「海が見たい」


オレの助手席に乗るのはワガママなお姫様。


「あ?何だって急に。海が見てェってんなら、その辺の水溜りで我慢しなせェ」


オレのハンドルを握るのはサディスティックな王子様。







助手席に乗せてって。










今日もオレは御用の行灯を引っさげ


「待てェ、桂ァアァァァアアァ!」


猛スピードで街を走り抜ける


「あ、すいやせん土方さん、轢いちまいました」

「総悟ォオォオォ!!」

「チッ、生きてやがったか」


この頭のイカレタサディスティックな少年の運転は荒い。
いつも隣には隊士。
あぁ、例外が、一人。


「ソーゴっ」

「何でィ、

「海」

「…だから、何で海」


じとーっと王子は目を据わらせる。


「いいから、行こ」

「歩いて行く気ですかィ、バカ

「だって、行きたい」


「…乗りなせェ、ちょっくら乗せてってやりまさァ」


そう言って、王子はオレの運転席のドアを開く。
ぽかんとお姫様。
王子は助手席のドアを開けて、お姫様を押し込む。
王子が誰かの言うことを聴くとすれば、このお姫様だけだということを、オレは知っている。


「ちょ、」

「何でィ」

「これ、パトカーじゃん」

「…違いまさァ、こいつァポンコツ一号」


ポンコツ!?
てめッ、ポンコツって、おまっ!



「そんな名前!?可哀想!!」

「本当に可哀想なのはアンタのいかれた頭でさァ」


本当にいかれてんのはアンタの頭だー!!


「さーて出発」

「ちょ、アンタの運転心配なんだけど!」

「安心しなせェ、俺ァ真選組一安全運転ですぜ」


嘘付けー!!!
キラリと颯爽に笑みを浮かべる王子を尻目に、青くなるお姫様。


「…さーて、いっちょ飛ばすとしまさァ、途中で降ろしてなんて言うなよ?」




絶対に降ろしてなんてやらねェからな。





真っ青になるお姫様。
ギュンっと回されるキーに、踏まれるアクセルに、モーターが軋む。




「そ、総悟っ、お願い、安全運転―――――!!!!」




「頑張れよ、ポンコツ。うちのお姫様がアンタをご使命でさァ」




ニヤリと悪そうに笑むのは、犯罪者を見つけたときの様。




「この際海も越えて、夢の世界へと洒落込もうとしますかねェ!」




海を越えて、空を裂いて、雲の向こうへ。
助手席にはお姫様。
上げる可愛げのない叫び声。



「うるさいですぜ、。舌噛み切って死んでも知りませんぜ」

「ちょ、総悟ッ、あたしが死んでも良いっていうの!?」

「俺がアンタを殺せるなら本望でさァ、アンタは誰のものだと思ってるんですかィ?」

「あたしはあたしのもの――――!!」

「あーあーうるせェ、海はまだまだですぜ」


楽しげに続ける王子と、気が気じゃないお姫様。
オレは道路を走り、海を目指す。
















、アンタとならどこへでも行ってやりまさァ」























きらきらしい水面、青い海、青い空、助手席には君。



























行こう、


俺たちだけの世界へ。




(だからって生死までは保証しませんがねェ)










沖田氏って運転してたかな?なんて思いつつ書いてました笑。
いつも助手席でバズーカ構えてるような気も…。
このような拙い作品ですが、お題サイト*+.,A prince of S,.+* 様へ提出させていただきます。

泉。(蒼天。)