たとえば世界中の雨がアンタに降り注ぐとして、 「びしょ濡れ、それ何プレイですかィ」 傘を片手に、雨の中、目立つ金髪を見つける。 この梅雨空に傘も持たずに出かけた馬鹿を、さらに馬鹿にするため。 「…他に言うことないの」 「ねェな」 数歩離れた場所から見下ろす。 雨の中にいてもなお攻撃的な視線を上げる。 金髪から滴り落ちる雨のしずくが、きらきらしている。 「あんたの彼女が雨に濡れてんでしょうがァアアァアア!」 数歩ジャンプしたかと思うと、総悟の胸倉目掛けて飛んできた、“彼女” 名前を。 もちろんそんなものすらりと避けると、総悟は涼しい顔でつんのめる相手を見つめた。 「え?アンタどこまでエムなんですかィ、こんな拷問めいたプレイが好みだとは知りやせんでした」 「知らんで当然じゃ!私にそんな趣味ないわっ!」 総悟の胸に飛び込めなかったことの地団駄なのか、 ドMと言われたことに腹を立てた地団駄なのか。 それで? 一体雨の中、アンタは何してたって言うんですかィ。 「もういいっ帰る!」 何に気を損ねたのか、ふいっと視線をそらすと家とは反対方向へと歩き出す。 「へーそうですかィ、なら俺も帰りまさ、………アンタの馬鹿さ、確認したしな」 ぽそりと付け足す、まったく、心配させんのもいい加減にしてもらいたいものだ。 ふっと家からいなくなっては、総悟を若干なりに不安にさせる。 普段他人には左右されない彼が、唯一動く瞬間だ。 (不安は、邪魔) 行動、すべてを惑わせる。 無事が確認できたんならそれでいい、総悟は傘を傾けると彼女に背を向け家へと戻る。 その背にぽすりと衝撃、 「…おいてかないで、」 「誰がおいてくって言いやした?アンタの耳はグリコのおまけかなんかですかィ?」 の腕の中には確かに総悟の体。 彼女にぎゅうっと抱き締められる、感じるお互いの体温。 総悟は傘を離さない。 「濡れんだろィ、バカ」 そう言っても振り払われない腕、 、 アンタを一人置き去りにしたりしてやんねェ、 ----------------------------------------------------------- 一人には絶対してやらねェ、アンタの思う様にはさせねェ。 拒まない、それが一番の愛情表現。 |