鋼の錬金術師 【Please trust me】 10 〜名は〜
「たーいさ、大佐ってば」
もぅ。
何よ、拗ねちゃって子供みたい。
童顔が余計に際立つな。
「今回ばかりは大佐に同情するっすねぇ」
「少尉!」
「おーう、ちゃん、ケガは大丈夫か?」
「えぇ…予想以上に頑丈な作りしてますので…」
「そうかい」
「同情ってのは…」
「…そりゃぁそうだろ?自分のせいで女にケガさせたんだからな。
…意外にフェミニストだから、あの人」
苦笑して、ハボック少尉は言った。
家に打撃を与えたの間違いだろう。
「そんなもんですかねぇ…死んだわけじゃあるまいし」
「そんなもんだよ、男ってのは」
やはりタバコを咥えたまま、少尉は苦笑する。
「あの人も、あの人なりに死見てきてるだろうし…
自分のせいで、ってのがきつかったんじゃないか?」
「…そんなヤワな人にゃ見えないですけど」
「そうか?」
「ハボック少尉、ヒマそうだな」
「げっ」
「お喋りはそこまでだ。持ち場に戻れ」
大佐が後ろに黒いオーラ背負って命ずる。
「…大佐?」
「何だ」
「何拗ねてるんですか?」
「拗ねてなどいない!!」
「…じゃぁ何怒っているんです」
「少しは疑問形で話しなさい」
「…ごめんなさい?」
「違うだろう!!」
大佐、怒りっぽくないですか?
「ごめんなさい…」
「いや、良いんだが」
良いのかよ!!
「…ごめんなさい」
「あぁ」
「大佐?」
「ロイ、と呼べ」
「はぁ?」
「呼ばなけりゃぁ許さない」
この超ド級におかしい連想回路が!!←どんな貶しだ。
「え…でも、あれは…」
大佐のせいじゃんか。
でも、それは言わない。
言えない。
「無能…」
ぼそっとは呟く。
本当の事だ。
それに大佐はえらく凹んだらしく、デスクに戻っていった。
「わーぉ、相当キテんなロイの奴」
「ヒューズ中佐!!」
「よ、ちゃん。この間は大変だったなァ」
執務室から出ながら、中佐は呟いた。
えぇ、大変だった!
家はボロボロだし、電話は引き直しだし、大佐は拗ねてるし。
「いえ、中佐のおかげで助かりましたよ」
「…そうか」
「おかげついでに、頼みがあるんですけど」
ニヤリ、とは笑った。
「私、錬金術師になりたい」
守られてるだなんて、まっぴら御免よ。
自分の身ぐらい自分で守って見せるから。
その為の自信と証明を。
「ちゃん…?自分が何を言っているのか分かってるのか?」
「えぇ、頭は充分に働いてますよ」
は中庭に中佐を連れていく。
「じゃぁ、証拠をば」
「え?」
言い様に、ぱん!と手を軽く叩く。
そしてバン!と地面に手をつくと、バシィ!と練成反応が起こる。
ズズズズ…。
「こりゃぁすげぇ」
「でしょ〜」
「影が、動いてる」
そう、影を操る。
それがの得意とする“忍術”の1部。
でも、理屈を説明する事はできない。
“影”といっても、形は無いし、動くための物質があるワケでもない。
ただ、そこに存在するだけ。
「どうなってんだ、これ…」
「目ん玉飛び出ましたか?」
けらけらと笑いながら、は言った。
現実世界ではてんで役に立たなかった“術”が、こちらでは役に立つ。
「これなら、いけそうだな」
「えぇ、うまく便宜してください。できれば、ロイ大佐には内緒で」
「何でだ?」
「あの人、また拗ねるから」
「そりゃもっともだぜ」
数日後、は中央へ行った。
試験はマンガで見た通り、簡単な物だった。
大総統はいなかったし、数人の軍人が見守るだけだったが。
「ちゃん、これで君も晴れて軍属の人間だ。おめでとう」
中佐は笑わずに言った。
「…どうも」
「君に与えられた2つめの名は――――“影忍(エイニン)の錬金術師”!!」
うっわー…。
は思いっきり厭な顔をした。
たしかに、忍ではあるけどさー…。
「暗い名前だな…」
「あんたが言うなよ、ヒューズ中佐」
「ははは、そうだな。俺がシノビやってたって言ったんだしな。しかし、これで君も自由だな」
「えぇ、大佐に依存しなくても生きていける」
「大変なのはこれからだぞ?」
「分かってます」
「ロイから離れるのか?」
「…約束、したじゃないですか」
できるだけ、ロイを守る、と。
、すっと前を見据えた。
―NEXT→
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てかてか。
第1部終了!
第1部はロイ中心で逝ってました。←ぁ。
第2部はエド中心〜w笑。
頑張ります!
みなさんも一緒に逝きましょ〜(´▽`)ノ笑。