鋼の錬金術師 【Please trust me】 8 〜チカラ〜


人は、追い詰められるととんでもない行動を取る事がある。

そして、それに巻きこまれる人も勿論存在する。


「…で、何?」

「大佐殿はいるかな?」

「…名乗るのが先では無いんですか?」

「…生意気だねぇ、お嬢さん、黙って言う事聞いた方が身の為だよ」





数分前、は電話でヒューズ中佐と話をしていた。

『だからな、今度中央きた時は寄ってくれ!エリシアちゃんの可愛さを見ろ!!

「…噂通り、本当に救い様の無い親バカですね…中佐」

『なんとでも言えばいい!!羨ましいだけだろ〜!



 だからお前たちも早く結婚して子供を作れ!!






だから、何でそうなるんだよ。(怒






中佐と話しているとすぐにこの話題になる。

そんなに軍法会議所はヒマなのか?


『子供は良いぞ〜、可愛くてな!!』


あんたにとっちゃエリシアちゃんだけだろうが。


カタっ。


??

はキッチンの方からの微かな物音に眉を寄せた。


ちゃん?聴いてる?』

「聴いてますよ、中佐。それで、中佐は今何をしてるんですか?」

言いながら、気配を探る。

気配を察知するのは容易い。

人間は生きているだけで、その存在を隠す事などできないのだから。

『仕事中』

「仕事しろ、おっさん」

『つれないなー、休憩だよ休憩』

「…」

ちゃん?』


やっぱり、誰か居る。


数人?

いや、一人だ。


「ヒューズ中佐、何かおかしい」

『何かって?』

「誰か、私の他に誰か、居る」

『え?』


そして冒頭に戻る。


『ちょ、ちゃん!?』

受話器の奥で、中佐が叫んでいる。


「電話、切ってくれないかな…?」


この人、できる。


はギリっと奥歯を噛んだ。

相手は恐らく相当の体術使いだ。

身のこなしが、普通じゃない。

「あなた、名前は?」

「ザク、だよ。覚えておいてくれ、と言っても君はここで死ぬのだから関係無いか」


『ザクだと!?ちゃん!逃げろ!!そいつは東部過激派「サキガケ」の一員だ!!』


逃げろっつってもね、中佐。

後ろは壁だし。前にはザクって奴だし。

逃げ様にも逃げれないのよ。



「ほーう、電話の相手は軍部関係者か…もしかして大佐殿?」

「残念、違うわ」

「そうか…大佐だったらテマが省けたのにな」

「大佐に何の用?」


「大した用じゃないさ、ちょっと、死んでもらおうかと思ってね」


「穏やかじゃないわねぇ」


参ったなァ…。

敵は1人とは言え、こちらは丸腰だ。

そして体格にも差がありすぎる。


が思考を巡らしていると、奴が動いた。

『おいっ!ちゃガチャン!!…』


流れるように速く目の前に来たと思ったら、電話ごとは吹き飛ばされた




…ずっと考えていた事があった。

もしこのまま元の世界に戻れなくなったとしても、私は平気だ、と。


しかし。

それは厭だ。


私はこの世界の人間では無い。


どれだけ仲間が増えようと、私は独り切りだ。


元の現実世界に戻りたい。



“賢者の石”



帰るには、この石が必要そうだった。


この石を手にするのに必要なのは。



石を探すための能力と権利。

そして。


身を守るための、チカラ。



―NEXT→

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よっくわからん。逝。