だれか。

蝶々を捕まえて。

キオクに棲む、真っ黒な蝶々を。










ハザマ     〜人間と死神と〜











霧散した異形のモノを睨み据えた。
このようなものを滅したのは初めてだった、案外簡単なものだな、と心は落ち着いていた。
だが、自分以外の存在にはっとした。
そして白髪の少年と金髪の美人へと視線を向ける。
(何人?)
でもアレはどう考えても異形だ。
そのアレを認識できた人物。
普通の人には、視えるものだろうか?
黒装束、に十の文字。
帯刀している。

「銃刀法違反で逮捕決定ねぇ」

やれやれ、とは呟いた。
そのようなどうでもいいセリフしかわいてこなかった。

「どーなってるんですか?」
「…俺に訊くな、松本」

はゆっくりと視線を移動させ、少年でぴたりと止める。

「あんだよ?」
「別に」

はしれっと言い放った。

「偉そうなちびっ子だなぁって思っただけです」
「ほー、大層な事言ってくれるじゃねぇか」

の何て事の無いような声音に、青筋を浮かべる少年。
子供とは言え、立場は美人より上と見える。

「…お前、人間か?」

質問をされるだろうな、とは思っていたがあまりに基本的な事では拍子抜けした。
だが的を得ている。
それが現状の問題点を打開するのに一番正しい質問だからだ。

「人間です」

答えると、少年は眉間の皺をより深くした。
やはり答えはでなかったのだろう。徒労だったのだ。

「隊長、この娘は…」
「仕方ねぇ、取り敢えず帰るぞ、松本」
「はい」

少年は“隊長”と呼ばれているらしい、美人は“松本”と言うらしい。

「ちょっと、待ってよ」

帰られては困る、こちらも訊きたい事があるのだ。
呼び止めると、前を歩き始めていた少年が振り返った。
と、言っても完全に前を向いた訳ではない。軽く顔を向け、視線だけをよこした感じだ。
一瞥、その言葉が正しい。

「何だ」
「あなた達は人間ですか?」

しばらく彼は黙った後。

「違う」

そう短く言い放ち、ダンっと地を蹴った。
それで一気に屋根へと到達すると、もう一度だけを見た。

「お前、名前は」
「…。あなたは」

は切り返す。
(答えてくれるかしら?)
試すつもりはなかったのだが、結果には興味があった。
しばらくの沈黙のあと、小さい人は口を開いた。

「日番谷冬獅郎、だ。こっちは松本乱菊」
「ども、」

日番谷が言うと松本がくす、と小さく笑って会釈した。
は怪訝に眉を寄せるばかり。
人間じゃないなら何なんだ。

「もう一つ訊く、お前のアレは、何だ?」

“日番谷”に続いて屋根に飛ぶ“松本”
軽々、その表現が正しい。

「…何でしょうねぇ、知りません」

しれっとが言うと小さい人はチッと舌打ちをした。
深く訊かない辺り、予想していた答えなのだろう。
暗いので表情は見えない。

「隊長、このまま帰るんですか?」
「…うるせぇ、上に訊くのが先だ。…こいつの霊圧じゃ、うまく処理もできんだろう」

次の瞬間には、“日番谷”と“松本”は闇夜に紛れ姿を確認する事はできなかった。

「本当、最っ低…今日はついてないわ」

(アレは視えちゃいけないものだったのね)
は独り肩を落とす。
だがしかし、あれを無視するなという方が難しくないか?
面倒事に巻き込まれたのは明白だ。
(本当、アレは何だったのかしら…)
昔から、見えてはいけないものが視得た。
両親はを恐れ、疎んじた。
友達も同じだ。
この能力はから全てを奪っていった訳だが―――…‥彼女は深く考えもしなかった。
見えてしまうものは仕方ないし、何とかできてしまうのもまた、仕方ない。
(でも待って…)
は記憶の糸を手繰る。
確か、前にその手の子に噂で聞いた。
(そうか…あれが)


「死神か」


の口元には今夜の月と同じ、三日月形の笑みが薄っすらと浮かんでいた。










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うわぁ、短いな(笑顔)
ヒロイン何か知ってますか、これー!?
…ワタシ何モ知ラナイヨ。(口笛(は)