【銀魂】







それは、



あの空が高すぎたからなんだ。



















「お前」


信じられないという声音。

(あぁ、もうそりゃそうだろィ)

五年の年月は、さぞお互いを変えたんだろう。


「すっかり、病人らしくなったんだね」


冷ややかに見下ろして、は言い放った。

それを気にも留めずに俺は雑誌のページをめくる。


「アンタは普通の女にでも成り下がっちまったんですかィ?」


「うるさい」


俺がよく体調を崩すようになったのは3年前。

この、離れの庭が一望できる床から離れられなくなったのは1年前で。

、お前が俺から離れたのは、5年前だったよな。


「何かの洒落のつもり?」


ぐぐっと眉を寄せ、俺を見下ろす。

5年前ならいざ知らず、どこでそんなSっ気を手に入れたんだ、と愚痴る。

(洒落で済ませれるもんなら、済ませたいもんでさァ)

もう俺の中で結論は出ていて。


「…急に来るアンタが悪いんでさァ、洒落の一つも用意できなかったのはその為ですぜ」


読んでいた雑誌を放る。

そして、すっと目を細めて、を見上げた。


「やっと私を見る気になったか、ウスラトンカチ


「いつから俺にそんな口利くようになったんですかィ、バカ


昔は尻尾振ってついてきた、可愛い奴ったのに。

(笑える冗談だけどな)

俺が病だって知ったら、血相変えて飛んでくると、思ったのに。

(まぁ、予想は的中したわけだが)

ある意味。


「…何ぼーっとしてんのよ、バカソーゴ」


ばっとしゃがみこんで、なおも俺を見下ろす。


「…いや、何でも」


ぐぐっと起き上がる。

寝ているほうが楽だと思ったのは最近だ。

はぁ、と息を吐いて、ふとの顔を見て、驚いた。


「…何、泣きそうな顔してやがんでィ」


「すっかり、」


弱っ、ちゃ…そこからは声になっていない。

泣きそうな顔をする奴に、ちゅ、と口づける。

(伝染る、とか言うなよ)


「穏やかに、笑うようになったんだね」


そりゃ、こうなれば誰だって諦めの笑いだって取得してくるってもんだ。


「アンタは綺麗に泣けるようになったんですねェ」


昔は鼻水垂らしまくりだったくせに。

くすくすと笑って、俺はそう続けた。


「一言余計だよ!」


バシっと叩かれる。


「乱暴なところは変わってねェな」

「…もう、うるさい!」

「まぁ、また遊びに来いよ」


俺はごろんと横になる。

背を向けて、のほうは見ない。

(マジ泣きじゃねェか)

人のために泣ける、の優しさに惹かれた。

今ではそれが…疎ましい。


(泣くな)


そんな涙、要らねェ。



またなんて、あるのか分からない。


この病は、そういう病だ。




「次に来るときは、連絡してくだせェ」





その時は、洒落の一つでも、用意しといてやりまさァ。











「 総 悟 」











「  総  悟  」









「    総    悟    」







「そう「煩ェな、バカ




チラリと視線だけを向ける。


(あぁ)


やっぱり向くんじゃなかった。


「そう、っご…」

「何泣いてやがる」



抱き締めて、涙を拭うことが、できない。



(さっきは出来たってのに)



自分の手が、他人の血にも、
己の血にも、汚されていることを知る。



「泣くに決まってるでしょ!ばか!!」


「はいはい」


本当は何で泣くのかなんて分からない。

だけど問いただすとまた泣かれる。

(めんどくさい、女でさァ)

女がめんどくさいものだと知ったのは、と付き合ってからで。

多少なりともわが身を振り向いたのも、と付き合ってからだ。


「居なく、ならないでッ…」

「無茶を言いなさんな」

「…ッ」


居なくならないなんて優しい言葉、かけれるはずねェだろィ?


「何で、総悟なの」

「土方さんが言うには、日ごろの行い、らしいですぜ」


尤もらしくて笑えまさァ。(もちろん再起不能にしてやりましたぜ)


「おかしいだろィ、あれからあの人いつもここに来るんですぜ」


用も無いのに。(もちろん追い返してやってまさァ)


「…まるで、確認するみたいに」


総悟、てめぇ生きてるか。…って。(もちろん…ピンピンしてらァ、土方さんの首取るまでは死にませんぜ)


どんどん、の顔が歪んで、奴の目から涙が溢れた。


(そんな感動的な話してませんぜ)


「…総悟ぉ」

「…何でィ」

「居なく、ならないで…」

「くどいですぜ、


笑える。(笑えない)


「ま、しぶとく生きてやりまさァ」

「………絶対、だよ」

「だったら、


「…なに」





「………居 な く な ら ね ェ で く だ せ ェ 、




「…っあたり、まえでしょ!」


そう笑う。

こうしていつだって、笑顔に変えられたよな。


「今日はもう遅い、またな」


「…また、明日ね」


そう言って、が襖をしめる。

月光が入らない、暗黒の、部屋。

時間は、刻々と過ぎる。




「覚悟しろ、沖田っ!」

「探せ!どこかに居るはずだ!」




闇夜を荒らす声に、俺は目を閉じる。









「またな、











「そこかッ」

「…折角人がしんみりしてるところに、とんだ邪魔でさァ」



刀片手にゆらりと立ち上がる影に、



「覚悟ッ」



臆する者はいない。



「…戯れの、時間でィ」



開いた双眸が、




「怯むなッ、病人だ!」




臆する物は、何も無い。



























サヨウナラ、

俺の世界のただ一人の女。












空が遠すぎて、手を伸ばす気にもなれなかったんだ。


















「グッバイ、マイハニー」

















(そう冗談でも言えねェことを、最期に)













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あばば、暗いっ。

沖田総悟さん、10年後ぐらいの夢。

銀魂の10年後は、もしかしたらREBORN!の10年後より萌えるかもです、もぐもぐ。

総悟さんは、きっと最期まで強がって、いそうです。

周りの奴等が弱っちいから(土方さんとか、近藤さんとか)、俺がしっかりしねェと。

みたいな気持ちで。

でもやっぱり死ぬのは嫌で、誰かにそれを分かってほしくて、でも弱さを見られるのは嫌で…

悶々と、一人悩んでいればいい。



きっと銀魂の沖田は病気になんてならないだろうけど。




総悟だいすきな慧さま(DigitaliS*)に恐れ多くも献上。
こんなんでよろしければ、どうぞ…(びくびく)






ア ン タ を 愛 し て る 、 世 界 が 終 わ り を 告 げ て も 、 そ れ だ け は 譲 り ま せ ん ぜ 。