌い。平助さんには頼るくせに、私には一言も言わないあなたが憎らしい」

「…へ?」

「悪くないのに謝るあなたが嫌い、悪い事じゃないのに悪いと思って無理するあなたが、本当に―――…‥」


私は座った膝の上で拳を握り、それを見下ろす。




「…本当に、耐えられない」




知らない振りは疲れたの。

私はそこまで強くない。





「あなたは大人だからって、何でも独りでやろうとしないでよ」


口の端から零れ落ちる言葉を留める術を知らなくて。


「独りで溜め込むから、はけ口を失うのよ」


どんどんどんどん出てきて。


「私は、それに気付いてて知らない振りをして…一体どうしたら良いのよ」


泣きそうだ、いや、もう握った拳の上に水分が落ちてる。


それを認めた瞬間、上から影が降ってきた。


「へ?」


ふわり、と全身にかかる圧力。


これは。


「新八、何して…!」


あわあわと体を動かす。


「じっとして、。もう―…君を黙らせる方法が今はこれ以外に見付からなくて」


そう言いつつ新八は私を抱き締めている。


つらいのか、肩が静かに大きく上下してる。


さっきとは違い、火照った体。


肩、首筋にかかる息が熱い。


「新、「黙って」





  ど  う  に  か  な  っ  て  し  ま  い  そ  う  。






嫌いだなんて、言わないでヨ――……‥






まさかと疑いたくなるような言葉が熱い吐息と共に耳に侵入してきた。


するり、とそのまま新八の腕の力は消え、ドサ、と布団の上に横たわった。



この人は。



この人は。



何て愛しいんだろう。































「ハイ、あーん♪」


私の目の前には呆然とする彼。

一晩経った、今日。

新八は昨日の事を覚えていないらしかった。


「何、さん。気でも狂った?」

「失礼な!献身的な看病じゃない!」

「…いや、でも」

「あーん、新八っ」


何でそんな楽しそうなの…と、遠い目をする彼に私はお構い無しに続ける。


「目が覚めたら君がソコで寝てるし…粥は君自ら食べさせようとするし…」


一体何事、と頬をかく。


「………内緒よ、内緒」


昨日何があったかなんて、教えてあげない。


あんな新八はきっと、一生見れない。


最初で最後の弱音だと、思う。


くすくす、と思い出し笑いが漏れた。


「何笑ってんのサ」

「別に?思い出し笑い」

「何!気持ち悪いネ」

「ひどっ!違った、嬉し笑いだよ」

「…何、ソレ」


だから教えてあげないんだってば。


私は「はい」ともう一度さじを掲げた。

新八は渋々口を開く。






昨日とは違う朝。









− WAKE UP −













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どうしてあたしが書くとキモスヒロインにしかならないのだろう。

あたしがキモスだからか!?

ヤッパリそうなのか!?(ぁ)



こんぺいとう、祝一万打!
管理人恵様へ捧げます。おめでとう!
…要らなかったご免YO☆
対抗してみました。