愛してるってそんな残酷なこと、えがおで。







「愛してるよ、愛してるよ、愛してるよ」


あぁ、ギン。


「でも、だめ」


なにが。


「だめなんよ、


何がダメなの、愛してるって言うのに、何が!
(って、思てるやろな)
はて、と執務室の椅子を窓へと寄せて、夜空を見上げながら市丸は頬杖を付いた。
夜中、執務室には副官である吉良もそのほか隊士たちも姿は無い。
この時間に執務室にいるのは、市丸の好むところだった。
灯りを消して、窓を開ける。
月明かりを部屋に入れて、市丸は満足げに椅子に腰掛ける。
窓辺には一輪の水仙が揺れている。

「どうしたもんやろ?」

呟くその言葉に嘘はない。
だが、考える気もない。

「ギン?」
「…来ると思てたよ、いらっしゃい、

ふわりと羽織を靡かせて、市丸は立ち上がる。

「…どういう事か、しっかり、ちゃんと、教えて」

どういうことかも何も、市丸は肩をすくめる。
このときには既に、藍染隊長の計画は進行中であり、自分も虚圏へ行くことは決まっていた。
邪魔になるものは、消される。
演出の一つとして。

、ボクのこと好き?」

やんわりと首をかしげる。
は眉をぎゅっと寄せて、口を真一文字に引き結んでいる。

「…ボクね、綺麗なものが好きなんや」

市丸は窓辺の椅子に座りつつ、月を背に負う。
月の逆光で、表情が分からないように。

「けどね、その綺麗なもの、壊すのがもっと好きやねん」

だから、だからな?




「…もうそれ以上、近寄らんで、




壊しとうなる。
穢しとうなる。
綺麗なもの、好きなもの、大切に大切に、したいもの。

いつか必ず壊したくなる。



『好きなのかい』
『嫌ですわ、そないな事あるわけあらしませんやろ』
『…邪魔だな、…消えるのも、綺麗だろう、…そう思わないか、ギン』



触らんといて、そんな汚い手ぇで。
(ボクはボクの力で)
君を守りたい。

、分かってや」
「…分からないよ、ギン…」
「…そう、言うと思った」
「日番谷隊長が」
「彼が、何?」
「ギンを疑ってるよ、ねぇ、ギン、何を考えてるの?」
には関係あらへんよ」
「ギン…!」
「そないなこと、見んでええ」

不意に立ち上がって、の傍に立つ。

「ボクが何とかするしかあらへんみたいやね」

そう妖艶に、笑む。
の顎を取って上を向かせ、覆い被さるように口づける。
呼吸を奪うように、全てを吸い取るような。







壊れそうなほど甘く接吻して。







もう瞳は開けない。





(目隠しをして、綺麗なまま君を鳥籠の中へ)