【REBORN!】
この世に正義と悪しか存在しないとしたら、彼は確実に悪だと思う。
「咬み殺してやろうか」
にこり、と奴は笑顔を向ける。
…オイ、明らかに相手怖がってんじゃん。
「そこのオニーサン、その辺にしといたら」
あたしは三階の部屋の窓から声をかける。
視線の先には学ランを羽織った男子と、その前に跪くブレザーを着た男子。
〜最恐彼女と最狂彼氏〜 前
「君、そこで何してるの」
彼は至極ゆるりとした仕草であたしを見上げながら言った。
「何って休憩」
しばしの沈黙。
「…そこ、どこか知ってる?」
「応接室」
「風紀委員の領域だよ」
「ふぅん」
意外に彼は饒舌だった。
「君、誰?」
そして意外に静かな声だった。
「あなたこそ誰?」
「「…」」
「…埒が明かないね」
軽い足音がしたかと思うと、グンっと彼で視界がいっぱいになった。
「なッ!?」
どうやら木をつたって三階のこの部屋までやってきたらしい。
あたしは急に近くなった距離に思わず身を引く。
が、その腕を掴まれ体の位置を変える事はできなかった。
正直恐い。
「離してくれないかなぁ〜」
「…君、僕の事恐がらないんだね」
「…いえ、ものっそい恐がってますよ、あたし」
「ものっそい?…ふぅん、面白いね」
くす、と彼は笑みを浮かべる。
何処が!?
怖いっつってんじゃんか、手離せ!
と、大声で言えない自分が悲しい…(うわ)
目の前の彼は薄く笑みを浮かべてあたしを真っ直ぐ見てくる。
「雲雀恭弥」
「な、何!?」
「僕の名前だよ、君は何?」
「え……っと、」
あたしがおずおずと名前を口にすると、彼は満足そうに笑み手を離した。
「あなたここの生徒?」
「そうだけど、それ以外に何に見えるわけ?」
「だって…ここの制服ブレザーでしょう?」
今度はちゃんと前を見据えて言ってみた。
「…僕はいつでも好きなものを着るんだよ」
何むちゃくちゃな事言ってんだ、この人――――ッ!!!
「君こそ私服じゃない」
「なッ!!あたしは生徒じゃないもの、当たり前でしょう?」
…最悪、ガキ扱いされた。
確かにあたしは童顔で、未だ高校生やらに間違えられるけど。
あたしは今年22よ!
「…他校生か…排除するべきだね」
違う―――――!!!!
ものっそい勘違いしてるよ!
「違うわよ!あたしはもうここは卒業してるの!」
「…なに?」
「だから、今日からここで教育実習する卒業生!」
「………で?」
DE!?
で?じゃないでしょう!
何…この子、意味分からない。
「僕には関係無いんだよね…誰であろうと、僕の道を塞ぐものは…咬み殺す」
それ女の子(!?)に向ける台詞じゃね――――!!!
「…かよわい女の子にそんな事言うとモテないぞ、少年」
あたしは後ずさりつつも彼見据え言い放った。
しばらくの沈黙の後、彼は口を開いた。
「三つほど訂正があるんだけど。一つ、君は女の子と言う年?」
あんた中学生に間違えたじゃん!!
「二つ、僕も少年という年じゃない」
そうなの!?
「三つ………僕は弱くて群れてる奴が嫌いだ」
自論出た―――――!!!
あたしは心の中で突っ込む。
大声で言えない自分が悲しい…(二回目(うわ)
が、しかし!
あたしは負けない!!
相手は中学生だろう!
「確かにあたしは女の子という年じゃないわ、だけどそんなあたしから見ると君は少年よ」
む、と彼の眉が微かに寄る。
「…それじゃァね、少年」
あたしは颯爽と踵を返すと部屋から出るためにドアの方へ歩き出した。
「待ってよ、言いたい事だけ言って去っていく気?」
「…何か用でも?」
あたしは振り返らずに言葉だけで応える。
「続きはまた今度………またおいでよ、ここに」
予想だにしていなかった。
実習に来た先にこんな人がいるなんて。
「」
彼は生徒であたしは先生(予備軍)
「…気が向いたらね」
最も恐れ知らずな彼女と最も狂った彼氏の物語。
次に続く。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
突発的に始まった…三部作?か二部作になる予定。
ホスト部も書いているので一応…はお仕事してますよ!!(勉強は)