【鋼の錬金術師】  35   〜門〜





『また来たのか、お嬢さん』


にやり、と笑みの付いていそうな声が背後からかかった。


あたしはバッと振り返る。


…。



見覚えのある場所。



ここに来るのは2度目だ。



『やぁ、ヨウコソお嬢さん』



「来てやったわよ、よくもやってくれたわね」



負けじとあたしは勇ましく言い放つ。


『相変わらず気性だけは激しい女だな、お前は』

くっくっく、と笑う声。

「それはあなたも同じでしょう、あなたはあたしなのだから」

『そーかよ。で、何しにきたんだ?』

「愚問ね、あたしをもといた世界に戻してよ」


さて、何と返してくるか。


あたしは白けた、ソイツを見据えた。











『ダメだね』












ソイツはやけにあっさりと言った。


「なっ」


『この代価じゃ、返せねぇ』



扉が開こうとしている。


黒い腕が、あたしの体を掴もうと伸びてくる。



「厭よ!もうこれはたくさん!!」


『へへっ、良いじゃねぇか。折角なんだから、見て行けよ。“真理”


逃げ出そうと、思った。


できるわけないのに。


あたしはソイツに向かって手を伸ばす。


触れれるはず、無いのに――――…‥。



次の瞬間、あたしは目を疑った。


透明なはずの奴が、実体を持っていた。


それは――――…‥ウインター氏の姿を、していた。

















が、消えた…」

ロイは呆然と立ち尽くしていた。

「上手くいけば良いのだが…」

ウインター氏の心配げな声が返ってくる。


と、次の瞬間。


ゴォっと練成陣から風が吹き抜けた。


ゴゴゴゴゴ………‥


「こ、これは……!!!!」


ロイは思わず叫んでいた。








「リバウンドだ!!!!」








ロイはウインター氏の方へ走る。

しかし、間に合うはずも無くウインター氏の体は分解され…消えた。



「あ…」



風が戻っていく感覚。


ロイはただ、立ち尽くしていた。


目の前で、ひとが、分解されて、消えたのだ。


リバウンドを、初めて見た。


…!!」


ぎりっ、ロイは奥歯を噛みしめた。



「どうなってしまったのだ…!」



とにかく、この場を何とかしなければならない。


ロイの頭はすでに、ショックから立ち直っていた。









…え…?


白けて、ぼやける視界には木造つくりの天井が見える。


自分はどうやらベッドの上で寝ているらしい、その感覚がある。


ここはどこなのか?


自分は、今まで何をしていたのか?


そこまで考えて、あたしの頭は一気に覚醒した。


がばっと起き上がる。





「……ここは何処よ」





呟きに、応える音がひとつ。



「う〜ん……」


どうやらそれは同じベッドの中から聞こえているらしい。







「……エド」




あたしはポカン、と呟いた。


何で同じベッドの中にエドが!!??





事後ですか?(黙れ)






エドがいるって事は、どうやら練成は失敗らしい。


はぁ、とあたしが盛大にため息をつくと。



「……誰だよ……」



むくり、と起き上がるエド。







わー!!!!





上半身はだけてる――――!!!!!!













「やぁエディ、すがすがしい朝だね☆(鼻)」







バッチコーンとウインクぶちかましつつ、あたしは爽やかな笑顔で言い放った。





寝惚け眼だったエドの目が見開かれる。






「てめぇ、何でこんなとこにいんだよ!!!???」





ずざっと後じさり、エドはわなわなとあたしを指差した。



「やだな〜、そんな感激しないでよ♪一夜を過ごした仲じゃない☆」





「誤解を生むような事を言うな―――――ッッッ!!!!」





エドは必死に否定するも、むなしく終わる。





「へーえ、兄さん、そういう事だったんだ…」





…相変わらずの萌え声で……だけど背筋が凍りそうなのは何ででしょう!?





「とりあえず、何でお前がこんなとこにいるんだよ!?」


「さぁ?」


「さぁって何だよ!!」


「だってわからないんだから仕方ないじゃない!」


「開き直るな!!」


堂々巡りを続けるであろうこの論議に終止符を打ったのはもちろんこの人。











「二人とも、うるさいよ」










落ち着いた声だが、やはり背筋が凍るのはなぜでしょうか………!!??(しつこい)







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ふっ、失敗に終わっちゃったね☆(黙れ)