鋼の錬金術師 【Please trust me】 4 〜朝ぐらい静かに〜


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

早朝、ロイ・マスタング大佐の豪邸に響き渡る、この世のモノとは思えない叫び声。
その音で、豪邸の屋根が浮いた。(ような気がした)

「な、な、何事だ!?」

屋根同様、その声で一瞬浮いた(俗に飛び起きたと言う)この屋敷の主、マスタング大佐は叫んだ。

「いぃやぁぁぁぁぁぁ!!」

勿論、叫び声の主はで。
彼女の目の前には黒光りした長い触角をもつ物体がカサカサと歩いている。
何なのよ、この家は!!!
何でゴ○ブリがいるのぉぉぉぉ!?

「こっちこないでぇぇぇぇぇ!!!!」

は手に持ったモノでバシバシと床を叩きつけた。

「来るなってば!!このクソボケカスウン「そこまでにしておけ」…」

叩き続けるの腕を掴んで、マスタング大佐は言葉を遮った。

「どうしたと言うのだ…」
「大佐ぁぁぁぁ」
「汚い。私の服に鼻水がつくではないか」
「ヒドイ!っていうか、そんな事より何でこの家には生きている価値の無い気持ち悪い物体がいるんですか!?」
「そこまで言ってはゴキブリがかわいそうだろ」
「みなまで言わないでぇぇぇぇ!!!ぎゃぁ!!こっちにきた!!」

黒い物体がこっちに襲ってきた!!!

「来るんじゃねぇよ!!バカ!!アホ!!!ウン「止めたまえ」…」

じゃぁ何とかしてぇっ!!
はマスタング大佐に泣きついた。

「フン、愚かなるゴキブリめ。ここがどこだか分かっていないようだな、この焔の錬金術師の家に着たのが運の尽きだ!」

マスタング大佐はそう言うと、手袋をし、そして手を掲げる。
えっ、まさか、の顔が青ざめる。

「ちょ、ちょっと待っ…」

パキン!!!
ボッ…ゴォッ!!!

炎が部屋に充満する。
もちろんゴキブリは消し済みにされたようだが、そんなことより。

「フン…私にかかればゴキブリ如きちょちょいのちょいだ」

うわぁ…。
ちょちょいのちょいとか言っちゃってるよこの人…。
という視線を受けてもなお自信満々に笑っていられる大佐の神経を疑う。

「…大佐」
「何だね」
「書類とか、燃えてますけど」
「…」
「何とか言ってください」
「中尉にどう言い訳るつもりですか」
「わ、私のせいではない」
「中尉がそれを聞き入れてくれる可能性は果てし無くゼロに近い気がする」

サーっと血の気が引く大佐。

「頑張って下さい…」
「手伝いたまえ」
「無理です」
「元はと言えば君がだね!!」
「何ですか!あたしは止めましたよ!!!」
「ゴキブリ如きで騒ぐのがいけないんだ!」
「んなっ…人のせいにしないでください、こうなることは予測できたでしょう!?この無能!!
「む…無能…」
「あ…」
「やってやろうではないか!!!!」
「え?」
「無能などとは言わせないぞ、私は無能ではない!!」

気にしていたのかな。
ホークアイ中尉に言われた“無能”が。
いや、これはまだ先の話だけど。

「それでは頑張って下さい。無能の錬金術師さん」
「無能って言うんじゃなバタン!!…」

大佐の言葉を遮って、はドアを閉めた。

「そっか、大佐、今日久しぶりの休みだっけ…」

悪い事しちゃったかな…。

「よし!!」

はキッチンへ入っていった。






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管理人はゴキブリとか案外騒がない方です。
無言で『殺殺殺!!!!!』です。(むしろ怖い)
ゴキブリよりムカデが嫌いだ…。