「本日の天気は晴天でしょう!」
って言いやがったお天気お姉さんなんて死んでしまえ。
雨じゃねーか。
雨…が降るだなんて、聞いてない。
わたしが朝チェックしてきた天気予報は晴れの一点張りだったのに。
(あの嘘つき、あの番組もう見ない、くそうくそうさいあくだ!)
雨は止みそうにもない、むしろ酷くなりそうだ。
もう既に小一時間ほど小雨は続いている。
わたしの雨宿りももうすぐ一時間を経過しようとしている。
最悪。
「局長…は、今日は会議で屯所にはいないし」
わたしは屯所を出た時の事を思い出す。
(ちなみにわたしは真選組のお手伝いさん)
誰か気付いて迎えに来てくれないかな、なんて。
「土方さん…無理無理、マヨネーズに夢中だったもん」
はぁ、と溜息を漏らす。
それもこれも、副長がマヨネーズを買いに行けだなんて言うから。
(恨むぜ、副長!)
「山崎くん…は仕事」
となると、残るは。
「沖田、迎えにきては………くれないよな」
期待するほうバカだ。
あの沖田がこの雨の中、迎えにきてくれるはずがない。
この小雨のうちに走って帰った方が、幾分かマシかもしれない。
「ヨシ」
わたしは買い物袋を握り締める。
走れば、大丈夫。
屯所まではすぐだって。
わたしはそう思うと、地を蹴った。
バシャ!!
(とても不愉快)
屋根から出ると同時にぐっしょりと服が肌に張り付く感触。
不快で、不快で、何だか自分が惨めで可哀想で、独り。
「もう、ほんとう、やんなっちゃうな」
ばっしゃばっしゃとできかけた水溜りを汚していく。
小雨だったのが、今では土砂降り。
やんなっちゃう、着物の裾は泥に汚れ、髪も肌に張り付いてく。
屯所までの帰路が、ほとんど半分になったところ。
「そんなに慌ててどうしたんですかィ、びしょ濡れですぜ」
聞きなれた声音。
にやりと笑みがついている声だ。
雨の音でも描き消えることなく、わたしの耳に届く、唯一の声音。
「沖田!!!」
振り返るとあの沖田が、あの沖田総悟が、傘を片手にこちらを眺めている。
「雨に濡れる趣味があるとはねェ、知りやせんでした」
あ、何だかむかむかしてきた。
「沖田こそ、この土砂降りの雨の中何してんのよ」
ふぃっと視線を逸らし、わたしは通り過ぎようとする。
その腕を掴まれて、傘がわたしの頭上を覆った。
「何してたか、本当に分からないんですかィ?」
「…」
え。
なに、この展開。
もしかして、沖田はわたしを迎えに来てくれたのだろうか?
暫くして、体に当たっていた雨が止んだ。
「…沖田、濡れるよ」
傘をわたしのほうに傾けているから、沖田の体が雨に晒されている。
「…沖田」
黙って濡れて行く沖田に、わたしは呆然とするばかり。
「おきた?」
沖田の前髪からぽたりと雫が落ちる。
「風邪引くよ」
傾けられた傘を押し戻す。
「…あーあ、濡れちまいましたねェ」
沖田が突然口を開いた。
「もう要らねーや、こんなの」
ぽいっと、傘を放る。
え、ちょっと何してんの。
まさか、迎えに来てくれたとか思ったのが間違いだったのか。
「傘捨てたら濡れるじゃないっ」
飛ばされる前に、拾おうとわたしは屈みこむ。
「もう濡れちまってまさァ」
ぎゅうっと後ろから抱き締められるけど、何が何だか分からない。
「お、きた?」
沖田の体は妙に冷たくて、雨に濡れてて、え、何で。
「濡れるよ」
「…もう手遅れなんでさァ、アンタが視界にいないと気になってしょうがないんでィ」
「は?」
「何もかも、遅いんでさァ、責任取ってくだせェ」
こいつは酷い言い草だ。
いつもだが、いつもに増して酷い言い草だ。
「責任って」
「俺のいないところで泣くな、濡れるな、下を向くな、それが責任を取るってことでさァ」
「なぁ!?」
「も、期待してたんじゃないですかィ?」
こそっと耳元で囁かれる。
どう考えてもこいつは狙ってやがる、にやりと、きっと口の端が上がっているはずだ。
わたしの位置から、後ろから抱きすくめる沖田の顔は見えない。
「それが俺の愛のカタチでさァ」
呟いたそれは、いつもの調子?
この声は、囁かれたの?
心に響いたの?
「…で、何を買いに出たんですかィ?」
「マヨネーズ…」
ぐしゃ。
「ちょ、何してんの!」
折角買ったマヨが!
「良いんですぜ、屯所帰ったらすぐにでも俺が副長に成り代わりまさァ」
副長、もう恨みませんから、暫く実家に帰ってください。
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総悟はきっと独占欲がめちゃめちゃ強い。
ほかの奴に触られようものなら、きっとそいつをボッコボコにのすだろう。
いいねぇ、わたしそういう愛のカタチも憧れるよ。
でも実際はちょっと遠慮願いたいね。
総悟は銀魂の中で2番目に好きなキャラw