【鋼の錬金術師】  34   〜理解×分解×再構築〜






「死に行くようなものだ」

流空の錬金術師、ジャスト・ウインター氏はそう告げた。

「ワシは確かに物質の空間移動を可能にしたが、それは“無機物”だ。

 “有機物”ましてや“人間”の移動など…」

自信が無い、そう言い方だった。

それでもあたしは、試してみなければならない。


「えぇ、お願いします」


あたしは立ち上がり、深々と頭を下げた。


しかし、そこで思わぬ声が入った。



「私は反対だな、




「はぁ!?大佐!!??」




あたしは思わず叫んでいた。


、君はさっきの説明を聞いていなかったのか?」

「説明?」

「ウインター氏の練成行程だ」


あぁ、とあたしは呟いた。

どちらかと言うと、ウインター氏の空間移動術は錬金術とは一線を介すと思う。


「ウインターさん、あなたのその“空間移動”は錬金術なんかじゃありませんね?」


あたしの言葉にウインター氏は面食らったようだったが、一瞬瞬き言った。


「………いかにも。錬金術は科学だと言うが、それよりも尤もらしい科学、とでも言おうか」


ぎっ、とウインター氏は座りなおした。


「ワシの“空間移動”は―…まず、物質を電子、原子のレベルまで分解。

 その後………目的の場所に移したら…再構築」


「目的の場所へはどう移すんです?」


大佐の尤もらしい疑問が飛んだ。


「それに、練成陣を使う。陣に書くのは、運ぶ物質…そしてワシが自ら定めたポイント―…」


そう、ウインター氏はうわ言のように呟いた。


「聴いたろう、

大佐が極真面目に言った。

「再構築に失敗したら、もう戻ってこれないんだぞ」


それ以前の問題。

聴いたあたしは即座に思った。

人間を分解、再構築するという事は、つまるところ………





人体練成に繋がる。




なるほど?


だから。



「門までいけるかも、って話ね」



ウン、とあたしは頷いた。


「何を言っているのだ?」


「大佐、やっぱりこの件、やりますよ、あたし」


「なに?」


「ウインターさん、よろしくお願いします」


ぺこり、あたしは再び深々と頭を下げた。


大佐は黙ってしまった。


彼が本気で止めようとしたら、いかようにも方法はあっただろう。


頭の良い大佐だ、人体練成に繋がるという事も分かっているはずだ。


あたしの好きにしろってか?


やってやろうじゃない。













「ワシとしても、研究の一環の助けになる、手を貸そう」

そう言いウインター氏はガリガリとコンクリートの床に陣を書き始めた。

ここは軍とは関係の無い、とある実験場。



フ…相変わらず練成陣全く分からねぇぜ。



爽やかに言っている場合ではない。


これから、目にも見えないなでに分解されるのだ。


それが上手く、“向こう”で再構築されれば良いのだが。


「サテ、始めようかの」


がっと杖を陣の上で叩く。

あたしは陣の中心に立つと、覚悟を決めた。


「さ、どーんと始めたまえ!」


急に聴こえるはずの無い隣から、声が聞こえてきた。


何事か、とあたしは視線をそちらに向けた。


「た、大佐!!??」


「どうしたのかね、。そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔をして」

しれっと大佐は言い放った。

「何でこっちにいるんですか?大佐は向こうでしょう!?」

あたしは部屋の隅っこを指差していった。

「何を言っているのだ、。私も同行するよ、君の世界という物を見てみたい」



…くっ、だからか、いまいち反論をしなかったのは。



「焔のは遠慮してもらおうかの」



ウインター氏は極簡単に退場を願った。



「何故だね!?」



「…焔の大佐さんよ、もし分解に成功し、目的の場での再構築で…お前さんとそこの娘の…

 構成細胞が交ざってしまったらどうするのだ?」



…それって、つまり。



向こうに着いて、再構築された時にあたしの体の一部が。








大佐になっているかもって事!!!!????







…ヤバイね、色んな意味で。



想像するだけでヤバイですね。(するな)




「では私は遠慮しておこう……」




乾いた笑いとともに大佐は部屋の隅まで行く。


想像したな、アイツ。


「大佐〜、たとえ話でしょう?」


「そうだろうとも」


自信満々に答えるなら…





あたしと視線を合わせなさい!(びしっ)





「サテ、準備は良いかの」


「ハイ」


「始めるぞ」







まるでそれは。


あの兄弟が母親の練成に失敗した時の、リバウンドの様子に、似ていて。


意識は白飛びした世界へただ、ゆっくりと堕ちていった。













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どこまでもギャグを忘れてしまったのですが。
どうしましょう…(凹)