【桜蘭高校ホスト部】




「さーぁ、皆の衆。各自、プロテクターは付けたか!?」



「ちょっと、殿。何で僕等までプロテクター付けなきゃいけないのさ」(光)

「僕たちは乗れるってば」(馨)

「分からんではないか、また乗れなくなってるかも知れないだろ!?」(環)

「お言葉だが、環。自転車は一度乗れてしまえば、乗れなくなるという事は無い」(鏡夜)

「なッ!そんな事分からないだろう!?」(環)

「…少なくとも、補助輪から始める先輩はプロテクター要らないと思いますよ?」(ハルヒ)

「それはそうだねえ〜、補助輪付けてたらコケないもんねえ〜」(ハニー)




環に口々に文句を言う部員達。




今日はお店はお休み。



庶民、いや、部員達によるキングのための自転車講習会が始まったのである。



「とにかく始めませんか?俺、早く帰りたいんで」



あたしは溜め息と共に、ギャァスカ騒ぐ彼等を一蹴した。



とにかく、今日は早く帰りたい。



スーパーのタイムサービスに間に合いたいからね。



今日は冷凍食品とレトルトが安い日だ。



「じゃぁ殿、乗ってみなよ」(光)

「な、そんな急に…心の準備と言う物があるだろう!?」(環)

「そんなビビる事無いって」(馨)

「ど、どうやって乗るのだ!?」(環)

「…環、アレが見本だ」(鏡夜)


そう言って鏡夜が指を差した先には。










「わ〜い、楽しいねえ!崇〜!!」









花のオプションとハニー先輩とモリ先輩。












「な、何だあの技は!!!ハ、ハニー先輩危ないですよ!!」















…ただの2人乗りだ。
















「先輩もできるようになりますよ」

ハルヒのなぐさめに、環は泣いて感動する。


「優しい娘よ!!さすがお父さんの子だな!!」


「はいはい」


「で、どうやって乗るのだ?」


きょとん、と首を傾げる環を見かねて、あたしは口を開いた。


「はぁ…もう…環、見て?良い?サドルにまたがるの。んで、ここに足かけて」


あたしは自分の自転車にまたがり、ペダルに足をかける。


「こ、こうか?」


そうそう。


「んで、足をこう、動かして。ペダルこいで」


あたしはこいで見せる。




「おー…」




…この年にもなって自転車こいでる姿で歓声を浴びるとは思いませんでした。





「やってみて」



言うと、環はぎこちなくペダルをこいだ。



「…」



進んでるし、別に何もおかしくないんだけど。













補助輪がとてつもなく虚しい感じ。














「の、乗れてるぞ!!」







環の笑顔と補助輪が眩し過ぎるよ、母さん…。




涙で前がかすんで見ないよ。





「言い出したのは君だろう、娘よ」







「って、何してんのよ、鏡夜」



あたしはげんなりしながら、鏡夜のほうへ目を向ける。



「何って…記念撮影だが?」



そんな爽やかな笑顔で申されましても。



「何の記念…恥記念ですか?」

あたしが尋ねると、鏡夜が一瞬あたしを見、







くすっ。







笑った。









い、今背筋を冷たい物が流れたんですが…!!










あ、悪魔の笑みだ―――――!!!!






な、何を企んでるんだ…。




そして笑いながらシャッターを押す鏡夜。





「よし…ハニー先輩とモリ先輩の使用済み自転車」にやり。














やっぱり金かぁ―――――!!!!













「自転車なんて売れるの?て言うか、乗らないでしょ、ご令嬢は」


「…観賞用だ」


「チッ、この金の亡者たちめ…」


、お前も同類だろう」


「失礼な!俺は乗るぞ?自転車」


愛用品だってんだ。


絶対に売るなよ、あたしの自転車。





「おーい、〜どうだ?お父さんかっこいいか!?」





「はい、バカっぽいです☆」




あたしは素晴らしい笑顔とともに言い放った。



「慣れてきましたね、その感覚、忘れないで下さいよ?」


言いながら補助輪を外す。


「同じようにこげば大丈夫だから」


「ちょ、ちょっと待て!フラフラするぞ!!??」



そりゃそうっすよ、車輪2個減ったんすから。



「大丈夫ですよ、先輩。後ろ持っていてあげますから。ゆっくりこいでください」



ハルヒの妙に優しい言葉に「お、おう」と照れながら、環はペダルをこいだ。



ちゃんっ!ちゃ〜ん!!見て見てぇ〜」



ハニー先輩に呼ばれて、あたしは振り向いた。














…は?












「ETなの!!!」






状況を説明致しますと、モリ先輩が自転車をこいでですね。





ハニー先輩が前カゴに乗ってるんですよ。







あぁ、あったね、ETにこんなシーン。



















…いい加減に意味不明だ。

















その行動に何か意味はあるのだろうか?







パシャ。



「鏡夜…また写真?」


「良い記念だろう?」


「…ある意味ね…」





アホ記念にしかならない気がするのですが?






「は、ハルヒっ、離すなよ!?」


「はい、離しません」


「絶対だなっ!?」

「はい、大丈夫です」


そう言いつつ、ハルヒは手を離す。


「そうそう、その調子です!!」


ハルヒの声に励まされたのか、環が自慢げにこっちを向いた。


「きょ、鏡夜!!見ろ!美しき親子の共同作業だ!!」




バカか。



「わ、何。殿乗れてんじゃん!」(光)

「補助輪外れてんじゃん」(馨)



「ハルヒが手伝ってくれてるからだよ」(環)



「「ハルヒ?ハルヒなら帰ったよ?」」(双子)



「な、何!?」(環)




わっ、急にフラフラしだした!!




「は、ハルヒ〜〜〜〜持っててくれるって言ったじゃないか!どこ行ったんだ!?」



そう言えばタイムサービス4時からだっけ。



「わ、わ!!殿、ちゃんとこいでよ!!」(馨)

フラフラする環(と自転車)。

「環!足動かして!!」

あたしは声をはった。

「さっき乗れてたんだから、できるってば!!」

「「も、モリ先輩、危ないっ!」」

環の暴走進行方向にモリ先輩とハニー先輩が!!

「っとにもう!」

あたしは駆け出すと、フラフラの環の自転車の荷台を掴んだ。





「「わっ!!危ない!!」」





ザザザザッ!!


足を踏ん張って、あたしは自転車のバランスを取った。




「と、止まったぁ…」


手を沿えたまま、あたしははぁーっと脱力。




パシャ。



「鏡夜…」

「良い写真が取れたよ、。高く売れそうだ」





  あ  ん  た  っ  て  人  は  !  !




〜」

泣きながら環があたしに抱き付いてきた!


「分かったから、分かったから!!」


環を押し戻しながら、じたばたともがく。

するとモリ先輩の自転車が寄ってきた。


ちゃん、すごーい、足はやーい」




くそう…。


その笑顔が死ぬ程憎らしいよ…。




「ハニー先輩…ケツがカゴから抜けなくなっても知りませんからね」


ちゃんこそ、ケツだなんて下品な言葉使っちゃメッだよっ!」


「はいはい…失礼しました」



何であたしだけこんなに疲れてんだろ?



「もう帰って良いっすか?」











NEXT STORY!


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い、色々とすみませ…ぐはっ。←吐血。

環様はきっと自転車も優雅に乗りこなすと思いますよ!!