出会いは、最悪だった。



「ぎゃああああ!」
「逃げなさい、ッ!」
「邪魔だァアアア!」


(え、え!?ぇええええ!?)


「どけッ、」

女将さんが二つに、裂けた。
どさりと、血を噴き出しながら崩れ落ちる。
わたしは身動きなんてできるはずなくて。
座り込んで、二つに裂けた女将さんの間から覗く、鬼の目を、見た。
肌の色が見えないほど血に塗れて、眼光は鋭く、口元は緩んでいる、

笑って、いる。

「や、やめっ」

振りかぶられる、赤く、にぶく、光る刃。
わたしは、呼吸すら、できなかった。
一分の隙もない、濃密な殺意。
感じたことのない空気に身の毛も弥立つ、そして、初めて、「シヌ、コロサレル」と思った。

「止めろ、新八っつぁん!」

突如割って入った、声。
ふっと切っ先が鈍る。

「平助」
「もういいって、ここに奴はいない」
「そ、」

一気に興味が殺げた、そんな調子。
その調子と同様に、背を向ければ踵を返す。

この人は簡単に、人を、殺すか、殺さないか、決められる人だ。

「ごめんね、君、この店の子?」

愛想のよい声が降ってきて、わたしは引きずられるようにそいつから視線をはがす。
こんな場面に不釣り合いなほど、愛想のよい笑顔だった。

「もー新八っつぁんが怖がらせるから!!」
「俺のせいじゃないでショ、」

わたしが放心していると、そんな会話が聞こえてきた。
やれやれと肩を竦める小柄な人物。
先ほどは大男かと思われたそいつは、かなりこじんまりした背中をしていた。

「ごめんね、新八っつぁん殺ってよしには容赦ないから」

苦笑まじりにわたしを見ては、「さ、立って」そう手を差し伸べた。

















わたしが働いていたのは小さな宿屋。
どうやら長州などの者の手引きをしていたようで、新撰組にかぎつけられたのだ。
殺されたのは、宿屋にいた長州の人間と、宿屋の主人とその奥さん、そして一人娘。
優しい、人たちだった。
従業員は生かされ、取り調べを受けた。わたしも例外ではなかった。
住み込みで働いていたわたしは、帰る家を失い、


新撰組に身を寄せる事になる。










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始めちゃいました、永倉新八連載夢。
まだSSSもたと逸3も完結してねーのにwwwサーセンwww
今回はまともに永倉新八連載です。
冷酷で、非道で、強くて、人を殺して、それでも人を、愛していく。