【REBORN!】





「山本くん」


「ん?なんだ?」


「・・・すき」






「俺も」








触 れ た く て 。









今日もわたしはあなたを見てる。








「なにー?」


友達の声を背中で聴く。


「何見てるの?」

「別に」


言いつつわたしは向き直る。


「そ?あたし帰るけど」

「あ、うん…わたし日直だから先、帰っちゃって?」

「分かった、また明日ね」


手を振って教室を出る友達を見送って、わたしはまた視線を元に戻す。

何気なく見下ろした先。

校庭には部活動をする生徒達。

今日のグランドは野球部が使用中。


ぼうっとその先から、空へと視線を移す。





暇。





なら帰れば良いのにね。


矛盾。


わたしはただ、ぼうっと頬杖つきながら空を見仰ぐ。

こうやってゆっくり時間の流れを感じるのがすき。

フと視線を下ろす。





「………」




目が合う。


あれは。


名前を思い出す前に、向こうが手を振ってきた。


無視するのもあれなので、一応振り返す。


!帰らねぇの?」


「わたし日直だから!」


「そか!お疲れ!」


ニカっとスポーツマン独特の爽やかな笑みを浮かべる彼。


「でも山本くん!」

「何だ?」

「あなたも日直だけど」



「わ、マジ!!!???」



「別に良いよー、部活頑張ってねー」


申し訳無さそうな顔して山本くんは両の手を合わせる。


その彼へわたしは手をひらひらさせる。


山本武、野球部所属。

エースであり、爽やか天然ボーイ、男女ともに人気高し。

最近できた友達、沢田綱吉、獄寺隼人。


空を見る事に飽きたわたしはシャーペンをくるくる回しながら彼に関する情報を集める。


同じクラス。

クジで決まった日直当番のペア同士。

わたしとの関係性、薄。

だけどわたしは結構こうして放課後空を見上げつつ、彼を見ている気がする。





さっきの笑顔、わたしに向けられたものだと思ったらちょっとときめいた





「望み無し」


わたしの頭が弾き出した答え。

狙うだけ無駄。




もっと近くで見たい。




「…何とかなるかな」


少し眩しすぎるかもしれないけど。

何とかできそう。


わたしはにやと笑いながら、ペンを走らす。


「悪ィ!!」


突然教室のドアが開いて、息を切らした彼が入ってきた。


「わ。びっくりした」

「悪かったな!もしかして終わっちまった!?」

「残念ながらまだお仕事残ってるわよ」


彼が来てくれたのが、妙に嬉しくて。


顔が自然にほころんだ。


「何笑ってんだ?」

「別に。これ、職員室持って行って終わり」


パタン、とわたしは日誌を閉じる。


「あ、じゃ俺持ってくよ」


わたしの席に歩み寄りつつ、山本くんは帽子を脱いだ。


「癖、付いてるよ」


変にハネた髪を見て私は笑う。

可愛い、さすが天然ボーイ。


「え、マジ!?どこ?」

「…左」


言いつつ私は窓に手を掛ける。

施錠をしなければ、風紀委員が煩い。


「ったく、参ったなー」


笑いつつ、彼はわたしの真後ろに立っていた。


「わぁ!?」


「ん?」


そ知らぬ顔、つまりきょとんとして山本くんはわたしの顔を覗き込んだ。


どうやらハネを窓に映して確認していたらしかった。

わたしは窓を閉めるために窓の近くにいる。

2人とも窓を必要としていて、だから、接近は避けられなくて。


この天然ボーイはわたしを意識していないらしい。


「何だ、顔赤ぇぞ」


笑いながら彼はハネを押さえつつ身を引く。

外は既に日が傾き始めていて。


「面白ぇな、お前」


…この天然ボーイが。


少々恨めしく思いつつわたしは鍵に手を掛ける。


「お前さ、いっつも外見てるよな」


「…は」


ピタ、と手が止まる。


「何見てんのかなーって思いきや、いっつも空見てっだろ」

「…空、好きなのよ」


わたしは動揺しつつも鍵を締め切る。

振り返ると、日誌を持った山本くんと目が合った。


「何?」

「いや、別に。さっき顔赤く見えたのって夕日のせいかと思ってさ!」


ニカッと笑う。

場を和ませる、わたしの心をかき乱す、爽やか笑顔。


「…何かの所為にするなら、強いて言えばあなたの所為よ」


溜息とともに言い放つ。

わたしは何を言っているのだろう!?

乱されたまま、この恋に堕ちていく。


「俺?」


天然ボーイにはハッキリ言わなきゃ伝わらない。


「山本くん」

「ん?なんだ?」





「・・・すき」





触れたくて、距離が近くなるほど貪欲になって。





「俺も」





照れたように、ニカっと笑った顔が眩しくて。


胸がきゅんとして、触れたくて。



「マジで!?」

「…マジだって、ずっと見てたんだぜ?気になってさ。部活にも身入らねぇくらい」


笑いながら彼はわたしに近寄る。


「また夕日のせいか?」


顔赤ェぞ、とわたしの頭をわしわしと撫でる。

照れ隠しだな、天然ボーイ。

そう思ったけど、きっとわたしの方が照れくさくて。


「見ていたのは空じゃなくて山本くんだよ」


自分すら誤魔化してたんだよ。


「…ばっか、お前が目逸らしてるから俺は一人片想いだと思ってたじゃねぇか」


「…知らないよ、そんなの」


あなたが見えないから。


「可愛いな、お前」


くっくっく、とやはり可笑しそうに笑う。

よく笑うと思う。


「…それはあなたでしょう、天然ボーイ」


触れたい、見てるだけじゃつまらない。







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くそぅ!
無理がある!!
ある方の話を聴いていて書いてみた。
…無理がある。
てか、アレだ。
キスまでさせたかったんですが(ぁ)