【BLEACH】
何で。
何で。
何で!?
何でこんな事になったの。
「、…死んでくれへん?」
理由なんて分からない。
ただ、不条理にギンちゃんに殺されそうになった。
いや、もう刺されて、血がドバって出てるんですよね、正直な話。
「ギンちゃ、なに…して」
「…ご免な、」
謝った、あのギンちゃんが謝った。
「な、で…謝るの…」
声が掠れていく。
「痛い?」
「…う…」
うん、の言葉も続かない。
痛い、痛いよ、ギンちゃん。
腹部が火傷しそうなほどに熱い。
けど、反対に一気に冷えていく指先。
「痛いんや…」
当たり前でしょう、痛いよ。
自分の呼吸音と、心音が聞こえる。
急速に遠のいていく痛み。
目の前、ギンちゃんがあたしを見下ろしてる。
あぁ、ギンちゃん。
「アカンなァ」
「アカンやん、」
何が?
何が?
じとり、ともう動きはしない手の先に生暖かいもの。
ぬるっとした感触。
「死ぬんやで?…そんなカオしとったらアカンやろ、もっと僕を憎まんと」
なに、言ってるの。
言おうとするも、食道を伝って上がってきた“何か”が気道へと流れる感触がソレを遮る。
苦しい。
もう体の先の感覚は無い。
生きているのは視覚や聴覚…一本の綱で繋がれたような危うい意識。
「なァ、。もっと僕を見ィ」
もう無理だよ、ギンちゃん。
喉に苦い鉄の味。
苦しい。
咳き込もうにも、もうそれすらする体力がない。
上がってくる生温いドロっとしたものが、口の端から流れた、、、と思う。
ギンちゃんの顔が近い。
お互いの体がぴったりとくっついてる、、、と思う。
勿論ギンちゃんの神創が、柄の所まですっぽりあたしのお腹に納まってる、、、と思う。
もう自分の心音や呼吸音より、ギンちゃんのソレのほうが聴こえるよ。
「。俺を見ィ」
無理だよ。
「」
もう言葉なんて出そうもない。
声だって、出せそうにもない。
目、開いているのだって精一杯だよ。
あぁ、神さま。
「僕を恨み、なァ…僕だけを見て逝き…一瞬で死なせてなんてやらへんで」
どうして。
あたしの息は、きっとギンちゃんには届いていない。
だけど、ギンちゃんの息をあたしは感じる。
「なァ、」
ギンちゃん。
ギンちゃん。
死にたくない。
「死ぬん、怖い?」
ぐぐぐ、ともっとギンちゃんがあたしに近づく。
神創が刺さってくんだろうな、って思うけど。
痛いのか、もう分からない。
こわい。
こわいよ、ギンちゃん。
「なァ、。お別れやなァ…さよォなら」
あぁ。
ギンちゃん。
視界はボヤけ、耳鳴りがする。
維持していた一本の綱も、もう持たない。
意識を手放すしかない。
あぁ。
ギンちゃん。
喉が乾いたよ。
可笑しいな、こんなにぬるっとしたモノで満たされてるのに。
「何、笑ォてるん…?、言うたやろ…死ぬんやで」
そう言ったギンちゃんの顔がかすれて、その後からはもうコマ送りにしか見えなかった。
ギンちゃんの顔、歪んで見えるのはあたしの死を想ってくれるからなの?
…それとも、あたしの視界が歪んでいるだけ?
見たい、見たい、ギンちゃんの顔が見たいよ。
「バイバイ、」
あぁ。
これが、死か。
あたしは急速に理解した。
ギンちゃん、バイバイ。
最期に見たのはギンちゃんの顔と。
微かに触れた唇の感触。
「死、ゆうんがどんなモンか、見て聴いてみたかってん」
知らないよ。
「やないと、アカンかったんや」
知らないよ。
「バイバイ…愛しとった」
知らなかったよ。