【PEACE MAKER】





許されない、許されてはいけない。
許してほしい、どうか、許して。














「っ!」




ばちっと目を開ける。

目に映ったのは木目の天井でほっとした。

起き上がって、溜息を一つ。



「…参っちゃうな」



ははっと乾いた笑いを浮かべて、髪をかきあげる。

冬だと言うのに若干汗ばんだ額に更に嫌気が差した。

自分の心の弱さに、握った拳が汗ばむ。


起きなきゃ、と体を起こす。



「気持ち、悪い」



それは夢見が悪かったせいか、体調が悪いのか、自分では判断しがたい。

最近調子が良かっただけに、一際その気持ちの悪さが口を突いた。


「…っう」


呻き声と共に、口内に広がる、独特な、味。

初めて人を斬ったときだって。

初めて討ち入りに入ったときだって。

こんな思いしなかったのに。


「…っは」


小さな声が出た。

取り敢えず喉元まで来たものを、飲み込んで。

立ち上がる。


パタパタと廊下を走る音。


「沖っ田さーん!」


障子の外、朝日に照らされて映る影。


「あ、おはようございマース、さん」


「今日は起きてたんですね、本当お寝坊さんなんだから」


くすくすと軽やかに笑う、賄い方のさん。

スッと障子戸を開く。


「…顔色良くないですね?」


覗き込まれ、一言。


「そうですか?」


きょとんと、一言。


「朝御飯、できてますよ」


にこっと笑って、一言。

彼女は異変に気付いても、何も言わない。

私を問い詰めたり、誰かに訊いたりしようともしない。

疑問を抱え、だけどそれでも笑ってくれる。




知ってしまえば、それができなくなることを知っているかのような。




「沖田さん?」

さん」

「?何ですか?」

「………いえ、顔、洗ってきますね」


にこっと私は笑むと、洗面所へ足を進めた。



さん?」

「沖田さん」

「何ですか?」

「………いえ、先に、行ってますね」


にっこりとさんは笑むと、踵を返す。


あぁ。


その腕を取って、こちらを向かせれたなら。





守るべきものも握り締められぬ、この血塗られた手のひらが。



こ ん な に 綺 麗 な の に 、 と 。



泣く子をも黙らせるという、面を被った鬼の心が。



た だ 、 欲 し い 、 と 。








許されたい?


許されたくない。


許されたくない?


許して欲しい。








こんな汚い手、イラナイ。

優しい仮面を付けた、鬼。



斬り捨てる、敵は、全て、容赦なく、斬る、殺す、血を、浴びたい。




こんな私が許されて良いはずが、ない。





「沖田さん」

「…何ですか、さん」

「わたし沖田さん、好き、ですよ」




「え」




「…間の抜けた顔して!もっさり食べなさい!!」


そう言って太陽のように笑う。


「…でも」

「わたしの勝手、勝手に好きになって、勝手にあなたの世話を焼くんだから」


そう言って頬を染めて私を見上げる。


「…あなた自分勝手でしょう?勝手に一人で悩んで、凹んで、バカみたいに…」


「…そ、れは」


「だからね、わたしも勝手にするわ」


そう言って真っ直ぐ私を見上げる。










許されたい。


そして彼女と幸せになりたい。







許されてはいけない。


私は幸せなんて望んでない、戒めを。









許されたい、許されてはいけない。











「わたしが勝手にあなたの隣に居て、その腕を掴んで、離したりしないんだから」














あなたの手が血塗られて滑って何も握り締められないなら。


わたしがあなたの手になって、大事なものを抱えてあげる。


だからあなたは刀を取って。


わたしを背に戦えばいいのよ。














あぁ。



そうやってあなたは私を許す。




(きっと最後まで、私は願い続ける)













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どうしよう、適当すぎた。
構成無視で書いたので、文体がぐちゃぐちゃ。
いつか直します…精進します。