【PEACE MAKER】   例えばこんな逸話  SECOND STORY

  十   〜COMING AFFAIR〜




、ちょっと来てくれます?」

総司に呼ばれて、あたしは土方さんの部屋に入る。

「なぁに?」

「…お前も一緒に枡屋に行け」

妙に明るいあたしに、土方さんはちょっと面食らったらしい。

「へ?どうしてです?一番隊の仕事でしょう?」

「え〜、行きたくないんですか?行きましょうよ〜」







誰が好き好んで生臭な御用改めに行きたがるか。







「面倒くs「行きますよね?」

総司に詰め寄られる。



総司…顔近いよ…。



そして怖いよ…。


「しょうがないなぁ…」

そう言って、部屋に戻る。

隊服を羽織り、刀を腰に差す。




「ダ〜メですっ!」




「ぎゃぁ!!」



急に障子戸がバーンと開き、総司が中に入ってきた。



「総司!ここ女の子の部屋なんだけど!!??」



びっくりしたー…。



はこっちを着てください!!」










聞け――――――ッ!!!!










「って、何これ、着物じゃない」

これじゃぁ隊務に差し支える。


「そうですよ?は斬り込む部隊じゃないんですから」

「はぁ?」

「…ネズミがいるんですよ、向こうにも」

「なぁるほど、枡屋より他に目を向けてろって事ね」

「そうゆう事ですっ!さすが、呑み込みが早い♪」

にこにこと続ける総司を尻目に、あたしははぁと溜め息をついた。





夜が明けきらない内に、一番隊と烝は屯所を出発した。

そのはるか後方、あたしは普通に街を歩く。


まぁ早朝過ぎて誰も居ないから逆に目立ってるんだけどね。


それにしても似てたなぁ、烝のアユ姉。

あそこまで似るものなのかなぁ。


しみじみと思いながら、枡屋に到着。

あたしは物陰から、枡屋そ見下ろせる屋根の上などを監察する。


『不審な輩を見つけても、深追いはするな』


それが指令だ。

まぁったく、あたしは監察方じゃないってのよ。

目を凝らす。


日が、昇る。


バタン!!ガタン!!ドカドカ!!!


うわー…ソウゼツ。

音だけ聞いてても面倒くさそうだ。←おい。


その時、視界の端に動くもの。

「あ」

あれが噂の標的『ネズミ』さん?


…女、かしら。


あまり見ると視線と殺気で気付かれる。


とにかくあたしはその女の動向を探る。


何を見てるんだろう…?


女の視線を追って見る。

「…総司?」

その時、総司がバッと女のほうを見た。

しかし、もう女は居ない。


しまった…。


まぁ良いや。


はぁ、とあたしは家にもたれかかる。


さん…?」

「!!」


急に名を呼ばれてあたしはバッと振り向いた。


「ッ!」

あたしの形相に驚いたのか、一瞬身を引いた。

「北村くん!?」

「何してるんですか?こんな所で?」

「いや、北村くんこそ!!」


ヤバイ!!!

色々とヤバイ!!


逃げなきゃ、逃げなきゃ!!


そして、女は追わなきゃ!


「ごめん、北村くん、あたし急いでるんだ!」

そう言うなり、あたしは通りに出た。


!?」

「わっ、鉄!」



うわぁ―――……もうドツボだ。



さん!」


後ろには北村くん、前には鉄、その5軒ほど向こうに新撰組。


「…鈴…?」

「おまっ、市村!!」


「あー…2人は知り合い?」

あたしは頭をかく。

「ま、まぁ…こそ」

寝巻き姿の鉄はあたしに訊き返す。

「何で2人で?」

「な、何でもないって!」

北村くん…そんな慌てたら逆効果ですよ。

「もしかして、鈴、お前―――…」

「…何だよ」

に気でもあんのか!?」


は?


鉄ってば何言ってんのよ。


そこ!!


何顔赤くしてんのよ!!!


「鈴、お前図星かよ〜、でもはダメだぜ〜」

「は?」

「…すっげぇ強くてかっこいい人がいるもんな?てか、に手ェ出したらお前殺されるぞ?」



それって誰の事さ?



総司?新八?…平助か。


ぁあ、佐之?



…土方さんかな。




こわッ。



独りで自問して後悔しました。




「鉄、なぁに言ってんのかなー、この口は…この寝巻き小僧!!


「いてぇいてぇ!頬引っ張んなって、!!」


ハッ!!


こんな事している場合じゃなかった!!



「あたし急いでたんだ!!ごめん、鉄、北村くん!!」



そう言って、あたしは女の消えた方へ走っていく。



まぁ…追い付くワケ無いだろうけどね…。





「まぁ、確証が持てただけ、良かったとするか」

と、土方さんは言った。



良かった――――……。



、ご苦労だったな」

「はい」

あたしは返事も早々に土方さんの部屋を出た。



「で…?今度は鉄が?」

「そうなんですよ…」

隣にいた総司がぽつりと言った。

「…あたしと別れた時は普通だったのに…」


まさか、北村くんと何か関係が。


、行ってみますか?鉄クンの所へ」

「…そうしてみましょうか」

あたしは総司の後ろに付いて、鉄の部屋へ向かった。

そこには、辰之助さんが座っていた。


「開けない方がいいですよ。噛み付かれますから」


押し入れに手をかけた総司へ、辰之助さんは言った。

あたしは部屋の入り口の所で佇んでいる。


「すみません」

「何がです」

「…何を言えばいいのか、分からない事が」

「………」

沈黙の後、総司が縁側に出てあたしの隣に座りこんだ。


「…心の傷がどんなものか、知っていたつもりでした」

「知っていたじゃないですか。あなたの言った通り、そんな簡単に治るもんじゃありませんでしたよ」

辰之助さんは言いながら、引っ掻き傷に薬を塗り包帯を巻いていく。

「ただね、傷の深さなんて誰が分かるっていうんです」


あたしはただ、黙って聞くしかできなかった。


「誰が分かるっていうんです。見えたり触れるもんじゃないのに。本人が忘れてりゃ尚更だ」


…。


気分が悪くなってきた。


胸の奥が軋んで、吐き気がする。


カタンと、障子戸にもたれかかる。


「…あいつねぇ大きくなってくれないんですよ。背の高さとか、ガタイとか…


 二年間ずっと変わらないんですよ…」



カラン。


総司が庭に出る。


「二年掛けで縫い合わせたのになぁ」



細い背が、庭の向こうに消えそうになる。


「…総司…」

あたしの呟きは、誰にも届かない。

ただ、総司のあの咳があたしの耳に届くだけ。



追いかけなきゃね。



細い背を丸めて、その人は咳をしていた。


「ゴホ…ケホッ…コフ…二年…二年かぁ」

その背を見つめるだけで、あたしは声をかける事ができない。


あ、猫だ。


ぁ。


逃げた。


「…何年だろう」

あたしは口を開いた。

「そんなの関係無い」

「ッ!?」

「傷なんて、縫い合わせられるものじゃない。覆い被せて見えないように隠す事しか、できないよ」

…」

総司の悲しげな笑みが、あたしの心を更に凍らせる。



「…ただ、その傷と一生付き合っていく事しか、できないんだよ」



あたしの言葉だけが、その場に残った。






「とうとうかー」

あたしは隊服に身を包み、陣中にいた。

ってば珍しくやる気満々!?」

「うるさいよ、平助。あたしはいつだって全力投球!!



「「あはは、冗談だろー?」」



笑った平助と佐之御用改め前に三途の川目前。

オロオロとする新八。


「…お前等うるせぇ。…総司、出動可能な隊士の数は」

「35名です」


あれ。


そんなに少なかったっけ、隊士。


「35人だァア!!?何いつの間に減ってやがんだテメーら!!!」


ふざけんな――――!!と佐之が隊士に向かって怒鳴る。

「今いる隊士に言ってどーすんのサ」

「本当本当。あたしでも出陣するってのにねー」

「いや、は女の域を越えてるから」

それに同調してガッハッハッと笑う佐之の横腹に蹴りを入れ、あたしは言った。

「…新八、何か言った?」

「イエ…何でもアリマセン」

「でも正直な話。日本男児が脱走だの風邪こじらすだのテメーラ金玉付いてんのかって言いたいよな」

「平助…あんたって本当…」

あたしは呆れて、やれやれと首を振った。

「藤堂君…山南さんもカゼひいてるって事忘れてね?」

「……俺が死んでも今のこと山南さんに言うなよ」



「生きてても言いつけてやる」



あたしの科白に。


――――!!」


泣きついてくる平助を見て、笑う3人。


これから人斬りに行くってのに、場違いな。


それでもあたしたちは笑う。




「んで?ど―――すんだ、副長―――――」





「行こう、歳。


 これ以上待てるほど新撰組は気が長くは無いだろう?」




「あんたならそう言うだろうと思ったぜ」






「―――――そ…」



「「「「「そおぉ来なくっちゃ新撰組じゃないッスよ―――!!!」」」」」



男達は元気な事で。


あたしはそれを遠目に見てる。

そして。


「烝」

「何や」

「ネズミの話だけど」

「あぁ、たぶん副長が俺に命じる筈や」

「そっか…女でしょ?」

「あぁ」

「因縁?」

「…何言うてんねん」

「それと、鉄の事だけど…宜しくネ」

「…しょうもないやっちゃなぁ…ほんまに」

烝が呟く。



そこへ副長。

「はい」

「お前は向こうで隊分けの説明を受けろ」

「はぁい」

あたしは隊長たちの輪に入っていった。


はどうする?」


「何がサ?」

「局長と行くか、副長と行くか」

「ぇ、何それ。あたしに選択権あるの?」


だったら決まってるじゃない。



「局長の班」



だってねぇー?


「あはは。、それ土方さんが聞いたら泣いちゃいますよー?」

総司がケラケラと笑い飛ばす。


あたしにとっちゃぁ結構な選択よ?


「誰が泣くか、誰が」

「土方サン!」

「あれ、副長そんなにあたしと回りたかったんですか?」


「だから泣かねぇっつってるだろ、、てめぇは局長の班だ」


やりィ♪


「それじゃぁ、行くか」


近藤局長の声に、みんなが賛同する。


「行くぜェ!!」



「「「「オー!!!」」」」





「出動!!!」



詰め所を出て、あたしは新八の隣に付いて歩く。

近藤局長の班は、総司、新八、平助、あたし含め11名。





これから長い、長い夜が、始まる――――………








―次→乞うご期待!!……←始―

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来ちゃったー、ついに池田屋来たちゃった!!

いやぁ、文章力無いあたしの文章を

良く解読してここまで読んで下さいました!!

まじで感謝です!!

これからあと3話ぐらいで終焉を迎えるワケですが…。

そのころにはあたしも受験が…どうなっているのか。

笑って済ませて〜。←済むかバカ!