【BLEACH】














ねぇ、あなたの傍にいても良いですか?


無力で無知できっと何もできやしないのだけれど。














「日番谷隊長?」



うるせぇ。




「隊長ってば」



イライラする、頭がボーっとして考えてぇのにうまく働かねぇ。



「目開けたまま寝てるの?冬獅郎」











〜風邪っぴき意地っ張りロンリーナイト〜










「寝てねぇよ、何だ」


机に頬杖ならぬこめかみ杖(何ソレ)を付いて、俺は溜息を吐いた。

さっきから何か可笑しい。

座っているのに、フワフワ浮いているような浮遊感。


「書類持ってきたんですけど…調子はどうですか?」


手にした書類の束を机に置きつつ、は俺に尋ねる。


「あ?別に変わりねぇよ、仕事が沢山だ」


の表情の少ない綺麗な顔を見上げ、さらりと言ってのけた。

脳が回っている気がする。

猛烈な吐き気と、浮遊感が俺を襲う。

しかし意地でもここで倒れるわけには行かなかった。


「そうですか…お疲れなら休まれた方が良いですよ」


それはこっちの台詞だってんだ。

いつも無理すんのはお前だろうが。

言葉はいくらでも喉で止まるけど、バレないように繰り返す荒い息遣いは止められない。


「それでは失礼します」


そう言って執務室を出るを見送り、俺は目を閉じた。


「日番谷隊長」

「…今度は何だ」


松本が机と同じ目線になって、下から覗き込んできた。


「調子はどうですか」

「あんま良くねぇな」


溜息と共に言葉を零す。

あんま、なんてモンじゃねぇ。

頭ン中はぐるぐるするし、腹ン中はふわふわして、調子は最悪だ。


「そういえば隊長3日ほど寝てないんでしたよね…」


松本の声が聴こえたかと思うと、机に置いていた腕が落ちた。


がしゃん!!


その腕が払って、湯のみが落下した。


「隊長!?」


うるせぇ。


「すぐに四番隊に連絡をし
「良い」


松本の声を遮って、俺はやっとの思いで声を吐き出した。


「でも「良いっつってんだろ、その代わり今日はこれで帰る」


俺はそう吐き捨てると、ゆっくりと体を持ち上げた。


「…が心配しますよ」


「…だからじゃねぇか、しばらくは黙っとけ」


は四番隊の席官でもある。

四番隊に行くという事はにもこのことが知れるという事。

四番隊―…救急、医療を担当する隊にいるとなると、“そういう事”に敏感になる。

余計な責任は感じさせたくないし、心配だってかけたくない。

あいつは何も言わないし、いつも自分の事になると無頓着になる。

そうして独りで抱え込んで、あいつは、吐き出しもせずに、ずっと、そのまま。


イライラする。


何であいつは言わないのか。

今日だって、きっと俺の様子の変化に気付いていて、俺が隠そうとするのに付き合ってる。

きっと、俺の気持ちを考えずに独りで抱え込んで勘違いして、凹んでんじゃねぇかと思う。



「懸命な判断、感謝します。日番谷隊長」



執務室から出ると、上から声が降ってきた。

足を止めると、ザッと人影が舞い降りてきた。


…」

「………帰りましょう、冬獅郎」


静かに言い、は俺の手を握った。

瞬間に、目の前が真っ暗になる。






視界も、意識も、真っ暗に。








− BLACK OUT −













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うし。

後編行きましょ。