【鋼の錬金術師】 20 〜雲が晴れたら〜
「お前錬金術師だったのかよ!?」
「兄さん気付くの遅すぎだよ!!」
あはは、何だこの空気。
あれから、大佐の車に乗せられて司令部まで戻った。
止めに入ったものの、エドの右手の機械鎧はバラバラになってしまった。
その上アルは穴が開いちゃったし。
あ〜ぁ。
あたしって居る意味あんのかしらね?
「それに、練成陣無しで練成した」
アルの声がいやに耳についた。
「まじで!?」
「兄さん…」
「じゃぁ、まさか、お前アレを…」
信じられない、そんな表情ね。
あたしは目を伏せた。
見たわよ、アレを。
うん、何かいろいろすごかった。
「アレとは何だね、鋼の」
ぁ。
そう言えば軍部の人も居たんだった。
「ぁ、いや。その」
どもり過ぎ。
「説明したまえ」
今だ険しい表情のまま、大佐はエドに詰め寄る。
…ロイエド?
「ぎゃぁ!ロイエドだ!!近い、近すぎる!おーっと、そのまま大佐は豆にキスをし…」
「…?」
エドの言葉に我に返るあたし。
ヒィー!!
腐っててごめんなさーい!!
「ロイエド?」
「って、何だ?」
エドとアルの質問。
「えーっと、えっと…調合名?」
ある意味。
「そうなんだ」
信じられてるー!!!
場の雰囲気が微妙なものになる。
しまった…。
「と、ところで、エルリック兄弟はどうする?」
ナーイス、ヒューズ中佐!!
「うん……アルの鎧を直してやりたいんだけど、オレこの腕じゃ術を使えないしなぁ」
「我輩が直してやろうか?」
盛っ。
と、アームストロング少佐が言った。
何故脱ぐ。
「遠慮します」
「あ、そーだ、ちゃん直せないのかよ?」
中佐があたしの方を向いた。
全員の視線が集まる。
「無理、ですね。アルの鎧と魂の定着法を知ってるのはエドだけでしょうし」
「そうだな、ともかくまずはオレの腕を元に戻さないと」
だね、とアルが頷く。
「そうよねぇ…錬金術の使えないエドワード君なんて…」
「ただの口の悪いガキっすね」
「くそ生意気な豆だ」
「無能だな、無能!」
「ごめん兄さん、フォローできないよ」
「いじめだー!!!!」
あはは、だってエド、本当の事だもんね。
「しょーがない…うちの整備師の所に行ってくるか」
ふぅ、とエドは息をついた。
「大佐、今日、借りてもいいか?」
急にあたしの話題っすか!?
「それはできない、鋼の」
「何でだよ」
「私もに話があるからな」
「何?大佐、今聞くよ」
ケロっとあたしが言うと、大佐が眉をひそめた。
「君は本当に国家資格を?」
「えぇ、ヒューズ中佐に」
ちら、と中佐を見る。
「…まぁ、な」
バツが悪そうに中佐がボヤく。
「実力は確かか?」
怖い。
初めてこの人を怖いと思った。
「大佐、お言葉だがは錬金術の腕は確かだぜ」
急にエドが話に割って入った。
「何故、そんな事が言えるのだね」
「一緒に、スカーに向かって行ったからさ」
それに、練成陣無しでの練成。
エドが一瞬あたしを見た。
大佐に言えない理由がある。
「…それでは鋼の、君とどちらが強い」
「…そんな事」
「では試合をしようじゃないか」
「へ?」
あたしは間の抜けた声を出す。
「私と、で」
ん何ィーーーーー!!!!!!
大佐の戦闘シーンが見れるのは嬉しいけど!
何であたしが戦わなきゃならないわけ?
大佐の支えになりたくて、資格を取ったのに。
空回ってる。
あたしは苦々しく奥歯を噛む。
「ちょ、ロイ、待てよ」
ヒューズ中佐の咎めの声。
「、君が何のつもりで国家資格を取ったのか、私の知った事ではない。
しかし、生半可な気持ちならば許す事はできない。
保護者として」
保護者だぁ!?
ブチィ。
アハハ。
頭の中で大きな音がしましたよ。
「…?」
恐る恐る、と言ったエドの声。
「やってやろうじゃない」
「!!!中尉も止めてくれ!」
「中佐、すみません。大佐の行ないは私に止める権利が有ります。
ですけど、あの大佐の行為は“大佐”としての行動じゃありません」
だから、私には止められません。
中尉の冷静な声が返る。
フフフ腐腐腐腐……
「上等じゃない!!どっちが保護者か、決めようじゃないの!!!!」
(((いつの間にそんな主旨に!?)))←エド他。
失礼しちゃうわ。
確かに拾ってくれたのは有り難いけれど…
ひどいじゃない?
あたしは、あなたの支えになりたいと思ってた。
対等に、見て欲しかった。
あなたが思うより、あたしは大人なんだって。
あたしは1人で立っていられる。
その時は、あなたの隣に立っていたい。
だから、本気で行く。
―NEXT→
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わー。
なんかすごい展開に。
ヒロインVSロイ大佐。
普通に考えて、勝敗は…ゲフンガフン。