【鋼の錬金術師】 38 〜兄弟〜
「ばっかじゃないの」
あたしは呆れて溜息までお見舞いした。
「だッ、しょうがねぇだろ!?あんなのがいるとは思わねぇじゃん、普通ッ!!」
病院のベッドに横になっているエド。
どうでも良いけど、包帯って萌えるよね(本当どうでも良い)
「実はあたしも会った事あるのよね、その特徴にピッタリ合う人」
「マジで!?」
勢いよく身を起こすもんだから、エドはお腹を押さえて唸った。
「ばーか」
「う、るせっ!」
「確か、名前はラスト」
「…ラスト」
エドが顎に手をやり考え込みつつ呟く。
「もう一人は確か、エンヴィー…」
「エンヴィーにラスト、か…」
どちらも知ってる名なんだけどね。
あたしも考える仕草をする。
「あ、そういえば機械鎧直ったんだ?」
「おう、ウィンリィの奴にこっちまで出てきてもらってな」
「…来てるんだ、ウィンリィ」
「さっきヒューズ中佐に攫われてったけどな…って、何かあんのか?」
「何でもない」
首を横に振る。
エドは首を捻る。
「で?アルは?」
「あれ?いねぇな、そういえば姿見てねぇかも…」
ありゃりゃ。
落ち込んでいる最中か。
ま、ここも下手に手出すより本人たちに任せたほうが早く片付くでしょ。
「お前は…大丈夫なのか?」
エドがやや体を傾けて、あたしの顔を覗き込んだ。
「うわぁ!?」
「んな驚く事かよ…」
イテテ、とエドはお腹を押さえつつ身を引く。
「反射的に!」
顔が熱い、当たり前だ。
あんな可愛い顔が目の前にあるんだから(黙れ)
「で?」
「……だいじょうぶ」
「じゃねぇだろ」
そんな即否定しなくても良いじゃないの。
「とにかくさ…、何があった?」
「…その内、エドにも分かるときが来るよ」
あたしはズルい。
ズルい。
だけど、それを変えるつもりはない。
「どういう事だよ」
他人を犠牲にして得るモノに、気付く時が来る。
「…言いたくない」
「そうかよ」
エドはそれで諦めたみたいだった。
小さく溜息をつくと、ゴロンと横になり、あたしに背を向けた。
でも、その時は来ないかもしれない。
あたしが殺させないから。
ヒューズ中佐の死期が迫ってる。
殺させないよ。
何としてもとめてみせる。
それが、自分のエゴでしかなくても。
神が何よ、運命が何よ、未来が、何よ。
そんなモノ知らない。
そんなモノ、いくらでも犠牲にしてやるわよ。
「ねぇエド…」
「何だよ」
「負けちゃ駄目だかんね」
「は?」
言い残すと、あたしはエドの言葉を待たずに病室を出た。
その視界に、椅子にかけているアルが入ってきた。
「あれ?アル…」
何してんの、とあたしは歩み寄る。
「…」
ぼんやりとあたしを見上げるアル。
「何、悩んでんの」
隣に腰掛けつつ、アルに訊ねる。
「…何でも無いんだ、本当」
苦笑、それが分かる。
「…あたしにも、いてね。兄弟」
突然話しだすあたしに、アルは首を傾げた。
「これがムカつく子でね…馬鹿で、要領悪くて…真っ直ぐで…よく、喧嘩したっけ」
あたしは天井を見上げた。
そこには何も無い。
小奇麗な天井が広がっているだけだ。
「もう随分会ってないっけ…兄弟でも、言えない事の一つや二つあるよね」
「…?」
「でもそれは、相手を思いやってるからなんだよ」
「…に、何が分かるんだよ…俺や兄さんの気持ちなんて他人には分からない!!」
「…分からないよ」
あたしはポツリと呟く。
分からないよ?
「でもね、アル。言ったでしょ、あたしにも妹いるんだ」
「…」
「もう、二度と会えないかもしれない妹がね」
あたしは一度言葉を切る。
「今更ながらに、寂しいなって…だからね………大切だから、手足失ってでも…取り戻したいよ」
沈黙が落ちる。
アルがあたしを見つめてきた。
「には、何でも分かっちゃうんだね」
苦笑が付いてそうな萌え声でアルが言った。
「差し出がましい真似を」
ペコ、とあたしが頭を下げる。
「えっ。そんな、全然」
畏まって、アルも頭を下げた。
「「何してんだかね、あたし(僕)たち」」
くすくすと笑い合う。
「そういえばウィンリィが来てるって?」
「うん、今日は中佐のところでお世話になるんだって」
今日すれ違いだったみたいだもんなぁ〜。
「ウィンリィかぁ〜…」
「何、ってばウィンリィの事苦手なの?」
くす、とアルが笑った。
「…う、うるさいな」
「ウィンリィも少し癖があるけど、良い子なんだよ」
「…うん、知ってる…」
あたしは視線を落とした。
「も良い子だけどね」
アルの言葉に視線を上げる。
「ちょっと変わってるけど」
…ちょっとどころじゃないと思います。(黙れ)
「そっか…ありがと」
あたしは苦笑して、立ち上がった。
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何かどうしたいのかよくわからない話になっていく連載夢。
区切りを見つけたい…(黙れ)
次の次ぐらいにヒューズ中佐が…!!!!!(コラ)