【PEACE MAKER】 永倉新八ツッコミ記シリーズ 第三弾。
「殿様遊戯?」
俺は読んでいた書物から顔を上げた。
そこには可愛い顔で嬉しそうに微笑むの姿。
「うん、みんなで殿様遊戯して遊ぼうよ」
来た!
やっと来たか、俺の知らない遊びが!
これでツッコミ疲れなくて済む、そう俺が胸を撫で下ろした時。
「新八っつぁーん、来たぜー?」
佐之、平助が断りも無くズカズカと部屋に入ってきた。
「ちょ、え?」
「今日は楽しませてくれるんですよね?」
戸惑っているうちに総司まで現れる。
「あ、皆さん着てくださったんですねー♪」
あぁそう言うこと。
君の仕業ですか、。
俺は半ば呆れて彼女の楽しそうな横顔を見つめる。
自然と頬が緩んだ。
「何!!!ちゃん見てにやりとかしないでよ気持ち悪いな!!!!」
「いや、そう言うことお前にだけは言われたくねぇから」
平助のボケをさらりと交わすと、座りなおした。
「で?どうやるの、殿様遊戯」
俺の言葉に一瞬シーンとなる一行。
「え、何?みんな知ってるの?」
「信じらんねェ!新八っつぁん知らねぇの!?」
「殿様遊戯っつったらよォ、かくれんぼ鬼ごっこに続く子供の遊びだろ!!」
…そうなの?
俺がきょとっと首をかしげるとは笑いながら。
「大丈夫だよ、新ちゃん。簡単だから教えてあげるね」
そう言った。
「いつも新八っつぁんには偉そうにされてっからな〜」
「今日は俺たちが教えてやっからよ!!」
…いや、何かすっげムカつくんですけど☆
俺はみし、と額に青筋浮かべながらも笑顔でさらりと流す。
「まずねー…適当な良い感じの枝を人数分探してきます」
がなにやらすごく楽しそうに話し出す。
彼女が楽しそうに笑うならそれで良いカナ、なんて思う俺は末期だろうか。
「え、ていうか探しに行くの!?」
「うぅん?それはやっといた」
いいながらは枝を差し出す。
差し出された5本の枝には紙が巻いてあり数字が…書いてある。
「壱、弐、参…と殿?」
枝を手に取り俺は首をかしげる。
「はい、新ちゃん、それを箱に入れて〜!」
「…了解」
「新ちゃん、それ逆」
「あ、ご免」
そんなこんなで箱をガッサゴッサと振る。
それを不思議に見つつ、俺は何するんだろうと考えをめぐらす。
「はい、取って〜」
「ヨッシャ―――!!!」
「殿は頂いたぜぇ!!」
の掛け声と共に枝に飛びつく平助と佐之。
「な、何事!?」
「駄目ですよ、永倉サン。ちゃんと張り切って枝取りに行かなくちゃ…」
「いや、総司だってゆっくりしてるじゃない!?」
「…私にはその必要ないですから」
にっこりと総司は言って、俺に枝を取るように促した。
「…はい、殿様だァ〜れだっ!!」
一斉に枝の先の紙を見る。
俺もそれに習う。
「は〜い!私です!!」
総司がそう言って手を挙げた。
と言うか、いい加減。
「この遊びの概要を教えてくれないかねぇ、みなさん?」
「…忘れてたよ、新八っつぁん!」
テメェ、平助…!
「殿様遊戯はね、殿様が一番なの」
のその言葉にウンウンと頷くほか3名。
しばらくの沈黙。
「え、お終い!?」
「そうだよ?」
さらりと言うに俺は問いただす。
「いや、何か凄く忘れてる気がするんだけど!?」
「…あ、そうそう、で殿様は命令を出すんだけど、その命令は絶対なの」
「枝の先に番号が付いているでしょう?」
総司に促され、俺は自分の手に握られている数字を確認する。
“弐”だ。
「あ、言っちゃ駄目だぜ、新八っつぁん、面白くなくなっちまう!」
「…なんで」
「殿様がこれから番号を指定して命令を出すからですよ、例えば壱番と弐番が腹踊り、とか」
「なるほど」
「では、永倉さんも了解したところで行きますよォ?」
緊張した3人をよそに、総司は楽しそうに考える。
俺だけ何か呑気に構えてた。
「参番の方、これを土方さんの部屋まで持って行ってください」
にこり、と笑みつきで差し出したのは白い冊子。
「総司、これは…」
「あ、藤堂さん参番だったんですか?はい、どうぞっ」
俺たちは一斉にその冊子を覗き込む。
「「「…豊玉発句集…」」」
そして同時に呟く。
「こ、これは…!」
「土方さんのッ…!」
「副長を唯一乱心させられる…!!」
恐れが部屋を支配した。
「頑張ってね、平助さん!」
何も知らないが無垢な笑顔を平助に向ける。
何とも残酷だ。
「行ってきてください、藤堂さん」
かくも無常に、総司は有無を言わさぬ笑顔で平助を見送った。
数分後。
「うぎゃぁああぁああぁああ!」
平助らしき叫び声が遠くの方で聞こえた。
「…藤堂さんは戻ってこられないと思いますし、次始めましょう」
笑っているのは総司のみ。
恐怖が俺の部屋を支配した。
これってこんな恐ろしい遊びだったの!?
てか、みんなはこんな恐ろしい遊びをかくれんぼや鬼ごっこと同じぐらいやってたの!?
有り得ないよネ、どう考えたって危険すぎるし!!
「はい、永倉さん引いて?」
「あ、ウン」
の声で俺は現実に引き戻された。
恐ろしい遊びだ…。
俺はとりあえず枝に手を掛ける。
そういえば…俺が殿引きゃ良いんじゃない?
何でこんな簡単なことに気付かなかったのだろう!
「…無駄ですよ、永倉サン。殿様はいつだって私が引くのですから…」
ぼそりと届いた声。
怖ッ!!
総司怖い!
俺はとりあえずそそくさと枝を握って引き抜いた!
…“弐”。
また弐だ。
「殿様だ〜れだっ!」
「はい!」
総司がいきおいよく手を挙げる。
「また総司かよ〜、次は何だ?土方サンがらみじゃない奴にしてくれよ!」
ガハハと佐之は笑い飛ばし、も笑ってる。
いや、笑い事じゃないですって、この状況。
またあの総司が殿なんだヨ!?
「そうですねェ〜、じゃぁ…「総司ッ、テメェ―――!!!」
襖をバーンと勢いよく開けて土方サンが乱入してきた。
「ひ、土方さん!?」
「…総司、今なら尻100連打で許してやる…来い…」
ゆらりと挨拶もなしに土方サンは部屋に入ってきた。
当の総司はと言うと…。
「すみません〜、殿様は原田さんに譲りますっ!!」
そう笑顔で言うと、脱兎の如く部屋から消えた。
その後を追うように怒号を叫びつつ土方サンも消えた。
「…何だったんだろ…」
俺たちは呆然と嵐が去った後を眺める。
「原田さんが殿様だって」
「ぉ、おー!じゃぁなぁ…“壱番が俺とぽっきーげーむ”ってどーだ!?」
「ぽっきーげーむって何」
「まさかお前が壱番か、新八!!!」
ガーンと衝撃を受けたような佐之。
俺は訳も分からず首をかしげる。
「違うけど…」
「なら良い!ちゃん、やろうぜ!」
「えー…だって、原田さんそんな」
が嫌がってる。
ぽっきーげーむの意味が分からずやきもきしてる間に、佐之は細長い物体を口に銜えた。
その逆の端をに向ける。
ちょ、ちょっと、何してんのサ!?
「ちょ、待てって!」
「何だよー」
「何してんのサ!?」
「何ってぽっきーげーむだろ?こうして両側から食ってく、って奴。
俺コレやりたかったんだよなー」
って、じゃいづれ口くっつくじゃん!
何考えてんの!?
こんなの子供の遊びにしといていい訳!?
いや、良いはず無いでショ!?
というかもし俺が壱番だったらどうしてたのサ!?
「てか、それは何!?」
「…ぽっきーじゃねぇか?」
え、何その適当な感じ!!
疑問形のものを口に含まない!!
拾い食いする感覚だヨ!
俺が混乱していると、どたどたと廊下を走る音。
「は、原田隊長!!こちらでしたか!巡察のお時間です!!」
良いタイミングで十番隊士が駆け込んできた。
「ま、マジかよ!?じゃ、これだけでも…!!」
「そうはいかないでショ、早く隊務行きなさい、佐之ー」
俺はにやにやしつつも佐之を部屋から追い出す。
「ちくしょー!!」
そんな叫び声も戸を閉めて掻き消した。
「やれやれ」
俺はどさっと腰を下ろす。
アイツ等とはどうもまともに遊べないのかもしれない。
…年齢差か?
痛々しい事を考えて俺は溜息を付いた。
「…ねぇ、新ちゃん」
「ン、何ー?」
呼ばれて振り返ると例の細長い物体を銜えている。
「な、何!?」
「やろうよ、ぽっきーげーむ」
「…なんで?」
「折角だから?」
銜えつつ首傾げる姿は何とも可愛らしい。
「しょうがないネ…」
俺は言いつつ残った片方を口に銜える。
さくさくと食べ始める。
ふわりと広がる小麦粉の甘い香り、一体これは何なのか。
ぽっきー…ね。
異国の食べ物だろうか。
考えつつも口を進める。
ホラ、まであと3センチ。
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はい、今日はツッコミやや少なかったですか?
新八さん、ツッコミ記第三弾です。
現代語をいっぱい使ってしまいました(痛)
四萬打ありがとうございます!!!
雛さまへささげます。